夢小説 【イナイレ(中編〜長編)】
変えられない関係
**剣城優一Side**
優希さんと京介の試合を見に行った。
一緒に大事な弟の試合を見れたことも嬉しかったし、優希さんも京介のチームの勝利を喜んでくれたことも嬉しかった。
自分にとっての彼女の存在が、とても大きくなっていく事を感じる。
でも彼女は自分のことを特別には見ていないんだろう……
そう思うと心が痛む。
試合を見に行ってから数日がたった。
「こんにちは。」
今日も優希さんはいつも通り。
何も変わらない日常。
「優一くん?どうかした?」
じっと黙っている俺を見て心配そうに彼女は尋ねてきた。
「あ、いや……少し考え事していました。」
頭を振って余計な考えを振り払う。
「?……そう。……最近何か考えてること多いみたいだけど……何か心配事あるなら相談のるよ?」
こんな優希さんだから甘えてしまう、安心する。
ずっと一緒にいてほしいなんて考えてしまう。
自分を心配してくれるのは、担当している患者だからだとわかっているのに。
「あの、優希さんは付き合ってる人とかいるんですか?」
我ながらなんで唐突に聞いたのか……
無意識のうちに言葉が出ていた。
案の定彼女は目を一瞬大きく開いて、でも直ぐにいつもの微笑みを浮かべた。
「またいきなりだね……まぁいいか。今はいないよ、付き合ってる人。」
心臓がドキッとした。
「そうなんですか。意外です……。」
「あら、本当にそう思ってる?」
「はい!」
思うより大きな声が出ていた。
優希さんは、はははっと笑うと、いつもの診断書?を書き始めた。
いくつかの質問をして、それに俺が答える。
何も変わらない、いつものこと。
「よし、診察終わり。私これから行かないと行けないところあるから、今日はこれで。また何かあったらいつでも言ってね。」
"ぐっ"
笑顔で言って、病室を去ろうとした彼女の袖を無意識に掴んでいた。
優希が首を傾げてこちらを不思議そうに見る。
はっ、と我にかえり袖を離す。
「あ……えと、すいません。」
俺はそういって視線を落とす。
なんだか恥ずかしかった。
「「…………。」」
沈黙が流れる。
気まずい、と思っていると……
"ガタッ"
顔を上げると、優希さんが目の前に座っていた。
病室にあった椅子を持ってきたらしい。
……そんな冷静に分析してる自分とは反対に、落ち着きのない自分もいた。
「あの…。」
「やっぱり別の日に行く。今日はもう少しここに居たいんだけど……いいかな?」
なんでもないので、と続けようとすると、それを遮るように彼女は言った。
黙ってうなずくと、よし、と言って優希さんは笑った。
しばらく何でもない会話をしていたが、
「……優希さんは誰かと付き合ったこと、ありますか?」
ふと聞いてみた。
「あるよ。」
彼女は相変わらず唐突な質問に、今度は表情を変えずに答える。
「まぁ昔のことだけどね……。あの時は若かったなぁ。」
懐かしむように、遠くを見ながら続けた。
その様子から何となく、今でも相手の人を大切に想っているように思えた。
「今でもその人は大切な人なんですか?」
「うん。よくわかったね。」
はにかんだ笑顔。
そこまで大切にされるその人が羨ましい。
なんでその人は彼女と別れたのか……。
「お互い嫌いになって別れたわけじゃないから。私が留学する時に、彼を縛りたくないから別れたの。最初彼は嫌だと言ってくれたんだけど……説得したんだ。」
「そうなんですか。」
少し声が沈んだかもしれない。
「後悔はしてないし、今は今で幸せだから良いんだ。恋なんてそんなものだし、傷付いたりするのも経験。」
優しい眼差しが向けられる。
「だから優一くんも頑張ってね。」
「!!」
まさかの一言をかけられて驚いた。
少し戸惑っていると、
「図星かな?」
楽しそうに彼女は言う。
「いつでも相談にのるから。あんまり思い詰めたら駄目だよ。」
爽やかな笑顔を残し、病室を出て行った。
優希さんは気付いていないんだろう。
気付くはずもないんだろうけれど。
所詮、彼女は医者で、俺は患者という関係でしかないのだから。
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