3
次の日、久しぶりに学校に行った気がした。
実際には、そんなに時間がたってはいないのだが、第一回スタツアがまだ薫に不思議な感覚を残していた。
「おはよ。村田君」
「薫、眠そうだね」
学校の校門であった二人は、そのままクラスへ直行した。
「なんだか、まだ色々心の整理がね」
「そりゃそうだよ。かなり突然だったし」
「でも、村田君がいたから、心強かったけどね。まさか、大賢者だったとは…」
すると、村田はクラスの扉の手前で立ち止まった。
「まぁ、お互い地球じゃただの高校生だしね」
「そうね」
そのまま、笑いながらクラスに入ると、なぜかクラスの視線が二人に注がれた。
それもそのはず、地球軸で言う『今日』という日に、突然二人が仲良く校門から登校してきたのだ。
からまれやすくて、気弱な印象の強いムラケン。
一方、剣道全国制覇者でクールで美人な冷徹少女で名高い薫。
今までもクラスメートとはいえ、会話はつい昨日まで二言三言にすぎなかった。
「何!?ついに付き合ったの?」
薫の友人の女子が急に、詰め寄ってきた。
興味津々の様子である。
「は?」
(ついにって何よ)
薫が、唖然としながら友人を見る。
「全く、朝から仲良く登校しちゃって」
村田は誰にでも接するタイプではあったし、少々冷めた薫に対してはより一層過保護(?)なことは、クラスも承知の上だったらしい。
「いや、違うんだけど」
薫は、冷静にさらりと否定する。
「そうそう、やっと友達公認みたいな、ね。さっきも偶々校門であっただけだし」
村田はいつもの口調で、そう話したが、
(そう、あからさまに否定しなくても)
と内心、薫に苦笑いを浮かべた。
「なんだ、つまらないの〜」
「つまらなくて、結構だわ。じゃあ」
機嫌を損ねた薫は、自分の席へ移動して読書を始めた。
村田もため息をつきながら、薫の見える自席に座った。
(本当はもう少し長い期間、こういう時間が続くはずだったのに…)
と思いながら、
『クラスメート』から『友達』に昇格したことだけは、唯一、眞王のいたずらに感謝することろであるなぁとも考えた。
(まぁ、どうせ、眞王とはいえ、地球まではこれないしね)
そんな風にくすりと笑う村田を、誰も知らない。
此処は村田だけの特等席なのだ。
無料HPエムペ!