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赤頭巾は何気に最強です(黒ver.)
美女と野獣は良くてもその逆はイマイチ
 学園祭の時期が来ました。という事は委員長である俺は忙しくなるって訳で……はぁ。

「ではクラスの出し物は、劇に決まりました」

 黒板にズラリと書かれた出し物候補。その中から一番票を集めた劇という文字に俺は赤いチョークで○をする。
 赤は見にくかったか、黄色の方が良かったかなと思っていると隣で書記をしていた王から黄色いチョークを手渡される。流石。でも新品のチョークを使ってピラミッド作るのは止めような。

 それにしても劇なんて準備が大変そうだな、なんて考えていると、はいはーい、と意見を述べる声が聞こえてきた。どうぞ勝手に意見してくれの意を込めて「はいどーぞ」と手を挙げている女生徒を指差す。

「王子役は王くんにお願いしたいんですけどー」
「賛成ー」
「決まってるじゃない!」

 え?  王?  きゃいきゃいと盛り上がる女子達。俺は横に立つ王にどうすると視線だけで問うた。が、王はえー、と口を尖らす。

「蓮の方がいいんじゃないのぉ?」

 しかし彼女らは王の発言に対し一斉に首を横に振った。

「ヨーロッパが舞台だから王くんの方があってるのよ。決まりね!」

 あれ、既に劇の内容が決まってる? 女の子達の間で話し合いは済んでた訳? じゃあ、今ホームルーム潰して投票した時間は何だったんだ。

「え〜、ちょっと待ってよぉ」

 クラスの男子達が皆ため息をつく中、王が女の子に負けじとハイハイ言いながら挙手した。なんだか俺に当てて欲しそうだったので「はい王くん」って言ってあげたら凄く嬉しそうな顔をして口を開く。

「王子ってことは姫役もいるんだよねぇ? それは誰がするの〜?」

 その言葉に教室が一瞬シーンとなる。女子達が激しい睨み合いをしているところを見るとまだ決まってはいないみたいだな。皆自分がやりたいクチか。まあ、王の相手だもんな。コイツと話せる機会なんてめったにないチャンスだし。男前って特。

「決まってないなら〜、姫役は蓮がいいなー」
「はぁ?」

 何を言いだすんだコイツは。しかも王はさらに爆弾発言をかます。

「俺ぇ〜王子役するなら相手は可愛くないと嫌だしぃ」
「ちょ、王」

 慌てて王をたしなめるものの彼は聞こうとはしない。気付けよクラスのこの空気を。

「えーと、でも、あ、そう! 女装! 女装しなくちゃいけないし……」

 劇を提案した女の子が何故か必死で言い繕う。確かクラスの中でも中々の発言力を持つ子だ。名前はもちろん分からない。だから女の子は皆黒髪ストレートな髪型で統一するの禁止しようよ。

「大丈夫〜。蓮ならクラスの誰よりも可愛くなること請け合いだしねっ」

 ……今王はクラスの女子全員を敵に回しました。せめて彼女達が俺まで敵認定してないことを願うばかりだ。
 つうか俺女装似合わないよ? いや勿論やったことは無いけれども!

 しかし王と同じ事を考えたのか、最初は渋っていた女子達もだんだん乗り気になってきたみた。「化粧はぜひ私に!」とか「衣装のデザインは……」なんて口々に発言してる。そんな事でいいのか。そもそも、舞台はヨーロッパじゃなかったのか? 黒髪平凡の姫でもいいのかよ。

「えへへ、盛り上がってるねぇ。あっちの子達なんか『男同士萌え……』とか言ってるしぃ」

 王が嬉しそうに言ってくる。確かにここで断ったりしたらクラス女子から嫌われそうな状態だ。正直怖い。
 仕方なく姫訳を受け入れる事にした俺は、そういえばと思い当たってそっと隣の人物に質問する。

「王子役をやるのはいいんだな? てっきり断るかと思った」

 そう、クラスメイトから王子役の提案を受けても王は断るかと思っていたのだ。そして俺がクラスの皆から王を説得するように依頼を受け、俺が頼んでやっと役を引き受けるのだ。王が俺の頼みを断るわけないし。
 しかし王は何を言ってるんだとばかりにケロリとして答えた。

「当然でしょー? せっかく蓮とキスできるチャンスなのに」
「キス……?」
「王子と姫だもーん。もちろんキスシーン必須でしょっ」

 なんだそれ。おい、一部の女子よ何賛同の意を込めて頷いてるんだ。

「……別にキスくらいいつでもしていいのに」

 そっと呟いた言葉は王に聞こえないように言ったつもりだった。けれども、

 教卓に隠れていた俺の手をそっと握った王にはしっかり聞こえていたのかもしれない。

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