夢小説 【イナイレ(中編〜長編)】
病院にて
私は24歳のある病院に勤めだした医者だ。
この年齢で医者として働いているのは特殊な教育を受けたからなのだが……。
まぁそれは置いておいて。
ある人から依頼されてこの病院で働くことになった。
私が担当する患者は何人かいるが、剣城優一という青年を主に担当している。
どうやら依頼人は彼と彼の弟の面倒を見てほしいようだ。
本来なら断るが、依頼人が私の雷門中時代から知る大事な人だったから受けることにしたのだった。
「優希さん、こんにちは。」
病室に入ると、いつも笑顔で優一くんが私に挨拶してくれる。
「こんにちは。今日の調子はどう?」
私も笑顔で挨拶をした。
週三回、私は診療のため彼の病室を訪れる。
出会ってから一週間ほどすると、何でもないような話をしたりするようになった。
「調子いいですよ。」
「それなら良かった。」
一通りの診察を行った後、いつものように他愛の無い会話をする。
彼を担当する日は基本他に予定もなく、話すことも治療に入るということで……ね。
「そう言えば、京介くんのチーム勝ち進んでるみたいだね。」
「そうなんですよ。京介もどうやらチームに馴染んできたようで……。兄として一安心です。」
弟の話をする時の優一くんはとても嬉しそう。
見てるこっちも幸せになる。
「京介くんも優一くんも、本当頑張り屋さんで……私も見習わないと。」
「僕はそんなんじゃないですよ。優希さんだって頑張ったから医者になれたんでしょう?医師免許取るの大変だと聞きますから。」
本当にこの子はいい子なんだな、と改めて思う。
勉強を頑張るより、リハビリを頑張る方が大変だろうに。
そんなことを思っていると、優一くんがふと視線を自分の手に落とした。
私はどうしたんだろうと首を傾げると、
「あの、お願いがあるんですが……聞いてもらえますか?」
少し声の大きさが小さくなった気がした。
「うん。どうしたの?私に出来ることなら協力してあげられるよ。」
私がそう言うとちらっと私の方を見て口を開いた。
「京介の試合、一緒に見に行ってもらえませんか?」
「え?」
「あ、嫌だったらいいんです!!医師へのお願いでなくて、優希さんへのお願いですし……。こんなこと頼むのもおかしいと思いますから。」
一瞬びっくりして固まってしまった私を見て優一くんは慌ててそう言った。
そんな様子を見て可愛いなと思う。
私自身へのお願いか……
それでこの子がリハビリを頑張っていける原動力になるのなら、これも依頼の一部なのかな。
「いいよ。予定教えてくれたらその日は開けるから。できるだけ早く教えてくれると助かる。」
にっこりと微笑みながらそう告げると優一くんは、はっとこっちを見てとても嬉しそうな表情を浮かべた。
こんなことで喜んでもらえるなら私としても嬉しい。
「来週の日曜日に試合があるんですが……それは行けませんか?」
日曜日なら基本予定は何も無い。
恋人はいないし、友達は忙しいみたいで、私はいつも暇をしている。
「大丈夫、行けるよ。」
「じゃあ来週の日曜日、病院の前に一時半待ち合わせでいいですか?試合は三時からみたいですから。」
「わかった。」
そう約束をした。
日曜日に誰かと出かけるなんて久しぶりかもしれない。
そう思うと少し楽しみな気がする。
"ガラッ"
後ろの扉が開いた。
そこに立っていたのは優一くんの弟。
「京介くん、こんにちは。」
「どうも。」
見た目は不良だけど、毎日のようにお兄さんのお見舞いに来てる優しい子。
最初会った時は凄い睨まれたけれど、最近は普通に話せるようになったし、時には頼ってくれるようになった。
そう考えると、この兄弟と上手くやっているんだろうと思う。
「京介、今度の試合だけど優希さんと見に行くから。」
優一くんは、先ほど約束したことを京介くんに伝える。
「な……聞いてねぇぞっ!!!!てかなんでこの人と!?」
案の定予想したような反応をした。
兄だけでなく私も行く理由はないのだから。
「さっき約束したんだ。」
京介くんが私を少し睨んだ……気がした。
でも嬉しそうにしている兄に文句をいう事は出来ないようで、黙って何かを考えていた。
「京介くんも来た事だし、私は戻るね。今日の仕事片付けないといけないから。」
「あ、時間取らせていつもすいません…。」
「いや、私が勝手に居座ってるだけだから気にしないで。」
すまなそうにする優一くんに私は笑顔で言って病室から出た。
そんなに気を使わなくていいんだけどな。
一様主治医なんだから。いや、関係ないか。
そんなことも考えつつ、来週のことを予定表に書き込んでおかないと、と考えながら事務所に向かう。
その時、
「?」
腕を掴まれる感覚。
振り返ると京介くんがいた。
まっすぐこっちを見ていた。
私に何か言いたいことがあるんだろうけど、試合を見に行くことを駄目だと言われると困るんだけどな……。
「どうしたの?」
それだけを聞く。
「……その……。」
そこまでいうと顔を背ける。
こういうとこ、優一くんと似てるんだよね。
「試合、本当に見にきてくれるんですか?」
「え?うん。」
"見にきてくれる?"と彼は言った。
ということは見にきて欲しいんだろうか。
逆だと思ってた。
「……俺、優希さんに絶対いいとこ見せます。」
「?うん、楽しみにしてる。」
彼はそれだけを言うと病室に戻っていった。
どうしたんだろう……何を伝えたかったんだろうか。
あ、そういえば始めて名前呼んでくれた。
また一歩、私は彼に近づけたのかな。
一人事務所に戻る私を、窓から射し込む赤い光が照らしていたのだった。
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