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ヴォルフラムルート
やはり、大人しく家に帰ることにした。

寄り道しながら家にかえると、

すでに老婆が来ていて、

庭の掃除をしていた。

「先ほど、お嬢様にお客様がみえましたので、

客間にご案内致しました。」

(客…?)

薫は不審に思いながら、客間に向かった。

「遅いぞ.」

そこには、あたかも自分の部屋のように茶を飲んで寛いでいるヴォルフラムの姿があった。

「な、なんでヴォルフラム!?」

「眞王に頼まれたんだ。

地球にいるお前を助けてやれとな。

全く…世話がやける女だ。」

そういうヴォルフラムは老婆が着付けたのか、

ちゃっかり着物を着ている。

「何処から来たのよ?」

「眞王廟から、お前の家の庭の池にきた。

さすがに濡れたからな、使用人に着替えを用意して貰った。」

薫の家には、何故か着物が大量にある。

ヴォルフラムの替えの服も和服しかなかったのだろう。

それにしても、似合いすぎだ。

「お前は何か困っているのではないか?」

ヴォルフラムに見とれていると、

急に質問された。

「ん、まぁ。

今日見合いしなきゃいけないの。

私は不本意なんだけど、叔父が勝手に組んだヤツだから。」

「なんだと!?

眞魔国ならその叔父とやらは今頃血祭りだぞ!」

可愛い顔して、さらりと凄いことを言ってのけるヴォルフラム。

「そんな大変なことになっていたとはな。

ユーリや大賢者がいるのではないのか?」

「いや、あんまり大事にはしたくないし…。」

そんな薫だが、ヴォルフラムはお構い無し。

「何を言う!騎士の婚約だぞ!」

「いや、此処は地球だからね。

とりあえず落ち着いてよ、ヴォルフラム。」

が、ヴォルフラムは一向に落ち着く気配などない。


「落ち着いていられるかっ!?

何処であろうと、

誰であろうと、

お前が僕以外の誰かに嫁ぐなど許せない!!」

「…え?」

(今またさらりと爆弾発言をかましたような…)

見れば、ヴォルフラムの顔はかなり真っ赤だ。

それを見て確信を得た薫も思わず顔を赤くした。

「いや、お、お前はグレタの母親だからな。

…そういうことだっ。」

自分でも何を話しているのかわかっていないらしい。

有利を忘れている時点でかなりテンパっているのが感じられた。

「私のこと、グレタの母親って認めてくれるの?」

正直、今までヴォルフラムは、

薫を母親“がわり”としか言っていなかった。

これはヴォルフラムなりの防衛線かつ照れ隠しだったのだが、

鈍い薫が気づくはずはない。

「…当たり前だ。

お前以上の母親などいないだろう。」

「そう?ありがとう。

でもそうすると、私はヴォルフラムと…。」

そこまで言って、赤面ヴォルフラムと目をあわせて

再び薫は紅潮した。

まるで付き合いはじめたバカップルである。


「とりあえず、今日のこと説明するね。

え〜と協力してくれるんだよね?」

「当たり前だっ。」

威勢の良いヴォルフラムの返事を合図に、

今日の説明に入った。

一通り説明し終わってから、

「要は恋人同士の証明をして、

相手を納得させれば良いんだな。」

(ん…なんか違くない?)

が、ヴォルフラムなりの考えがあるらしいので、

敢えて口には出さなかった。

ヴォルフラムはしばらく考えたあと、

ふふんと鼻をならして得意気に

「僕に任せろ。」

と言った。

(正直、ちょっと不安)

そう思いながら、ヴォルフラムに一任した。

それから、ヴォルフラムと薫の自室で話をしたり、

地球の文字をちょっと教えたりした。

中でも部屋に置かれた竹刀や木刀にはかなり興味を示したようだ

(もともとあまり荷物がなかったせいもあるが。


時間が過ぎ、正装に着替えた二人はまさに美男美女。

老婆は感激のあまり写真をとりはじめたほどだ。

本家に着くと、何やら親戚にいつもと違う視線を向けられた。

叔父が手をふっている。

薫は、手を降り返すこともなく

ヴォルフラムの手をとり、叔父のもとへ向かった。

「ずいぶんと綺麗な子じゃないか。

でもまぁ、まだ子供だな。16ぐらいか?」

冷ややかな叔父の口調に、

早速ヴォルフラムは切り返した。

「ふんっ、僕はもう82歳だ。

バカにするな。」

「82…?」

(そういえば、魔族って長寿だったわ)

薫は初っぱなからミスしたので

思わずこめかみを押さえた。

「面白いことを言うね、少年。」

しかし、叔父も体制を立て直したらしい。

相変わらずだ。

「残念だが、薫にはもう

婚約ぐらいしか使い道がないんでね。」

「なんだと!?人間めっ!」

「君もよくわからん種族の一人か?」

叔父は意地悪く笑った。

「全く…姉が魔族とやらにたぶらかされてから、

私達の家系図は穢れてしまった。

この女のせいだ。」


鋭いナイフが直接心の奥底をえぐり抜くような感覚がした。

―異端だとされる自分。

「オマケに向こうの国での高貴な魂まで引き継いでいるから

むやみに殺すことも叶わないしな。

とんだ面倒ものだ。」

「その言葉、二度と吐けないようにしてやる。」

ヴォルフラムの眉間には、

グヴェンダルにも負けず劣らぬ皺が深く刻まれていた。

「ほぅ…。

やってみろ。」

すると、ヴォルフラムは一息ついて

「炎に属するすべての粒子よ

創主を屠った魔族に従え…!」

ここは眞魔国ではない、地球だ。

魔力の高い魔族とはいえ、眞魔国ほどうまくいくはずがない。

しかし、

『全く…世話がやけるプーだ。』

――――――あら?


『俺が力をプーに貸してやる。

あとは頑張れ。

では、な。』


―――――――は!?

しかし、呼びかけてもすでに返事はない。

かわりに本家の池から、何か禍々しい気がヴォルフラムに直撃した。

「何!?何やったの!?」

眞王は女性に対してはお節介なほどにお優しいが(特に騎士は最高級、

男性に対してはかなり杜撰な扱いをする。
ヴォルフラムも例外ではなかったようだ。

とはいえ、気づけばヴォルフラムは
眞魔国と同じ調子で炎を操っている。

眞王は絶対に楽しんでいるのだろう。

相手の叔父や周りの親戚はすでにたじたじだ。

「僕はカオルとすでに夫婦だ。」

「は?」

急に何を言い出すかと薫は唖然とした。

「残念だが、娘もいる。」

あながち嘘ではない。

グレタは確かに娘だが…。

「見合いなどふざけたことをしてみろ。

僕の炎がお前を焼き付くしてやる。」

いつの間にか、手から放たれている炎は

何匹もの狼のようになり、いまにも走り出しそう(燃やし尽くしそう)な勢いである。

「わわ、わかった。

わかったから、やめてくれ。」

「ふん、たわいもない。」

ヴォルフラムの容赦ない脅しにさすがの叔父もただ頷くしかない。

「当分こいつらはお前には手が出せないだろう。」

ヴォルフラムは得意気に薫を見た。

確かに今日の叔父の顔は、一生忘れられない思い出になりそうな程だった。

まさしくヴォルフラムの言う通りだろう。

「カオル、帰るぞ。」

「う、うん。」


ヴォルフラムを慌てて追いかけ、

本家をあとにした。


「今日はありがとね。」

帰り道、そう言うとヴォルフラムは照れたように、

しかし毅然と言う。

「礼など…。

僕は当然のことをしたまでだ。」

そんなヴォルフラムの優しさが暖かく感じられた。

そして、どこか照れているヴォルフラムが可愛かった。

「ヴォルフラムが来てくれて良かった。」

「…そうか。

僕も来てよかった、と思う。」

ヴォルフラムにしては珍しく素直だ。

少々たどたどしい感じはあるが…。

『ラブラブなところ失礼だが、時間だ。』

――――――眞王!?

不意にかな〜り不機嫌な声がしたと思えば、

道沿いに流れる川の水が急にふつふつわきはじめた。

「…もう、帰らなきゃいけないみたいだな。」

「え、ええ、そうみたいね。」

眞魔国に戻ってからの安否を気づかいつつ、そう言った。


「カオル。」

別れ際、ヴォルフラムが薫を呼んだ。

「ん、何?」

「グレタと待っているからな。

ちゃんと来るんだぞ。」

「わかってるよ。」

「カオル、手を貸せ。」

急にヴォルフラムは薫の手をとって、優しく口付けた。

「な、何!?」

「…今日の礼だ。

…僕はもう帰るぞ。」

不意に思い付いて薫は、

ヴォルフラムの顔を引き寄せて頬に口付けた。


「な、な、何するんだ!?」

「え〜と、行ってらっしゃいのキス…?」

「…!」

ヴォルフラムが何かいいかけたが、

眞王の堪忍袋の緒がきれたのか、

ヴォルフラムは強制送還された。

薫の手の甲には、まだヴォルフラムの唇の感触が残っていた。


―――眞魔国に行ったら、


ヴォルフラムに『ただいま』って言ってみようかな…。








―好きだから、守りたいと思ったんだ。






バカップルですいません

調子乗りすぎました
再チャレンジ


ネタバレは此方






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