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FINAL GAME
PLAYER・1
 石鹸の香りと、その中に混じる微かな汗の匂い。
 さっきまでの行為の所為で汗ばんだ身体同士がひっつくと調度気持ちよい暖かさを感じる。まあ、これから夏が近づくにつれて暑苦しくなるんだけど。そしたら容赦なく俺の上に覆いかぶさる一太を引っぺがすだけの話だ。

「また派手な事やらかしてくれたよな」

 ベッドの中で一太がため息と共に呟いた。
 今、俺達がいるのは一太の部屋。学校が終わってそのまま一太の家に行ったからまだ夕方だと思う。けれど、しっかりと閉められた遮光カーテンのおかげで夕日が沈んだのかは分からない。

 奴が言っているのは、俺が食堂で蓮華にキスをしたことについてだろう。
 あれから数日経ったけれど、未だに俺を見る生徒達の視線は冷たい。それでも面と向かって俺に文句を言ってくる奴はいなかったりする。一太曰く、それは俺の顔の所為だというんだけれど。俺は、そんなに眼つきが悪いのだろうか?
 因みに、不幸の手紙的な嫌がらせは何度かあった。生憎とそういう未知の能力は信じていない性質(たち)なので無視させて貰ったが。

「で?何か分かったのか?」

 大して興味なさそうな感じで聞いてくる。「何か」っていうのは勿論蓮華がニセモノかどうかって事だろう。

「……蓮華は、人間じゃなかったよ」
「あ”?」

 素直に答えてやったのに、思いっきり顔を顰められた。なんだ、俺のいう事が信じられないっていうのか。

「何の冗談だよ」
「一太ごときに冗談なんかいう訳ないだろ。冗談を考える時間と能力が勿体ない」
「……マジかよ」

 心からの気持ちを言ってやれば、一太も納得したらしい。しかもよく考えろ。なにせあの更科家だ。クローンだかアンドロイドだか知らないが、秘密裏に作っていたとしても驚きはしない。
 一太は自らの手で髪の毛をかきむしった。しかも俺の上に乗っかった体勢のまま。

「吹雪達は……当然知ってるよな。くそっ、どうなってるんだよ。一体」
「お前の混乱はどうでもいいから。とりあえず人の上で暴れるな」
「そっか……そうだよな。確かにあの時、死んだもんな。心電図の音……聞いたしな」
「……」

 そうだ。俺も一太も確かに見た。白色に統一された病院の一室で。
 蓮華が息を引取るところを、確かに見たというのに。それなのに俺は、一体何を期待していたのだろう。
 まだ何か言おうとしている一太の頭を掴んで、無理矢理唇を重ねる。
 突然の行動に一太は目を見開いたが、すぐに主導権を取り戻して口内に舌を割りいれてきた。

「…っん、ふっ……」

 舌を絡めとられて吸われる。飲みきれなくて口端から唾液が漏れれば熱い舌で舐め採られた。首筋まで、念入りに。
 やっと離れたと思ったら、一太の手で前髪をかきあげられる。真っ直ぐ俺を見つめてくる瞳と、目が合う。

「……っは、いち…た……」

 髪から離した手を、今度は俺の膝裏に差し込む。足が広げられて、先ほどまで一太を受け入れていた箇所からコポリと白い体液が流れ出る。無言のまま其処に充てられる、一太の熱いモノ。

「んっ……ああっ…!」

 ほぐす必要がない位ぐずぐずになったソコに一太は容赦なく昂ぶりを突き挿してくる。俺も背中に腕を回して、さらに深く導くように腰を動かした。一太も、激しく腰を動かして俺を攻め立ててくる。
 奥の奥まで犯される度に、頭が痺れるような快感が走る。

「あ、ああっ! んあっ……!」

 一太にしがみ付いていると、調度俺の口元に奴の左耳が見えたのでソコに舌を這わす。そうしていれば、悲鳴のような声は出て来ない。
 最初はシルバーのピアスに。次は耳たぶ全体、そして中にまで舌を入れて。
 一太に揺さ振られながら、俺は夢中でその行為に没頭していた。

「……蓮華の事なんか、忘れちまえばいいのに…………」

 だから。
 苦しげに呟かれた一太の声は、聞こえなかった事にしておいた。




「そういえば、もうすぐ新入生親睦合宿があるらしいぞ」

 未だに息が整わない俺の横で一太が何の気なしに世間話を始める。
 一太って体力はあるんだよな。息切らしてるとこ見たことないんだけど。

 俺はベッド横に置いてあったミネラルウォーターを勝手に飲み干すと、先ほど聞いた事を頭に反芻した。合宿とか言ったか? またクダラナイ事を。 誰も親睦なんて望んでないというのに。

「何処でやるんだよ」
「学校。寮に泊まるんだろ。部屋余ってるらしーし」
「……なにそのどうでもいい行事。面倒臭い」
「俺に文句言われても知らねーよ。面倒臭いのは俺も同意見なんだから」

 サボる、訳にはいかないんだろうな。一応俺は風紀委員長らしいし。きっと、風紀の仕事もあるんだろう。こういう時は不良が羨ましい。行事サボったって違和感ないしな。
 と考えてふと一太を見る。今の、サボる人間の発言じゃないよな。

「何、一太。真面目に参加する気なわけ?」
「聖王こそ。一人で参加するつもりなのか?」
「疑問に疑問で返すな」

 じとりと睨みつければ、今度は舌打ちを返された。今度からいつでも攻撃できるよう手裏剣でも常備しておこうか。遊来が半年前に作成した、ダイヤモンド刃加工のがまだ家に残っていた筈。

「行事は出席しないと、留年対象になんだよ」
「留年を恐れるくらいなら不良名乗ってんじゃねーよ……本当だろうな」
「……嘘じゃねぇよ。“嘘を考える時間と能力が勿体ない”」

 先ほどの俺の台詞を真似て答える目の前の人物。
 でも、俺には分かっている。一太は嘘をつく事がある。俺とは違う。
 それでも俺はそれ以上追及しなかった。“嘘を暴く時間と能力が勿体ない”から。

 ……俺が、一太の本心を知る事は決してあってはならない事だから。


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