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赤頭巾は何気に最強です(白ver.)
7人の小人って兄弟なんだろうか
「ねぇ、赤衣くん」

 放課後、「車を呼んできます」と携帯を片手に王が離れた隙にクラスメイトの女の子が俺の周りにやって来ました。おお、モテモテ? ……なんてね。

「これ、家庭科で作ったカップケーキ」
「味見してー」
「感想聞かせてね」

 7人の少女から机の上に置かれるラッピングされたケーキ達。どれも美味しそうだ。えーと、生クリームと苺が乗ってるのが黒髪ストレートヘアの愛花(あいか)ちゃん、チョコチップのが黒髪ストレートヘアの由季(ゆき)ちゃんで、オレンジピールがたっぷりなのが黒髪ストレートヘアの……うん、全員同じ髪型だねぇ。流行ってるのかな? それでも区別出来る俺って凄くない〜?俺、今なら7人の小人でも見分ける事ができそうだよ。

「ありがと〜、嬉しいよー?」

 にへら、と笑えば彼女達は一瞬呆けたように口を開いた後、ふと我に返ったように「た、ただ余っただけだからねっ」「そうそう、委員長だからお疲れ様って意味なんだから」と口々に騒ぎだした。知ってるってば。あわよくば王に食べて貰えるかも、ってとこかなぁ?

「蓮様、もうすぐ迎えが来るそうです」

 と、王が教室に入って来た。

「あ〜王、お帰りぃ」

 ぶんぶんと手を振ってお出迎えしたのに、王は俺の机の上を見て盛大に眉を寄せた。ああー、そんな怖い顔したら女の子達怖がっちゃうじゃん……って、もういないや。なに、やっぱりあの子達妖精の類だったのぉ?

「蓮様、何を押し付けられたのですか」
「カップケーキだよ〜。今日作ったじゃん」

 押し付けって……酷いなぁ。俺は自分で作ったケーキの袋を振りながら答える。そう、俺だってちゃんと自分で作ったの持ってるんだけどね。生クリームにカラーチョコを散りばめて、上にはサクランボを乗せた力作ですよ。カラーチョコはなぜか黄色ばっかだし、サクランボは潰れてるし、そもそも生地焦がしてるしでめちゃくちゃだけどね!

「そんな得体の知らない物を貰わないで下さい。何か入ってたらどうするんですか」
「いやいやいや、たかが家庭科のケーキで何言っちゃってんの」

 あの子達は妖精改め暗殺者だったのかにゃ〜? あはは、と笑えば、王は盛大なため息と共に、「またそんな無防備な笑顔を晒して……」とか何とか呟きだした。

「蓮様にはこれで十分でしょう」

 ぽん、と目の前に置かれたのはシンプルにクリームが乗っただけのカップケーキ。シンプルだけど、クリームには苺ジャムが練りこまれていてほんのりピンク色をしている。食べてないのに美味しいことが分かるような間違いなしのケーキだ。

「うわー、おいしそうだねぇ〜。王が作ったのぉ?」

 一応聞いてみるけど、王が作ったもので間違いないだろう。彼にプレゼントを渡す度胸のある人間がクラスにいるとは思えないしね。
 俺が透明な袋に入れられたそのケーキを眺めている間に、机の上にあった7つのケーキは王が紙袋に入れてしまってしまいました。

「あ、ちょっとどうする気ー?」
「こんなに沢山食べれないでしょう? 後で葉奈様や使用人の皆様に分けて差し上げましょう」
「う〜……」

 さっき「何が入ってるか分からない」的なこと言ってなかったぁ? さらりと他人にあげる宣言しゃちゃいましたよ、この人。俺甘い物いくらでも食えるのにぃ。

「まあいいか〜。自分のもあるし」
「蓮様のは私に頂けるのでしょう?」

 王が作ったのと俺の、左右にケーキを持っていたら横からすっと手が伸びてきて俺作のケーキを王が奪った。ああ、俺の渾身の失敗ケーキがぁ〜。

「……それ、マズイと思うよぉ?」
「だからこそ、です」

 おずおずと上目遣いで王を見る。しかし彼はいつも通りの、無表情に少しだけ口元を歪めるという笑みで俺に向き合った。

「貴方様の作ったものを、私以外の誰が食べるというんです?」

 ……まあ、いいかぁ。俺には王のケーキがあるし。
 俺は大人しく席を立つと、帰るために教室を出たのだった。

「帰ったらアールグレイを淹れて頂き、一緒にいただきましょう」
「うん、そーだねぇ」


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