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勝利ルート
なんとなく、駅前に向かった。

駅前なら休日だし、知り合いもいるかと思ったのだ。

すると、意外な人物に会った。

「勝利!?」

「ぇ…あ、あぁ薫か!?」

かなり動揺している勝利を不審げにみる。

どうやらこれから何処かに行く予定らしい。

「何処か行くの?」

「ぁ…いや、ちょっと、な。」

勝利は言葉を濁して、はっきりとは喋らない。

そんなとき、いつか聞いた有利の言葉を思い出した。

『勝利ってさ、ギャルゲーマニアなんだよ。』

もしやと思い、薫は思い切って聞いてみる。

「秋葉原とか?」

「何故それを!?」

(あぁ、やっぱりそうなのね…。)

哀しい哉、見事に当たってしまった。

「新作とか?」

「コホンッ…まぁ、な。

…今回の初回限定版には、萌え台詞の入ったスペシャルCDがついてくるんだ。

その上、完全フルボイス!新たな攻略キャラに加えて、

前作キャラのデータを引き継げるシステムまであるから、今回は逃せない。

しかも、イベント参加券が先着百名限定で配られ…。」

勝利はハッとして薫を見た。

薫はついていけずに、ポカンとしている。

ただ理解できるのは勝利がかなりマジだということだけだ。

「そっか、大変だね。」

「薫は?」

「ん、ちょっと気晴らしに…。」

「悩み事か?」

「まぁ、ね。

でも、勝利は忙しいみたいだから、他の人に…。

あれ?何してるの?」

勝利は急に携帯を取り出して、

何かうち終わると携帯をしまった。

「良し。これで大丈夫だ。

薫、悩み事とは何なんだ?」

さらりと勝利は言うが、

こうもあっさりギャルゲーを諦められるものだろうか、

心配げに薫は勝利を見た。

「秋葉原は良いの?」

「有利にまかせた。」

(え゛…)

有利に申し訳なさが募る。

しかし、勝利は意外に爽やかにあり得ないことを言った。

「まぁ、有利のことだから、

たぶん行かないだろうがな。」

「え…?」

「薫とゆーちゃんの場合は、

2次元より3次元優先だからな。」

つまり、それ以外は2次元優先らしい。

微妙な心境だ。

「ん、ありがとう。」

「当たり前のことだ。

目に入れても痛くないほど、
可愛い妹より優先するものなど、
あるはずがないだろう。」

勝利はさらりとそう言った。

破壊的シスコンパワーである。


薫は思わず苦笑いだ。

「それで、悩み事ってなんだ?」

勝利は再度、質問した。

「ん…実は今日、お見合いしなきゃいけないの。」

「は?お見合い?」

「いや、叔父が勝手に組んだヤツだから、

私は行きたくもないんだけど。」

薫はそれっきり黙り込んだ。

昨日の今日なので、勝利も尚更放っておけるはずなどなかった。

頼れる親族もいないのだろう…、

勝利は孤独な色を浮かべた瞳を、

その小さな体を、

自分を頼ってくれた薫を、


ただ守りたいと思った。

「わかった。

俺がなんとかする。」

「なんとかって…。」

「心配するな、俺は未来の東京都知事だぞ。」

そう言いながら、薫の髪を優しく撫でた。

薫は恥ずかしげに瞳を伏せながら、

「なにそれ…。」

と頷いた。

悔しいが、やはり勝利は『兄』らしいと思った。

気づけば、勝利のペースに呑まれている。

しかし、それがとても居心地良かった。

「見合いは何時からだ?」

「昼間の2時に迎えの車が来るわ。」

「そうか。

やはり妥当なのは、

俺が薫の恋人のふりをすることか。」

「私も勝利にそれを頼もうと思ってたの…。」

「え…?」

勝利は一瞬心臓がはねあがるかと思った。

上目遣いというものほど、萌え心を擽るものはない。

「いや、しかし俺とお前は兄妹で…。

お兄ちゃんと妹というのは絶対領域でな…。」

動揺した勝利は言っていることがハチャメチャだ、

「いや、確かに俺は薫を妹として見つつ、

時々ときめいちゃったり…。

あぁ!ダメだ!俺たちは兄妹だ!

そんな禁断の園に手を出してはいけないィ!」

あげくの果てに一人で発狂しはじめた。

ある意味ギュンター並みだ。


「あ、今から家に来ない?」

薫が提案した。

服も着替えなければいけないし、

薫としても勝利の和服姿に多少興味があった。

勝利の了承も得、家に着いた二人は

早速衣装会わせ(?)


勝利の着物を選んで試着しながら

さながらファッションショーを展開した。

勿論薫もあれこれ来ては勝利を喜ばせた。

薫は楽しんでやっていただけだが、



勝利は歓喜のあまり失神しかけた。

(カメラを持ってくるべきだった…)

などと悔しがる始末。

そうとも知らない薫は、

きょとんとしながら勝利を見た。

そうして、瞬く間に時間が過ぎていった

やがて、本家に着くと、

珍しく親戚が集まっており、

中心に叔父がいた。

「あんたが叔父、つまり薫の保護者ですか?」

勝利はたじろぐ事なく堂々としていた。

とても心強い。

「あぁ。君は大学生か…?

どうせ三流の…。」

「失礼だが、俺は一橋だ。」

(ええ!?そんな滅茶苦茶、頭良いの!?)

さすがにこれには叔父だけならず、薫も驚いた。

「それで、将来はどうするつもりだ。」

「東京都知事になるつもりだ。」

さすがに隙のない答えに叔父は黙り込んだ。

確かに勝利の学歴はブランドものだ。

勝利は叔父を軽くにらんでいった。

「悪いが、薫を誰にも渡す気はない。

では、失礼。」

さすがに勝利を超える相手を用意できたわけではないらしい。

叔父は珍しく、退いた。

「全く…勝手にしろ。」


負け犬の遠吠えが聞こえたが、勝利は振り返らなかった。


「なんだ、意外に楽だったな。」

勝利は呆れたようにそう言った。

「確かに…。」


そういえば昔、祖父に聞いた話によると


叔父は大学入試で今現在勝利の通う学校に玉砕したらしい。

なんとも哀れな叔父である。


「勝利が凄い人で良かった…。」

「は?」


「今度、勉強教えてね。」

勝利の聞き返しを薫はスルリと交わした。

勝利も深くは追求しなかった。

「可愛い妹の為なら勉強会ぐらい、いくらでも開いてやる。」

(いや、そこまで言ってないんだけど)

しかし、嬉しかったのは本心だったので、

「ありがとう。」

とお礼を言った。


「あと今日の勝利、かっこよかったわ。

見直しちゃった。」

「そうか?」

「うん、頼りにしてる。




…お兄ちゃん。

じゃあね!」

薫は大きく手を降って去っていった。

それを見送りながら、


(妹萌え万歳!)



勝利は心中で叫んだ。




―気づけば、君にハマっている。





こにたんは萌えます(何。
再チャレンジ



ネタバレは此方






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