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グウェンダルルート
とりあえず、渋谷家で待機することにした。

家に入ってから、ふと美子が言った。

「そういえば、眞魔国からお客様が来てるの!」

「は?」

(何故…?)

上機嫌な美子にリビングに案内され、

リビングで漬物を食べている彼と目があった。

「グウェンダル!?」

見たところ、グウェンダル一人のようだ。

恐らく渋谷家の誰かの服を借りたのか、

眞魔国の服ではなかった。

「え〜と、なんでグウェンダルが?」

「眞王陛下に頼まれたのだ。

お前を助けてやれとな。」

しかし、眞王陛下ゆえ逆らえなかったが、

仕事が溜まっているのが気掛かりらしく、いまいち不機嫌である。

「そうなの?

何か困ってるの?」

美子も心配げに薫を見た。

「まぁ、一応凄く困った事態ではあるんだけど…。」

そう言いつつ、ちらっと美子を見る。

美子に話すと叔父のところへ殴り込みそうな気がしなくもなかった。

「ちょっと、グウェン

一緒に来て。」

慌ててグウェンダルの手をとり、渋谷家を出た。

「どうかしたのか?」

「ん、ちょっとあんまり知られたくなくて…。

実は今日、私お見合いしなきゃいけないのよ。

勿論、私は承諾してないんだけど。

叔父が勝手に決めちゃったのよ。」

そう言いつつ、肩を落として言う。


「どうにかして、逃げ出せないかなぁ…。」

薫の隣でグウェンダルもシワを寄せて考え込んでいた。

「駆け落ちというのはどうだ?」

「駆け落ち?」

「あぁ。あまりぬるいことをしてもしょうがないしな…。」

グウェンダルにしては意外な判断だったが、

らしいと言えば、そうかもしれない。

「でも、具体的には?」

「書状を残して、駆け落ちすれば良い。

あぁ…前にアニシナにもらった薬がある。

万が一の時はこれを使う。」

グウェンダルは、小さな小瓶を取り出した。

いつぞや、アニシナの結婚騒動で使用したものだ。

出来れば使用したくはない。

「アニシナの?

大丈夫なの?」

「あれから改良も重ねてある。

恐らく大丈夫だろう。」

そう言いつつ、グウェンダルの顔には若干の不安がみえた。

「でも、私祖父の意志は継ぎたいの。

だから正面から逃げるわけにはいかないわ。」

「そうか。」

「我が侭でごめん。」

「気にするな…。

お前のせいではないのだろう。」
グウェンダルは優しくそう言った。

淡々とした口調の中に暖かみを感じる。

「ん、ありがとう。

とりあえず私の家に来て。」

家に帰るとすでに老婆がいた。

お互いを紹介し、

薫はある程度自分の境遇と、
今日の詳細について話を進めた。

グウェンダルは時々合図ちを打ちながら、

ずっと話を聞いてくれた。

「大方の状況は理解した。

地球でもなかなか大変なようだな。」

「ぁー、まぁね。」

薫は曖昧に苦笑いを返した。

「私がお前の叔父と話をつける。」

「…え?」

心なしかグウェンダルの皺がより小刻みに多く、

声色も不機嫌な気がする。

(もしかして、怒ってる…?)

グウェンダルはいつも冷静で、

本気で怒った姿を見たことがなかった。

「心配するな。

私が守ってやる。」

グウェンダルの言葉はいつも心強い。

どんなときも、堂々としていて寄り添うことも自然だ。

グウェンダルはいつだって、

薫を受け入れてくれる。

今回もそうだった。

「ん、ありがとう。」

「…どうした?」

しかし、薫が礼を言ったそばで

グウェンダルは心配げに薫を見た。

そして、薫の目尻に浮かんだ滴を指先で拭った。

「あれ…?泣いてた?」

「あぁ…

あまりそういう無防備な顔は見せるな。」

「…ごめん。」

「いや、たまには良いがな。」

(私の前だけでなら…)

そういうグウェンダルの顔もほんのり赤い。

今度は薫が心配げに

グウェンダルの顔をのぞき見た。

「グウェンダルこそ、顔赤いよ?」

(近い!)

そんなグウェンダルの心の叫びも虚しく、

薫は近距離でグウェンダルを見る。

「…大丈夫だ。

なんでもない。」

「本当に?」

「本当だ。」

グウェンダルの頑固とした態度に
薫は顔を離して言った。

「グウェンダルっていつも、そういうこと言ってくれないから不安なのよ。

何かあったらちゃんと言ってね?」

グウェンダルはその言葉を聞いて、ふっと笑った。

「それはお前も同じだろう。

私が来なかったらどうしていた?」

「う…それは…。」

薫は言い返せずに黙り込んだ。

グウェンダルはそんな薫を自然と抱き寄せた。

「大丈夫だ。私がいる。」

「ん、グウェンにも私がいるわ。」

そう切り返されるとは思っておらず、

グウェンダルは自分の腕の中の少々を見た。

「全く…敵わんな。」

「何が?」

「此方の話だ。」

「何それ?」

薫は、変なグウェンと言って笑った。

それから、いつものように編みぐるみをし、

和服に着替えた。

もともと渋い色が似合うグウェンダルは、

和服との相性も良かった。

薫を見たグウェンダルもまた、

「悪くない。」

と多少曲がった誉め言葉を返した。

だが、薫にとってはそれで充分嬉しかった。

本家に着くと、例の如く叔父が待っていた。

親戚も珍しく集まっている。

「良く来たな、薫。」

「売られたケンカは買わないとね。」

「可愛くないね…お前も」

薫を睨んだ叔父はゆっくりと、グウェンダルに視線を当てた。

「貴方が薫の叔父か?」

「まぁね。ずいぶんと年上なんだな

まぁ良い、どのみち変わらない



……来い、」

「痛っ!ちょっと何するの!?」

強引にも叔父が薫を連れ出そうとしたが

グウェンダルがすかさずその手を振り払い、

薫を自分の後ろへ隠した。

「なんのつもりだ。」

「私は貴方と話をするためにここまで来た。」

「何も話すことはない。」

「いや、私と二人、話をしていただこう。」

今度はグウェンダルが無理矢理叔父を連れていった。

「部屋を借りる。」

そういって、二人が消えて約30分ほどたった頃、

呆れたようなグウェンダルが出てきた。

「帰るぞ。話はすんだ。」

「…え?」

「人間とはなんと貧弱か…。

当分お前に手出しはしないだろう。」

(何したんだろ…?)

気にはなったが、なんとなく怖かったのでやめた。

家にかえると、老婆が待っていた。

「お帰りなさいませ。」

「ん、ただいま。」

「お嬢様、大丈夫でしたか?」

「ん、グウェンダルのおかげで…。」

(何したのかちょっと不安だけど…。)

ちらっとグウェンダルを見たが、

相変わらずの表情だ。

「…そろそろ私は帰る。」

不意にグウェンダルが言った。

「…?もう帰るの?」

「仕事が溜まっているのでな。

向こうで待っている。」

グウェンダルも少なからず残念そうだ。

グウェンダルが服を着替え終わってから、

薫は、自分の部屋から自作の編みぐるみを持ってきた。

そして、グウェンダルの手にのせる。

「今日のお礼。」

「そうか、大事にする。」

グウェンダルは、そういうと池の中にたった。

やがて、水が沸騰するかのように泡を吹き、

グウェンダルを飲み込んだ池はいつものように静かに波紋を描いていた。

薫の部屋には、この日作ったグウェンダルの編みぐるみがひっそりと飾られている。







―大事にしよう、お前からの贈り物を。今日というこの日のことを。








グウェン難し。

好きなんだけどっ無理(殴
再チャレンジ


ネタバレは此方



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