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「はい、お待たせ。あら?しょーちゃん」
美子ママが帰還した。
手には恐らく着替えと思われるものをもっている。
ツェリには負けるが、逆にセクシーではなく、今回はファンシーセレクトのようだ。
「じゃあ、私の部屋で着替えましょ? えっと…」
「幸村薫です」
名前を聴くと、再び感激の色を露にした。
「やっぱり女の子って良いわね!さ、行きましょ薫ちゃん」
上機嫌の美子に手を引かれ、後でね、と言って有利達と別れた。
そして、何故か部屋でファッションショーをし、やっと美子に開放され着替えが終わったのは30分後だった。
その間、有利達は近況報告やらで時間を潰していた。
「お待たせ!」
リビングに得意顔で現れた美子。
後ろにハートでも付きそうな口調である。
「ごめんね、ちょっといろいろ服悩んじゃって…」
と言いながら、かなり楽しんでいたのだろう。
美子の口調は、相変わらずだ。
「ほら、薫ちゃん!」
着なれない服第二回目で、
リビングから死角の場所に隠れていた薫の腕を美子が引っ張った。
「ね?可愛いでしょう?」
得意満面の笑みの美子に抱きつかれながら、戸惑いがちの薫。
この瞬間ほど、三人が美子に感謝の念を感じた瞬間はないだろう。
「え〜と、変じゃない?」
不安に思いながらも、とりあえず聞いてみる。
「うん、すごく似合ってるよ。
さっすが、ママさん!」
村田は大絶賛だ。
「ありがと、健ちゃん。ちょっと、ゆーちゃんとしょーちゃんは?」
恐る恐る二人を見る薫。
「おふくろの服の趣味に初めて感謝したかも」
有利が言うと、美子がふくれた。
「失礼ね、ゆーちゃんたら」
「いや、俺も同じ意見だ」
意外にも勝利も賛同。
まさかの意見の一致に、美子は嬉しいやら哀しいやらで、
「まぁまぁ、しょーちゃんまで!?しょうがないわね。薫ちゃん、今度一緒にショッピングに行きましょう!」
と言った。
まさか、友達の母親にショッピングに誘われると思ってもおらず、薫は、曖昧に返事を返した。
「はぁ」
「決まりねっ!明日は一緒にショッピングよ」
「「「明日!?」」」
男衆三人が同時に叫んだ。
確かに明日は土曜日で、学校は午前中で終わる。
とはいえ、急すぎだ。
「一度してみたかったのよねぇ、学校帰りに娘とお出かけっていうの」
美子はすでにノリノリでスケジュールを立てている。
(いや、娘じゃないんだけど…)
とはいえ不思議と薫も、悪い気はしなかった。
「それに薫ちゃんの制服姿も見てみたいし…」
「じゃあ、僕も一緒に行ってもいいですか?」
「何言ってんだよ!?村田!」
美子をとめられないといち早く悟った村田は、参戦申請を出した。
「そうだ、弟のお友達。これは、家族水入らずの…」
勝利もなんだか言っていることがおかしい。
尚且つ、勝利も行く気満々らしい。
「勝利、大学のレポートが終わってないとか言ってなかったか?」
「そんなものは、愛でどうとでもなります!」
(…コントだ)
薫は傍観しながら、半ば楽しんでいる。
「じゃあ、明日は、学校帰りに皆でショッピングね!楽しみだわぁ。まさか、ゆーちゃんたちも来てくれるなんて!」
「ええ?!俺もかよ!?」
有利は美子をみたが、まるでお構いなしだ。
「じゃあ、席について。カレー食べましょう。」
そうして、明日のスケジュールは決まってしまった。
(中間考査の為に帰ってきたはずなのに…)
薫は、眞王に少しだけ申し訳なさを感じた。
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