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TALES OF THE ABYSS〜凡愚の意地〜
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オラクル騎士団本部はローレライ教団の影という一面から一目につかない地下等に作られている。

とは言っても騎士団も人の子、休息をとりたい時は当然ある。そんな時に使われるのは誰もいない会議室や食堂だったりするのだが

その食堂ではざわざわと似つかわしくないどよめいた空気が漂っていた。

何故なら

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

上からディスト、リグレット、峻、そしてローレライ教団のトップ、イオンが机を四方から囲い向かい合っていたからだ。

その空気はお世辞にも良いとは言えず、無言で時折パチパチと音がするだけだった。

「…………」

緊迫感の中、峻は正面に座るリグレットの手元を見ると、重々しくこう呟いた。








「…………ポン」

「また鳴いたね君は」

「狡く点数を稼ぐ気ですか?」

「うっせ!鳴きまくって速攻トイトイで上がるのがベストなんだよこの場は!そしてあわよくば加カンしてドラを乗せる。そうすれば跳満はおろか倍満だって視野に入る!」

「それで僕の清一色に振り込んでくれたのはどこの誰かな?」
「ぐ……」

「とりあえず牌を捨ててくれないか?せっかくリーチしたのに一発を消されたんだ。せめてツモで一役つけたい」

「あっと、すんまっせ〜ん。リグレット姐さんの河から見ると……これかな?」

「すまん峻、ロンだ」

「げっ!?」

「ざまぁ」


ぶっちゃけ彼等は麻雀中だった。






「立直、平和、一盃口、ドラ1……7700だな」

「ちっくしょう……せっかくの小三元が」

対面のリグレットに点棒を払いながら峻が呻く。

「おや?ドラを抱えた上での小三元とは……」

「これは危なかったね。ナイスだよリグレット」

両脇のディストとイオンも自分の手牌を崩しながら峻の手牌を盗み見る。

「くそ!次だ!次で取り返してやる!」

うがぁとわめきながら峻はめちゃくちゃに牌を混ぜた。

と暇だった四人で麻雀をしているわけなのだが何故そもそも麻雀などやっているのか?

これには導師イオンと峻が関係している

先日、峻は導師イオンを導師と気付かず舐めきった態度をとってしまい、結構本気でヤバい立場に立たされてしまった。

そこで峻はもうプライドなんざゴミ箱に捨ててやるぜ!とばかりの素晴らしい土下座を見せつけた。

ここでいつものイオンなら関係なしにザレッホ火山で人間焼肉の刑に処す所だったがその日はたまたま死ぬ程暇だったのでふと何の気なしに

「じゃあ暇だから暇つぶしを教えろ」

と言った。どうせ大したものは出ないだろうし、あらかた話を聞いた後ザレッホ火山に放り込んでやるよと思っていたのだが……



「結構頭を使うゲームだな。なかなか面白い」

「ブラフなんかも重要ですよ」

感嘆したように牌を並べるリグレットの言う通り、しょぼい役をさも高得点に見せオリさせたり、河に寄ってる牌で待ったり、人を鮮やかに騙くらかすこのゲームはイオンの性に合っていた。

(結構楽しいし……まぁ許してやるかな)

とイオンは正に導師の如く寛大な心であの馬鹿を許してあげたのだ



「南場入りですね」

「一位は変わらず導師ですか……」

「性悪だから当然だね」

「アカシック……」

「すいませんでしたァァっ!!」
「フライング土下座……だと?」

「無駄に土下座だけ上手くなってますね」
ふん、と鼻を鳴らしながら掲げた杖を脇に置き直す。

今までなら問答無用でアカシックトーメントだったのだ。我ながら心が広いなと感心する。

「よっしゃあ!東場じゃソッコー流されたがこっから一気に捲ってやるぜ!」

峻が気合いを入れながら手牌を見ようと牌を立てた瞬間……




「そこにいたのか……!導師イオンまでこちらにいらっしゃいましたか」

オラクル騎士団のトップ、ヴァン=グランツがラルゴを引き連れて何枚かの書類を持ちながら峻の後ろから現れた。

彼は導師イオンがいたことに軽く驚くと頭を下げ一礼し卓の真ん中に持っていた書類を広げた。

「任務ですか?」

「うむ、ザレッホ火山に巣くう魔物の殲滅だ」

いの一番に書類に目を通したリグレットがポツリと呟くように言うのにヴァンが頷く

「そんなものリグレットかラルゴがいればすぐ終わるでしょ」

イオンがフンと鼻白みながら言うようにオラクルにその人ありと言われる程の武勇を持つ者がここにはいる。

リグレット

ラルゴ

ディスト
そして今ここにはいないアッシュ

この4人は知略にも優れまさに一騎当千という言葉が相応しい獅子奮迅の活躍をしてきた。

そしてそこにシンク、アリエッタが加わり後の六神将となり、大きな壁として立ちはだかることになる。

だがヴァンはイオンの言葉に頷かず、困ったように苦笑いした。

「それが……」

「何か事情が?」

「うむ……部下達の報告に妙なのがあってな」

峻の言葉にヴァンは雀卓と化していた机に広げた書類の一枚を一番上に置く

「ここを見てくれ」

「え〜なになに?……姿形は蜘蛛のようだが体を覆うモノは血管のように蠢き、足は明らかに六本以上しかもそれぞれに意志があるように好き勝手に這いずり回っている?」

「うぇ……想像しただけで気持ちわる」

「しかもそんなのがうじゃうじゃいるんだと」

「うげ……」

峻が読み上げた分にイオンは不快感をあらわに吐く仕草をする。

他の皆もイオン程あからさまではなかったが一様に顔をしかめた。

「火山に蜘蛛……少し考えにくい組み合わせだな」

「今まで発見されたことのない新種の魔物でしょうか?」

「わからん、故に私達が調査の任務を仰せつかったのだ」

「なるほど、ならば直ぐに向かいましょう」

リグレットの言葉を皮切りにラルゴとディストは目を今まで遊んでいた柔らかなそれから威厳と威圧を備えた厳しきものへと変える。

(おぉ、あの人達が本気だ……こりゃすぐ終わるな)

それを見た峻は自分に向けられたわけでもないのにその視線の鋭さにおののく

ゲームではわからなかったがこの人達は本当に強い。どうやってルーク達が勝ったのか不思議に思う程に

「それと今回は友里も連れて行く」

「へ?」

「友里を?それは何故に?」

気の抜けた声を発する峻を尻目にリグレットがヴァンに問う

「あいつは確かに強くなった。才能もあるし努力もしている。だがまだこの任務につかせるのは危険では?」

ラルゴが皆を代表して言った言葉にヴァンも頷く

「その通りだ。本来ならアッシュに任せる予定だったのだが奴には急ぎの任務で今はダアトにいない」

「その代わり……ですか」

「そうだ……なに、魔物と戦わせるつもりはない。もしもの時の調査員の護衛を頼むだけだ」
(なるほど……そりゃ未知の魔物の生態を知る為には調査員はいるわな。)

峻はヴァンの言葉に一人頷いていた。

確かに調査員は非戦闘員ばかりだろうしそれを守る護衛は必要だろう

しかし未来の六神将が三人に主席総長のヴァンがいるとなれば調査員を守りながら戦うことなど容易い筈だ

それなのにわざわざ護衛を友里に任せる理由……それは

(経験を積ませるってとこか)

おそらくはそうだろう。いずれ彼女にもこんな任務が回ってくる時がある。
その時の為の準備なのだろう


「それなら面子が導師と2人になりますね〜。導師、実はこの麻雀ちょいルールを変えれば2人でも出来るんですよ」

いつも通り自分は留守番だろうとイオンと2人で暇を潰そうとした峻であったが

「何を言っている?」

「え?」

「お前も調査員の1人として今回の任務に同行してもらうぞ」

ヴァンのトンデモ発言でそれは露と消えた。

「え……えぇぇぇぇぇっっっ!?」

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あきゅろす。
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