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正直、男というものは意識したことなどあまり無かった。

眞魔国でありえない体験をし、地球に戻ってから平穏に感謝した。

絶対的美形とされる双黒ゆえか、
今までにないほど、女の子扱いを受けた毎日。

何かが今までと違っていた。

地球でもまた更なるハプニングがあると誰が予想できただろうか……。









間章〜お見合いハプニング!?〜



「お見合いしなさい。」

そう、叔父が言ったのは、

勝利に送ってもらって家についたすぐあとのことだ。

祖父と二人で住んでいた家に一人暮らしをしている薫。


今現在の保護者は、叔父である幸村克彦。

幸村道場の師範でもある。

「聞いているのか?」

「何故急にそのような話に…。」

珍しく叔父が自分の様子を見に来たのだとばかり思っていた。

しかし、いつもより厳しい視線で叔父は薫を睨んでいる。

「向こうに行ってきたんだろう?」

「は?」

「私は父上が死ぬ前にお前の一切を任された。

お前が、〔此処ではない何処かの国〕の重要人物だと言うことも含めてね。

だから、知っているんだよ。一応はね。」

話しながら茶を飲む叔父は、相変わらず冷ややかな口調である。

「そこまでは良い。

だが、父上は道場の跡継ぎもお前にと仰っていたし、書状も残して逝ってしまった。」

つまりは、不本意ながら道場を薫に譲ってくれるらしい。

さすがに証拠ありでは親戚も逆らえなかったのだろう。

「道場を継ぐのだから、勿論婿養子もいる。

私達が用意した。」

最後の最後まで嫌がらせをし続けるつもりらしい。

用意した、などと言いつつ叔父の顔は歪んでいる。

「勝手に決めつけないでください。」

「良いじゃないか?

候補の一人だと思えば。」

と言いつつ、婚約まで持っていきそうな魂胆が見え見えだ。



「それとも、お前にはもうすでに決めた相手でも?」

意地悪く叔父が言う。

明らかに楽しんでいるのだろう、

目が冷ややかに笑っている。

「どうせ、いないんだろう?

毎日剣道にばかり明け暮れていたからな。」


「………わよ。」

絞り出すような声を出して、薫は言った。

叔父が薫を見る。

「それぐらい、私にもいるわよ!

馬鹿にしないで下さい。」


思わず言い切ってしまった。


「そうか、だが此方も準備は整えてしまったからなぁ。」

「準備ってなんですか。」

「明日、幸村の本家に来なさい。

お前の彼とやらも連れてな。

その後の過程によっては、見合いも考えてやっても良い。」

正直、ふざけるな!とちゃぶ台をひっくり返したい勢いだったが、

今は逆らわない方が良いので、

「あら?心外ですね。

見合いなんてぶち壊してやりますとも。」

我ながら、なんて発言だと思ったが、

苛立ちは理性の許容範囲をこえていた。

「それは楽しみだ。

じゃあ、私はこれで失礼するよ。

明日の午後2時に迎えの車を寄越すからね。」

意地悪い笑みを浮かべ、叔父は去っていった。

勿論、見送りもやったが、

腸が煮えくり返る思いだったことは言うまでもない。

「お嬢様…。」

話を聞いていたのだろう、

生前から世話になっている使用人の人がいた。

「大丈夫よ。」

「あぁ、可哀想なお嬢様!

私もなんとかして差上げたいのですが…。」

半ば発狂気味の老婆に、カオルはもう一度言った。

「だから、大丈夫よ。

なんとかするって…。」

「なんとかって、お嬢様!

しかし、克彦様も強引すぎですね。」

「まぁ、あの人のことだから予想は出来たけどね。

貴女は明日、私に協力してくれればそれで構わないわ。

貴女は私の味方よね?」

「えぇ、勿論ですとも。

お嬢様の為ならなんでも致しますよ。」

老婆は、唯一の薫の相談役でもある。

母親がわりとも言えるが、

やはり使用人としての方が板についているらしく、

相変わらずのかたい口調である。

「そう…。

私も今日は疲れたわ。

貴女ももう帰宅時間でしょう?」

老婆は住み込みではない。

今は、週に1〜3日程度で来るぐらいだ。

「いえ、今日は泊まらせていただきます!」



老婆はキッパリと言ったが、薫は申し訳なさそうに言った。

「今は一人にしてほしいの。」

薫の訴えるような言葉に、

不本意ながら老婆も納得したらしい。

「そうですか。

では、明日は9時に出勤いたしますので。」

「えぇ、お願いね。」

そう言って、老婆も去っていった。

二人にああは言ったものの、

現在彼氏などいないし、

即日彼氏になってくれる人物などいるわけがない。

しかも、1日限定だなんて今から相談するのも無理だろう。

(まずいわ…)

薫は久しぶりに焦りを感じた。

どうにかしなければと思うが、

案などまるで浮かんでこない。


(どうしよう…。)

今日は、買い物をしたせいか体もだいぶ疲労していた。

考えていてもしょうがないので、

とりあえず風呂に入り、食事をし、洗濯を終えた。

勉強や稽古をしたが、見合いのことが気になって集中できない。

(勝手に決められてたまるか!)

そんな気がした。

しかし、もう夜更け。
頑張って、もう少し起きる


とりあえず寝て、明日考える





あきゅろす。
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