[通常モード] [URL送信]

赤頭巾は何気に最強です(白ver.)
森で迷った兄妹に必要なのは、お菓子より水
頭上にはごーせーなシャンデリア。
 目の保養であるドレスを着た女性達。タキシード姿の俺。そう、ここはパーティー会場なのです。
 そしてもちろん、

「蓮様、何かお食べになりますか」

 王も傍にいるよっ。俺よりタキシード似合うとか、嫌味だよねー。

※※※

 今日のパーティーの主宰は……なんていったかなぁ? お菓子会社の社長なんだよね。俺甘い物好きだけど、シェフがケーキとか作ってくれるからあんまり自分では買わないんだよ。
 そんなパーティに呼ばれた俺は赤衣家のご子息としてフレンドリーな笑顔を浮かべています。小谷家として来たわけじゃないからね! ここ重要!!

「蓮お兄ちゃん!!」
「ああ、亜利栖ちゃん」

 ふわっふわのドレスを着た亜利栖ちゃんが、俺に飛びついてきた。どうやら彼女もこのパーティーに呼ばれたらしい。両手には子供向けに配られた沢山のお菓子が入った袋を持っている。う、羨ましいなんて思ってないよ! 羨ましいなんて…

「お兄ちゃん、これあげる!」
「ありがとう亜利栖ちゃん!」

 差し出されたチョコレートを笑顔で受け取る。イイコだなぁー、本当に!
 と、俺の横から手が伸びてきて、四角いチョコを奪っていきました。ちょ、何すんの。

「王〜?」

 恨みがましく見つめれば、王はそ知らぬ顔で包み紙を開きチョコを口に放り込む。「甘…」とボソリと呟いて眉を顰めた。甘い物そんなに好きじゃないのに、なんで食べるのさ。
 俺が不満を漏らせば、王は大げさにため息をついてみせる。いや、何ヤレヤレみたいな顔してんのぉ? それは俺がとるべき態度だよね? あれ?

「蓮様。貴方が望むなら、私が取ってきます。たとえアレを丸ごとでも」

 アレ、といって王が指したのは会場の中心にある物体――お菓子の家、だ。ウエハースの壁やチョコレートの扉、マシュマロの雪など正にメルヘンな世界が広がっている。子供達が群がってるし。
 って、アレってお菓子の家ぇ!? しかも丸ごと?

「駄目だよぉー、子供の夢を横から奪うとか駄目、絶対ダメ〜。第一、王があの中に入ったら目立っちゃうよぉ」
「それくらい構いません。蓮様の為なら」
「ふんっ、それならお兄ちゃんの為に私が行ってくるわ! 私なら違和感なく入れるもの!」

 必死に王の行動を止める俺の横で、亜利栖ちゃんが自慢げに胸を反らす。まあ、違和感ないっていうか、子供だからねぇ。寧ろ彼女はお菓子の家に興味がないのかなぁ? 俺があと5才小さかったらソッコー走って行ってたね!

「俺はいいから、亜利栖ちゃん行っておいでよ〜」
「そうですね。お子様はさっさとお菓子の家の周りに群がる蟻のように纏わりついて来たらどうですか?」

 ちょ、王〜。
 あまりにも酷い言い様に、俺の笑顔が引きつる。相手は女の子だよ? 
 しかし、この女の子も普通ではないらしく。ふん、と鼻で笑って王を見上げた。

「無口な従者さんはそうやって突っ立っていればいいわ。ね、蓮お兄ちゃん、一緒にお菓子の家まで行こう?」
「え、一緒に〜?」

 腕に抱きついてくる亜利栖ちゃんの提案に、俺はナルホドと感動していた。そうだ、俺が1人で行くのは恥ずかしいけど、彼女と一緒なら付き添いの振りしてお菓子の家が堪能できるよ! ちょー役得じゃん。
 うきうきしてきた俺のテンションは、王の睨みで一気にしぼんだ。ちょ、なんでそんな睨むんだよ〜。

「ふっ、お菓子の家ですか。森の中に長い事放置されていたむき出しのお菓子を食べるなんて腹痛確実ですね」
「あら、夢が無いわね。そんな事じゃ将来会社経営に関れないわよ?」
「そうですか。ああ、森で道に迷った挙句、水も飲まずにパサパサのお菓子を口にする根性のある人間ならさぞかししぶとく生き延びるでしょうね」

 ちょ、王。なんか話が変な方向にいってるよ! ただのヘンゼルとグレーテルの悪口になってるよ!? あれはメルヘンだからねぇ? 衛生面とか考えちゃダメだよぉ。確かに俺も今想像して、お腹空かした兄妹の根性ハンパないっ、って思っちゃったけどねー。

「蓮お兄ちゃん、ほら、早く行こう?」

 キラキラと眩い笑顔を浮かべて、可愛らしい少女が首を傾ける。うん、もし俺が少女趣味ならコロッといっちゃいそうな美少女っぷりだねー。でも、残念。俺の好みは足がキュッとしたお姉さんなんだよねー。って、何考えてんだって話だよね。専務に殺されちゃう。
 俺はその小さな手を軽く握って、絡み付いている腕から外した。

「ごめんねぇー、亜利栖ちゃん」

 俺の言葉に、彼女は目を丸くする。甘いお菓子の誘惑を断るなんて想像してなかったのだろう。
 でも、さ。

「俺の食べるものは、王に取ってきてもらうね」

 彼が取ってきたものなら、例えパサパサのクッキーでも砂のついたケーキでも食べてみせるよ。

 笑って答えれば、俺の肩に手が置かれた。誰の手かなんて振り返って確かめるまでもない、俺の王。

「――そういう訳です。貴方は自分の分だけ取って食べていなさい」
「くっ、」

 一瞬だけ悔しそうな顔をしたものの、亜利栖ちゃんはすぐにその場を去った。「覚えておきなさい」なんて科白をぼそっと呟いたのが怖い所ですねー、はは。

 うん、という訳で。

「苺パフェと牛乳プリンとチョコチップクッキーとキャラメルミルクドーナツ、あとお菓子の家の煙突取ってきてぇ?」
「……結局食べるんですか」

 もちろん、食べるよぉ?
 そしてお菓子の家に群がる子供達に混じった王を眺めるよー。

 俺の横でため息をつきつつ、近くのテーブルからお皿を手に取る俺の従者。
 恥ずかしげもなく俺の為に子供達の輪の中に入っていくその姿を見て、俺は思わずニヤけてしまったのでした。まる。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!