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夢小説【黒//バ/ス//】
縮まる距離、繋がる未来(緑間)

「起きろ、神山。」

「……ん?」

机に突っ伏して寝ていた女生徒、幼馴染みの神山優希に声をかけると、彼女は"ふぁぁ……"と伸びをしてからこちらを向いた。

「どうしたの、緑間くん?部活行かなくていいの?」

「今日はオフなのだよ。」

「そうなんだ。」

もうとっくに教室内の人間は帰った後だ。

日は若干ながら傾いている。

優希はまだ眠そうに目を擦りながら気だるそうに答える。

「で?何か用でも?」

「……少し買い物に付き合え。」

「はい?……そしてなんで命令系?」

優希は大きな目をぱちぱちさせながら不思議そうに見てきた。

「テーピングがきれたからな。」

「……じゃなくて、高尾くんとかと行けばいいんじゃ……なんで私?放課後は忙しいんだけど。」

「どうせ寝ているだけで暇だろう?」

「昼寝に忙しいの。」

「……もう昼はとうに過ぎているのだよ。」


全く可愛いげのない奴なのだよ……。


そんな可愛いげのない幼馴染みを何故俺は好きになってしまったのか未だに解せん。


中学生の時は彼女はバスケ部のマネージャーをやっていたため、二人で帰ったり、買い出しに行ったりしていた。


しかし、高校に入ってからは優希は帰宅部で、全く二人になる時間がなくなってしまった。


久しぶりに二人で出掛けたいと思ったのだが……彼女にはそんな想いは届いていないようだ。




「優希ちゃーん!!」

「うわっ!?え、高尾くん!!」


いきなり教室に飛び込んできたと思ったそれは、迷わず優希に後ろから抱きついた。


「……何をしているのだよ?そして何故お前がいる?」


「え?優希ちゃんに抱きついてる?後真ちゃんの委員会終わんのまってたから。」


自分の中でどす黒い感情が渦を巻く。


射殺すような視線を高尾に送るが、奴には効果がないらしい。


気にせず優希からは離れない。


そして抱きつかれている当の本人はまんざらでもなさそうな笑顔。


なんなのだよ……


「お?真ちゃん妬いてるー?」


「……そんなことはないのだよ。」


そう言ってふっと視線を反らした。


すると優希は、


「そうだよ、高尾くん。緑間くんがそんなことあるわけないじゃん。私達ただの幼馴染みだよー?」


さらっとそんなことを言う。


はっきりそう言われると流石に傷つくのだよ……


「あ、そういえば俺が来る前なに話してたの?」


貴様は早く優希から離れろ。


「んー?緑間くんがテーピング無くなったから買いに行くのついてきてほしいって。高尾くんと一緒に行ったらいいのに。」


「テーピング?え、真ちゃんまだのこっ「高尾、少し顔をかせ。」」


「えっ!?ちょっ!?」


優希から無理矢理に高尾を引き剥がし、そのまま廊下に出る。


優希は怪訝そうな表情を浮かべてこちらを見ていたが、大きなため息をついて帰る支度をし始めた。

学校での昼寝?は諦めたようだ。


そんな彼女を観察していると、

「真ちゃん……」

「なんだ。」

にやにやしながら高尾がこっちを見ていた。

気持ちが悪いのだよ。

「はっきり二人でデートしたいって言えばいいのに。」

「……別に付き合ってもないのに、そんなことは言えないのだよ。」

「固いなぁー……そんなんじゃ何時までも進展ないじゃん。」

「関係が壊れるぐらいなら今のままでいいのだよ。」

「ふーん……じゃあ俺が優希ちゃん貰っちゃおうかな。」

「なっ!?」

いきなりこいつは何を言い出すのだ?


「真ちゃんが先に進むつもりないんだったら関係無いだろ。……俺だって優希ちゃんのこと好きなんだから。」


高尾の挑戦的な言葉。


あくまで声色は真剣だった。

「届かないと思ってたけど、真ちゃんにその気がないなら優希に届くかもしれないしな。」


なんだと?

高尾が優希を?


ふとよぎる高尾と優希が楽しそうに笑いあう姿。

瞬間真っ黒な感情で満たされる。


優希が他の男と?


嫌だ


こいつには……いや誰にも……


「優希はわたさないのだよ。」


思わず……けれどはっきり、そう宣言をしていた。


「……生半可な気持ちじゃないのだよ。何年俺が優希のことを好きだと思っている。出会って数ヶ月と経たんお前と一緒にするな。」


すると"ぶはっ"っと高尾がふきだした。

そんな高尾に"何がおかしい"と問おうとしたが、その時……

「だってさ、優希ちゃん?」

「……っ////」


高尾の呼んだ名に驚き、ばっと振り返ると、先程教室内で帰り支度をしていた優希が口元を押さえ、顔を真っ赤にして立っていた。


何故そんなところにいるのだよ!!


「……ぷっ……ま、後は若いお二人で〜っ!!」

「なっ……高尾っ!!ちょっと待つのだよ!!」

俺が捕まえようと伸ばした手をすり抜けて、高尾はニヤニヤしながら走り去って行った。

後で必ずシメてやるのだよ……



「……。」

「……優希、今のは……その……」


……嫌われただろうか?



うつむいて黙っている彼女に、先程の言葉に対してどう言い訳しようか思考を必死に巡らす。



全くもって格好悪いのだよ……



互いの間に落ちる沈黙。




「……ねぇ……さっきの言葉、本当なの?」

先に沈黙を破ったのは優希だった。

彼女は心を決めたように、胸の前で手をぎゅっと握り、真っ直ぐに俺を見据えていた。

どくんっと自身の心臓が鳴る。

真剣な眼差しが俺を貫いて……

自分の体が自分のものでないような……そんな感覚にとらわれる。


彼女が真剣である以上、後には退くわけにはいかない……ここで今までの想いにケリをつけなければ。



"例え今の関係さえ壊れてしまっても"


「……あぁ、本当だ。」

「……そう……なんだ。」

また沈黙。



「優希、「真ちゃんっ!!」


言葉を紡ぐ前に優希が俺の名前を呼んだ。

幼い頃の呼び方に、またどくんっと心臓が鳴る。


口を一度開くが、考え直し、黙って彼女の言葉に耳を傾けることにした。


「私……私もね……好きな人いるんだ。」

「……っ」


優希の口から出たその言葉が出た瞬間、胸の辺りに痛みが走った気がした。

あぁ……そうなのか……



頭が理解すると同時に、優希が想いを寄せる見えない相手に湧く真っ黒な感情。


俺はその相手を見たら正気でいられるのだろうか?優希の幸せのためだと割りきれるのだろうか?


優希の隣で彼女の笑顔を見ることはできないのだろうか……


そんな考えを巡らす中、優希は続けた。


「その人はね……ずっと私のこと見ててくれて、支えてくれたんだ。辛いときは黙って傍に居てくれたりさ。」

「……。」

「……最初は特別な感情なんて持ってなかった。だけどね、部活を頑張ってる姿を見てて格好いいなって思ったり、その人が他の女の子と話してる時とかに嫉妬してることに気づいたんだよね……。」


眼を伏せながら想い人についてを話す優希。


そんな話は聞きたくないのだよ……


この場から逃げたしたいのに何故か足は凍りついたように動かない。


「いつの間にか"恋"してた。」


目の前にいるはずなのに、優希を遠くに感じた。


「そうか……」


何とかそれだけを言った。
あまり言葉を口にすると、目から何かが溢れてきそうだったから。


きっと俺はとても情けない顔をしている。


そんな表情を見られたくなくて彼女に背を向けた。



「っ!?」


瞬間背中に温かみを感じた。

前に回された手は紛れもなく想い続けていた優希のもので……


後ろから抱きしめられていることに気づくのに数秒。


その行為に驚いて、何をしているのだと聞こうと口を開いた時、


「真ちゃんのことだよ。」

不意に聞こえた耳を疑う言葉。


「は……?」


思わずでた間抜けな声。

「だ、だからっ!!真ちゃんのことが好きだってこと!!」



優希を引き剥がして正面で向かい合わせる。


彼女の顔は真っ赤だった。

「本当か?」

「嘘言ってどうするの……。」


恥ずかしそうに顔を背けながらも、上目遣いでこちらをちらちらと見る優希。


「全く……結論をいうまでが回りくどすぎるのだよ……。」


「む……いいじゃん別に。」

そう言ってぎゅっと抱きついてきて、顔を埋める彼女がとても愛しい。


優希の背中に手を回して抱きしめると、その感覚が夢じゃないことを実感する。


「優希。」

「ん?」

「……キス……していいか?」


俺の胸のなかで黙って頷く優希。

廊下はしんと静まり返っている。



体を離し、恥ずかしそうに目を瞑る彼女はとても可愛かった。

ゆっくりと優希との距離が縮まり、ゼロになる直前……


「どーお?上手くいった?お二人さんっ。」


突然響いた声に驚いて一気に開く距離。


死角から現れたその声の主は……

「高尾くんっ////」
「……高尾……貴様……。」

「え、何?ちょっ……真ちゃんすげぇ怖いんだけどっ!!」


縮まる距離、繋がる未来

(「楽しみはおあずけなのだよ……」)
(「ま、私達にはまだ時間が沢山あるしね////」)
(「え、何の話?」)
(「お前は黙っていろ、高尾。」)


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