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カルマ
君の笑う顔
君の声
全てが僕の
冤罪

―カルマ

「何も笑うことないじゃない――」
ぷくりと頬を膨らませて拗ねる少女――あの後牛車は木端微塵に壊されていたし空は霊力の使い過ぎで動けないと告げられた時思わず笑ってしまったのだ。空をこのまま放って帰る訳にはいかない。僕が背負って帰ると言ったのに彼女は拒否をした。無理をするなっ説得したら仕方ないと生意気混じりな文句を言っていた。この言い方が何より可愛かった。空を背負うと彼女は上着を頭から羽織る。
「さっきから気になっていたのだけど」
「あぁ…これ?ほら髪の毛とか目立つからさ。色々言われたくないの」
と、けろりと答えた――
「僕と同じような苦労をしてるんだね」
「そうかな。でも小さい頃から暮らしに困ったことないもの。まだましなのよ、きっと」
「そう…かな」
何とも言えなかった。何を幸福とするのは個人の自由であるし他人がどうこう言えるものじゃない。
「なんでこんな所に一人で来たの?何とかならないって分かってたなら」
「わかってたよ。一応言ったんだけどね…使者の人が早く行けって急かすからさ」
「君を…殺そうとしたのかい?」
邪魔者だ、空は自分をそう表現をした。空は眉を潜めていた。何て言おうか迷ってもいたのだろう。やれやれといった様子で口を開く。
「だろうね…全く…呆れちゃうけど…前みたいにましな事を考えればいいのに」
「前?」
「あ…うん。前にも似たような事が何度かあってね」
前にも、語らずとも分かる。空の慣れた様子、諦め切ってる。
「私も葉王に聞きたいことがあるの」
「うん」
「答えたくないなら答えなくていいからね」
「だから――」
「なんで私を助けてくれたの?」
その問いには直ぐに返事が出来なかった。と言うより答えを持ってなかった。何で―?放って置けなかったから。どうして助けたの?死んでしまうから。でも、そんな事より大切なことが…
「答えたくない?」
「と言うより答えられないかな」
「じゃあもう一つ」
空は深く布を被る。くせなのか顔を隠し
「何で鬼を取り込んだの?」
ぴしゃりと叩かれるような感じに教われた。真実を突きつけられる感覚。全身震え立った。悪寒もした。足も止まった。そしてまた、何故と彼女に対して疑問が浮かぶ。
確かに僕は八年近くも前に乙破千世、鬼を取り込んだ。親友だった彼を復讐の道具にした――彼と言う代償を払い霊視と巨大な力を手に入れた。彼女はこの霊視の力で初めて心を透かす事が出来なかった少女。
「ねぇ…葉王」
彼女の声色が恐ろしく感じた。彼女は僕の心を見透かしている、まさか。では何故―?
「こんな事を言いたくないけど…辛いでしょう?」
先程とうって変わって反転した心配の言葉。しばらく信じられなくて黙ってた。
「私は生まれつき霊視の力を持ってる。生まれつきなんて言っても小さい頃はどうだったかなんか知らないけど。…葉王から鬼の気がしたからまさか鬼が化けた姿かと思ったけど…助けてくれたから。だから何故助けたの?って聞いたの。私を食べるって言われたらまずいなぁって」
えへへと茶化すようにいう空。
「恐ろしくないのか?」
「何処が?葉王は私は今まで会ってきた人の中で一番綺麗な心の持ち主だわ。純粋ね」
「……それを言ったのは君で二人目だ」
一人目は乙破千代。彼は僕を友達といってくれた。でも友達は失った。僕の醜さゆえに――それを言ったら空は僕を軽蔑するだろうか、離れて行くだろうか。いや空はしない。本当に綺麗なのは彼女だ。哀れみの慈悲じゃない。人間の本心、醜さ、卑しさそれを知ってるからこそ彼女の不思議な言霊。
嗚呼、母も同じようなことを言っていたな。自分よりも年下の少女に母を重ねるのはおかしいかもしれない。生まれ代わりだと思ってしまう。
「ねぇ、空」
「うん?」
「ふぇ…嬉しい言葉だけどどんな風の吹き回し?」
「そんな約束をした気がする」
自ら友を殺した。その業がある。でも今は思う。
せの力でこの少女を守れるなら。
「じゃあありがたくその言葉を受け取っておこうかな」



と、彼女は満面の笑みで笑った

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