夢小説 【イナイレ(中編〜長編)】
気持ち
最近、京介くんの様子がおかしい。
目に見えてその変化が現れたのは、優一くんと彼の試合を見に行ったぐらいからだ。
今までなら週に少なくとも一回は病院で会っていたのに、近頃はぱったりと会わなくなった。
優一くんによると、お見舞いには来ているらしい。
考えすぎかもしれないけれど、避けられているのかも……ね。
「私、何かしたかな……?」
考えても思い当たるふしはなかった。
剣城兄弟の面倒を頼まれている以上、もし京介くんに避けられているのならその状況を改善しなければいけない。
「……難しい年頃だからな。」
ため息をつく。
あー……考えすぎはよくないな。
とりあえず仕事は終わったから今日は帰ろうか。
支度をして病院を後にした。
今日の夜ご飯何にしようか、なんて考えながら帰り道を歩く。
日は沈み、街灯がともっていた。
街はまだ人通りが多い。
いつも帰る時間より少し遅いけれど、何も変わらない。
こんなものなんだろうな……。
変化を求めても世界はそんなに簡単に変わるものじゃない。
信号が赤になり、私は横断歩道の前で止まる。
早く青にならないかな、と思いながら、ふと視線を信号からずらすと、
「あ……京介くん……。」
道路の反対側を歩いている、見覚えのある後ろ姿が見えた。
制服?を着ているということは、学校からの帰りだろうか。
ちょっと話しかけてみようか……。
見失わないよう目で追い、信号が赤から青に変わった瞬間横断歩道を渡って追いかける。
「京介くんっ!」
声をかけると彼は驚いたように振り返った。
「なっ……!!なんでいるんですか!!」
「なんでって……仕事からの帰り道だからだけど……。」
何故か随分と落ち着きのない京介くん。
……どうしたの。
私何もしてない……声かけただけなんだけど。
「な、何か用ですか?」
さっきから一回も視線を合わせてくれてない。
やっぱり避けられてるんだろうか。
「用っていうか……うーん……私のことどう思ってるのか聞こうと思って。」
そう聞いた瞬間、
「!!」
バッ、と私の方を見た。
ええと……あの……。
彼の目には動揺の色が伺える。
「それって……どういう意味ですか?」
怒って……るのかな。
「あ、いや……最近避けられてるような気がしてたから、私何かしたかなと思って。」
「そういうことか……。」
彼はため息をついて、小さな声でそう呟いた。
そういうこと?
でも怒っている訳ではなさそうだからいいか。
沈黙が流れる。
京介くんは何かを考えているようだった。
すると、
「……少し時間ありますか?」
「え?うん。」
京介くんは遠慮気味にそう尋ねてきた。
私は首を傾げる。
何か相談でもあるのだろうか。
私達は近くの公園に移動した。
日は完全に沈みきってしまったようで、夜空には星が輝いている。
公園には誰もいないようで静まり返っていた。
私と京介くんはベンチに座ってしばらくお互い黙っていた。
何だか話しかけにくい。
そう思っていると、
「優希さんのこと、避けて無かったと言えば嘘になります……けど優希さんが何かした、とかじゃないんで……。」
京介くんが口を開いた。
「ってことは私、嫌われてる?」
「そんな事は絶対無いです!!」
物凄い勢いで彼は否定した。
その勢いに私は圧倒される。
私が驚いていると、彼は我に返ったのか"すいません"、と小さな声で謝った。
京介くんらしくない……
「何かあった?私でよければ相談にのるけれど……。」
恐る恐る聞いてみる。
「……優希さん、彼氏っているんですか?」
どこかで聞いたセリフ。
そういえば、優一くんも聞いてきたっけ。
聞いてどうするのかわからないけれど……。
こういうことは聞きたいものなのか…な?
「いないけど。」
また沈黙。
やりずらい……。
「あの、さっき俺、優希さんのこと避けていたかもしれないって言いましたよね。」
「うん。」
京介くん、何か言うの躊躇ってる。
「……俺、そのわからなくなって……。」
「?」
私は全く話がつかめず、疑問符を浮かべる。
「気持ちを整理してました……。」
話を続ける彼を黙って見つめた。
「それで、その……やっぱり俺、優希さんのこと……」
「好きです。」
言葉は余韻を残し、公園を風が吹き抜けていった。
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