[通常モード] [URL送信]
忍び寄る危機

不思議な気持ちだった。
心が読めない…初めての人
不安な気持ち、違う。
彼女は一緒だと言ったのに僕は違うと言った。
彼女の言霊は光――そう僕とは違う

―忍び寄る危機



宿舎を抜け出した。
宮廷に集められた…いや中には拐かされたと言ってもいい人間も混じる。此処、陰陽殿。此処の人間は霊や鬼を見ること、祓うことが出来る人間。この陰陽殿は京の都で唯一、鬼等を寄せ付けないゃうになっているが、その裏面、人間の負の感情が渦巻いている。
霊視――人の心を読む能力
この力は異端の証。しかし選ばれし者しか持ち得ぬ力。
僕もかつての友、乙破千代をからこの力を得た。そんな彼女が気になって彼女の話を揃えた。
彼女の話は有名だった。こうやって宿舎にいるだけで空の噂は入ってくる。
空は元は大貴族の娘だったという。幼い頃からいまでも美しい姫だったが、ある日急にあの金の瞳と薄い髪になった。年をとって白髪に変わった訳でもあるまい。他の話はどれも信憑性に掛ける。天女の娘だの実は幽霊だの――信じるだけ無駄だ。彼女は13の年でも他の巫女を逸脱してそれ故、他の権力者の恨みをかってあの屋敷に幽閉されているという。そんな彼女に取って、自分という侵入者はなんだったのだろう。酷いことをしてしまった。
「本当に…自分と同じ力を持っているから分かって貰えると思ったのに」
ぼやく自分なんて珍しい。そう言えば彼女から貰った金平糖があった。僕が飴を好きなのを彼女は知っていたのだろうか。
いや、同じ力を持つもの同士は読めないことはがわかった。それはないのだろうけど――
「おい、知ってるか?」
「何が?」
一人考えに浸かりたい時だと言うのに辺りが五月蝿い。身分関係無しに集められた霊能力は共同生活をおくっている。都で疫病に怯えながら暮らすより全然ましだろう。普段なら聞き流すな噂でも「空」の話なら聞き耳を立ててしまった。「あの白蛇様の生まれ変わりと言われている巫女さんがいるだろ。帝殿の左屋敷の」
「あぁ…いるねぇかなりの美女だと有名な。それがどうした?」
「あの巫女に西都の鬼払いの命令が下ったらしいぜ」
「本当か?あの鬼を…大丈夫なのかよ」
「さぁな。あの鬼はこの陰陽殿の人間の血を沢山吸っているらしいからな。誰も手付かずで放っておいたみたいだがついに大切に保管されていた巫女様にも白羽の矢が立った訳だ」
彼女が…?いや、関係ない事か。霊視の力を持つ彼女なら鬼ならどうと言う事もないだろう。僕には関係ない。違うのだ。僕と空は。

京の都は常に薄暗い厚い雲に覆われていて日の光が差したことを生まれてこのかた一度たりともない。灰色の空気が立ち込め視界は悪い。陰陽殿から出てずっとこの場、都の中心はある程度安定はしているがここから少しでも足を踏み出そうものなら辺りは一気に地獄と化す。
空が命が下されれ向かった場所というのはこの先ずっと西の郊外に出た西の都。栄華を極めた大貴族の屋敷がいくつも建てられていた場所だ。しかし今は怨霊が京都に移り住むようになってからはその屋敷も捨て置かれるようになり、屋敷は人の手がはいらず廃墟と化し風化の一途を辿っている。倒壊の危険もあり誰も近付かない。云わば「見捨てられた場所」なのだ。
そんな場所に近頃、鬼が巣くうという。初めては小鬼や中鬼の姿しか無かったらしく見習いの巫女や陰陽師などがしゃしゃり出て返り討ちにあった。霊力のある人間の血肉や魂を喰らいいつしか大鬼となってしまった。そして並みの霊能力者では太刀打ちも出来なくなりこの地は完全に封鎖されてしまった。しかし何時までもこの地を放って置くことはできなかったのだろう。この地で生まれた鬼が都に降り、人を喰らうのを恐れたのだろう。流石のお上も見て見ぬ振りが出来ずに空に命を下した。そう考えるのが妥当た。
只、引っ掛かる事が一つある。それは彼女のいったここから出して貰えない、それはつまり空が出てまで命下すだろうか゜おかしい、おかしいのだ。


彼女に忍びよる、命の危機

[戻る][次へ]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!