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コンラッドルート
有利や勝利がいないので、気晴らしに噴水広場へ行くことにした。


ベンチに座ってぼっーとしていた薫だったが、

「おや?奇遇ですね。」

聞きなれた声を聞くや否や、心臓が飛び出すかと思われた。

「コンラッド?」

眞魔国にいるはずのコンラッドだが、

目の前にいるのもまた、人違いではないはずだ。

いかにも自然に薫の隣に座るコンラッド。

「どうかしました?」

難しい顔をした薫を見て、

コンラッドは微笑む。

「それは此方の台詞よ!

なんでコンラッドが地球に?」

「貴方を助けに来たんですよ。」

「は?」

まるで救いの王子様の台詞だ。

ときめき系漫画のワンシーンにも成りうるだろう。

洒落にならないのが少々リアル。

唖然としている薫のまえで

コンラッドは種明かしを始めた。

「実は、眞王陛下に頼まれて、

さっき陛下のバスルームに来まして…。

今ちょうど君の家に行くところだったんですけどね。」

「はぁ…?眞王が?」

イタズラか、何かのつもりなのだろうか。


「しかも、私に用事?」

「あぁ。さっき言ったでしょう?

貴方を助けに来た、と。」


そう言ってコンラッドは再び微笑む。

軍服ではないコンラッドは雰囲気がより柔らかく、

背景には噴水、

二人で座るベンチ…。


出来すぎなシチュエーションだ。

「ちゃんと説明してよ。

それからその敬語、やめない?」

「ぁ、すみません。」

「じゃなくて?」

「ふふっ…ごめん。」

「宜しい。」

「手厳しいな、君は。」

なんだか遊ばれている気がするのは気のせいだろうか。

心なしか、コンラッドの笑みが楽しんでいるように思えた。

「で、救いに来たって具体的にはどういう意味なの?」


「眞王陛下が、君の精神の波長が不安定だと言うから、

俺が来たんだよ。」

(わざわざ私の為に?)

信じ難いが、コンラッドがいればかなり安心出来るのは本当だ。

「ん〜、実はね、今日お見合いしなきゃいけないの。

まぁ叔父が勝手に組んだヤツなんだけどね。

正直行きたくもないし。」

「…地球の年齢的に早くない?

お見合いとか。」


「まぁ、ちょっと嫌がらせも兼ねてるのよ

あのオヤジは。」


いつになく口調の悪い薫に

コンラッドは薫が心配になった。

「あの、悪いんだけど

今日だけ私の彼氏になってくれない?」

「えぇ…喜んで。」

コンラッドはにっこり微笑む。

眩しいばかりの笑顔に、薫は確信を得た。

「コンラッドが来てくれて良かったわ。」

「そう?俺も君に会えて嬉しいよ。」

(いや、そっちの意味もなくはないけど…)

見合いの相談相手が来てくれたという意味合いより

コンラッド単体の価値で捉えているようだ。


しかし、こうも恥ずかしい台詞を言ってのけるコンラッドはある意味凄い。

「そうだわ。

今から私の家に来てくれない?」

「え?良いけど、なんで?」

「ちょっと、叔父は服装とか煩いから。

コンラッドにも一応着物をね。

大丈夫よ、着付けは使用人に頼めば良いし。」

薫はてきぱきと説明した。

「じゃあ、カオルも着物?」

「えぇ。」


「それは楽しみだね。」

コンラッドは含みをもった笑みで薫に笑いかけた。












―――薫宅


早速着物に着替えたコンラッドと薫。


爽やか紳士なコンラッドは、和服も見事に着こなしていた。

より涼やかな印象を受ける。

薫も思わずキュンキュン胸が高鳴る。


「どうかした?」


「ぁ―うん、似合ってわね。」


必死に普段通り笑ってみる。


コンラッドもまた笑い返した。


「薫も凄く綺麗だよ。」

「…え?」


一気に体温が上昇するのがわかる。

コンラッドは相変わらずニコニコしたままだ。

「大丈夫?顔が赤いよ。」


「…っ!?なんでもないわ。」

コンラッドが至近距離で覗き込むので、

薫は慌てて視線を反らした。

「そう?なら、良いけど。」


それから何度もコンラッドにからかわれたり、

誉め殺しをされ

薫は気力が一気に失せた。


しかし、コンラッドは相変わらずなのが、

また凄まじい。


(別の意味で、心配になってきた。)


そんな不安を抱えたまま、時間は過ぎ、


やがて、本家へ向かった。

本家で珍しく親戚がいるのが、ちらほら見えた

しかし、その数多のご婦人方はすでにコンラッドにメロメロである。

コンラッドが爽やかにてをふったり、

笑いかけるたびに何やら黄色い歓声があがる。

特にマダム達の心は既に鷲掴み


(マダムキラー!?)

コンラッドの秘技を見つけながらも


薫は黙り込んだ。

するとふと、屋敷から出てきた叔父と目があった、


どこかがっくりしている叔父は憎々しげに

しかし元気のない様子で言った。

「今日は中止だ。」

「は?」

唖然としている薫を前に、

茂の妻つまりは叔母が言う。

「薫ちゃんにこんな素敵な彼氏がいるんですもの。

お見合いなんて要らないわよねぇ?」


そういう叔母のキラキラした瞳はコンラッドを捉えているようだ。

叔母につられ、他のご婦人方も集まってきた。

「そうよねぇ。

ぁ、今度私の家に来なさいな。

彼と一緒に。」

「あら、うちも大歓迎よ。」


歓迎されるのは嬉しいことだが、

目的がコンラッドでは微妙な心境である


(まるで、コンラッドを取られてしまいそうで…)

薫は苦笑いしながら、

内心不安だった。


「そういえばお名前は?」

「コンラートです。」

「まぁ、外人なの!?」

「えぇ、まぁ(魔族だし」

しかし、当の本人は至って爽やか紳士。

ご婦人方には大人気。

さすがの叔父も呆れて屋敷へ帰っていく。

なんだか哀れな叔父である。

薫は始終、コンラッドの横で愛想笑いばかりしていた。

それから、珍しく本家の屋敷に上がり、

(コンラッドを中心に)話をしたりして、

今までにない親戚との交流を得た。

しまいには、お見送りつきで帰った。

帰り際、口々に今度、家にいらっしゃい!と誘われた。

…げんなりだ。


気力を使い果たした気分である。








――――帰り道、


「コンラッド、モテモテだったじゃない?」


薫は我ながら子供だと思いながら、

突っかかるようにそう言った。

「そうだったかな?」

自覚がないのか、

はぐらかしているのか、


薫にコンラッドの真意はわからなかった。

「だって、あんな風に叔母さん達がかまってくれたこと

一度だって無かったわ。


それに…。」


(気づけば独り、取り残されてしまいそうで

とても怖かった…)

とは言えるはずもなく、薫はただうなだれた。

コンラッドはそんな薫を見て、ため息一つ。

「今日は特別、3割増愛想よくしたからだろうね。」

「は?」

「君の為にそうしたんだよ。」

コンラッドはいつものように笑ってはいなかった。

どこか切なげである。

「私の為に…?」

要は風当たりが少なくなるようにとの

コンラッドなりの配慮だったのだろう。

薫は自分の子供さが恥ずかしくなった。


「君を不安にさせてしまったのは悪いと思ってる。

でも、俺は不特定多数の人間より本命一人に愛されたいタイプだから」

「はぁ…?」

しかし、コンラッドの必至の言葉も虚しく、薫は首をかしげただけ。


コンラッドは呆れたように、

いとおしげに薫をふっと見つめ、

隣を歩いていた薫を抱き止め

そっと耳元で囁いた。


「忘れないで。

俺は君の為にここにいるんだ。」

「…え?」


一気に体温が急上昇したのがわかる。

「おや、残念。」

しかし、コンラッドは名残惜しそうに、薫を離した。

薫の家に着いてしまったらしい。


「どうやらお迎えが来たみたいだ。」

「ぇ?」

コンラッドの言葉で未だ熱が冷めやらぬ薫は、

ゆっくりとコンラッドの視線の先を見た。

庭の家がふつふつと煮えたぎるように、水泡を浮かべている。


もう、帰る時間のようだ。


「カオル、眞魔国で待ってるから。」


コンラッドはいつもの笑顔でそう言って、

帰っていった。


コンラッドに囁かれた耳が熱い。

当分、熱が冷めそうにない気がした。







―不特定多数の人間なんかじゃない、ただ君に愛されていたい







コンラッド苦手なんです

マジすいません

ていうか後半書き直し(涙)


疲れた


再チャレンジ


ネタバレは此方







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