2 「はい、お待たせ。あら?しょーちゃん」 美子ママが帰還した。 手には恐らく着替えと思われるものをもっている。 ツェリには負けるが、逆にセクシーではなく、今回はファンシーセレクトのようだ。 「じゃあ、私の部屋で着替えましょ? えっと…」 「幸村薫です」 名前を聴くと、再び感激の色を露にした。 「やっぱり女の子って良いわね!さ、行きましょ薫ちゃん」 上機嫌の美子に手を引かれ、後でね、と言って有利達と別れた。 そして、何故か部屋でファッションショーをし、やっと美子に開放され着替えが終わったのは30分後だった。 その間、有利達は近況報告やらで時間を潰していた。 「お待たせ!」 リビングに得意顔で現れた美子。 後ろにハートでも付きそうな口調である。 「ごめんね、ちょっといろいろ服悩んじゃって…」 と言いながら、かなり楽しんでいたのだろう。 美子の口調は、相変わらずだ。 「ほら、薫ちゃん!」 着なれない服第二回目で、 リビングから死角の場所に隠れていた薫の腕を美子が引っ張った。 「ね?可愛いでしょう?」 得意満面の笑みの美子に抱きつかれながら、戸惑いがちの薫。 この瞬間ほど、三人が美子に感謝の念を感じた瞬間はないだろう。 「え〜と、変じゃない?」 不安に思いながらも、とりあえず聞いてみる。 「うん、すごく似合ってるよ。 さっすが、ママさん!」 村田は大絶賛だ。 「ありがと、健ちゃん。ちょっと、ゆーちゃんとしょーちゃんは?」 恐る恐る二人を見る薫。 「おふくろの服の趣味に初めて感謝したかも」 有利が言うと、美子がふくれた。 「失礼ね、ゆーちゃんたら」 「いや、俺も同じ意見だ」 意外にも勝利も賛同。 まさかの意見の一致に、美子は嬉しいやら哀しいやらで、 「まぁまぁ、しょーちゃんまで!?しょうがないわね。薫ちゃん、今度一緒にショッピングに行きましょう!」 と言った。 まさか、友達の母親にショッピングに誘われると思ってもおらず、薫は、曖昧に返事を返した。 「はぁ」 「決まりねっ!明日は一緒にショッピングよ」 「「「明日!?」」」 男衆三人が同時に叫んだ。 確かに明日は土曜日で、学校は午前中で終わる。 とはいえ、急すぎだ。 「一度してみたかったのよねぇ、学校帰りに娘とお出かけっていうの」 美子はすでにノリノリでスケジュールを立てている。 (いや、娘じゃないんだけど…) とはいえ不思議と薫も、悪い気はしなかった。 「それに薫ちゃんの制服姿も見てみたいし…」 「じゃあ、僕も一緒に行ってもいいですか?」 「何言ってんだよ!?村田!」 美子をとめられないといち早く悟った村田は、参戦申請を出した。 「そうだ、弟のお友達。これは、家族水入らずの…」 勝利もなんだか言っていることがおかしい。 尚且つ、勝利も行く気満々らしい。 「勝利、大学のレポートが終わってないとか言ってなかったか?」 「そんなものは、愛でどうとでもなります!」 (…コントだ) 薫は傍観しながら、半ば楽しんでいる。 「じゃあ、明日は、学校帰りに皆でショッピングね!楽しみだわぁ。まさか、ゆーちゃんたちも来てくれるなんて!」 「ええ?!俺もかよ!?」 有利は美子をみたが、まるでお構いなしだ。 「じゃあ、席について。カレー食べましょう。」 そうして、明日のスケジュールは決まってしまった。 (中間考査の為に帰ってきたはずなのに…) 薫は、眞王に少しだけ申し訳なさを感じた。 |