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FINAL GAME

 丸みを帯びたガラスの棒。それを何に使うかを一瞬で想像出来る自分に嫌悪する。この状況で、「理科の実験でもするんですか?」なんてボケる事はできない。そんなの、綾都ぐらいの天然でないと無理だ。

 しかも高科は俺に見せつけるようにその棒にピンク色のローションを垂らしていた。ドロリとしたその液体を眺めていると、ふいに腕を掴まれる。手加減なしの力で掴まれた腕は、きっと痣が出来る事だろう。

「動かないでね? でないとスッゴク痛いから」

 スッゴク、の所を強調して笑いながら目の前の男は躊躇もせずその棒を突き立てた。どこにって、勿論、俺の尿道にだ。

「……っぁ」
「あれー?中々入らないなぁ」

 ぐりぐりと押し込まれる度、頭を殴られたような痛みが襲ってきて喉から掠れた悲鳴があがる。上手く息ができなくて、必死で口を開く俺の姿は情けないものに違いない。これ、絶対切れてる。生暖かい感触は、溶けたローションだけではない。血の感触だ。

「ひょっとしてココ弄られたことナイ、とか?」

 涼しげな顔をして聞いてくる高科が疎ましい。当然だが、俺には尿道に物を突っ込む趣味はない。一太だって、そこまで変態じゃなかった。青井だってそうだ。いや、もしやろうとしていたら、俺は蹴り倒した上でソイツのモノに棒でも鉛筆でもぶっ指しただろうが。

「うわぁ。聖王、泣いてるの?」

 生理的に滲んでいた瞳でにらみ返せば、高科は楽しそうに囃し立てた。その姿はひどく幼い。

……虫の羽をちぎる幼児って、こんな顔してるのかな。

 残酷なまでに無邪気な表情を浮かべる高科を見ていたら、だんだんその顔が近づいてきた。キスされるのかと思う程接近した彼は真っ赤な舌を出した。

「っ!」
「だーめ。逃げないでね?」

 何をされるのか解らないまま、本能で身体が避けようとする。しかし、高科の左手で無理矢理顔をあげられた。
 続けて、右手の指で無理矢理俺の左目が開けられる。ボロリとこぼれ落ちる雫。
 その瞬間、奴の考えてる事が解ってびくりと身体が揺れる。

 温かく柔らかい舌が、俺の眼球を、舐めた。

「っ、やっ、め、っあ、」

 今まで感じた事のない衝撃にびくびくと身体が痙攣する。下半身を襲う、熱い感覚。思わず吐き出しそうになった快感が、あろうことかガラスの棒に阻まれて逆流してくる。

「あっ、やだっ、ぅあああああっ!」

 涙が溢れて止まらなかった。喉が潰れるんじゃないかと思うくらいの叫び声は紛れもなく俺の声で。それでも、自分が一体何を言っているのか全く分からない。ただ熱くて苦しくて、狂いそうになる。
 頭が真っ白になって、そのまま意識が遠のいて――激しい痛みに、目を見開いた。

「まだ気絶なんてしないでね?」

 前髪を掴まれて、顔をあげさせられる。
 ……本当に。一体俺の何が悪くて、高科をここまでさせるのだろうか。

 荒い息を吐きながらも意識を保っている俺に、高科は満足気に頷くと俺に背を向けて何やら探し始めた。今の内にと手を動かそうとするが、全く力が入らない。そこでようやく、今現在尿道に突っ込まれているガラス棒の事を思い出し、小さく舌打ちする。
 ガラスの棒に垂らされたピンクの液体。あれは、催淫効果のあるものだったのだ。でなくては、目玉を舐められるなんてキモチワルイ事であんなにイクはずがない。

 全く、こんな物騒なものを一体何処から手に入れるのだろうか。いや、睡眠ガスを持っている俺が言っても仕方がない事だが。
 ……ひょっとすると、遊来も催淫剤入りローションとか手に入れることが出来るのだろうか。今度聞いてみるか。いや、その前にそんなピンクの道具の存在を小学生が知っているのか? 知っていたらそれはそれで嫌だ。 

「よし、完成っ」

 馬鹿な事を考えている間に高科の用事は済んだらしい。振り返った奴はこれまた何に使うか聞きたくもない物を沢山手に持っていた。手錠やら目隠しやらエトセトラ、だ。間違っても高校生男子が鞄に入れて学校に持ってくる物ではない。

「お前は学校に何しに来てるんだ」
「え? 可愛い子とキモチイイ事するため」

 ああ、聖王は可愛くないよ? 俺嫌いだから。と相変わらずの笑顔で平然と言ってのけるのを聞き流す。勉強しろ、とは俺も言える立場ではない。
 しかし、その後に続いた高科の科白に俺はドキリとした。

「あとは――綺麗な綺麗な蓮華の姿を見るため、かな」

 うっとりとした表情で語る高科の姿が、本気だったから。

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