夢小説【イナイレ】
10年の時…(基山ヒロト 24=吉良ヒロト)
[今日理緒の家に夜ご飯食べに行くから(^人^)]
仕事からの帰り道、そうヒロトからメールがきた。
彼はいつも唐突に家にご飯を食べに来る。
[リュウジも?]
返信する。
ヒロトやリュウジとは、イナズマジャパンのマネージャーをしていた時からの付き合いだ。
彼らが私の家に来るときは、二人で来ることが多い。
仲がいいんだろうけれど……何故彼らは一緒に来るんだ。
ま、別々に来られても面倒だから、まとめて来てくれるほうがありがたい。
……いや、まずなんで私の家にご飯を食べに来てるんだ。
当たり前みたいになってるけれども。
[今日は一人(^O^)/]
珍しい。
[わかりました。何時頃?]
送信。
[仕事終わり次第!7時ぐらいには終わるだろうから、終わったらメールする(>_<)]
じゃあこのまま買い物行って帰ることにしよう。
……煮魚食べたい。
"ピンポーン"
チャイムがなった。
モニターで確認し、自動ドアを開けるボタンを押す。
私が住んでいるのはマンションなので。
もう少しすれば玄関のチャイムがなる。
"ピンポーン"
二回目のチャイムが鳴り、玄関のドアを開ける。
「こんばんは。」
ヒロトが爽やかな笑顔で立っていた。
「私も忙しいんだから、来るなら来るで、もう少し早めにメールしてほしいんだけど。」
むっとした表情でそう告げる。
「だって急に理緒の料理食べたくなったんだから、仕方ないよ。」
仕方なくないよ。
ため息をつきながらも、キラキラした笑顔におされ、何も言わず彼を部屋へ通す。
言ったところで意味がないだろうし。
今までに何回も言ったしな。
「今日は和食だね!美味しそう。」
まぁまずくはないと思うよ。
「煮魚食べたかったから。」
「奇遇だね、俺もだよ。」
それはないと思うけど。
「冷めたら美味しくなくなるから食べるよ。」
ヒロトに声をかける。
「うん!」
爽やかだ。
最近の出来事や、仕事に関する話、思い出などを話しながら食事をした。
食後、ヒロトは馴れた手つきで後片付けをしてくれる。
私はそんな彼にちらっと目をやりながらも、ソファーに座ってテレビをつけた。
「本当、理緒は料理上手いんだね。毎回驚かされるよ。」
手を動かしながらヒロトは私に話かけてきた。
「ありがとう……まぁ一人暮らし長いから、ある程度はなんでも出来るようになったから。」
ヒロトはいつも私の料理を褒めてくれる。
表情は変えないが……褒められたことなんて、私の人生でほとんど無かったから凄く嬉しい。
そんなこと言わないけど。
「でも彼氏いないんだね。」
「……いないね。」
何か私の心を貫いたよ……。
今はいないだけで彼氏がいたこともある。
適度な距離を保つ事が困難になって別れたけれど。
私が思う必要以上に、近づいて来るようになって嫌になったというか……
今思えば本当に好きだったのだろうかわからない。
それからしばらくして一人暮らしになり、ヒロト達が来るようになってからは、付き合いたいとも思わなくなった。
「ヒロトも彼女いないよね。何でも出来るし、モテるのに。」
「んー、そうだねー。」
何でもないことのように軽く返ってきた。
余裕だな……
そんなものなのかもしれないけれど。
「理緒の料理食べられなくなるの嫌だからねー。」
「私なんかより料理上手い人なんて、沢山いるよ。」
そんなことより、これからも食べに来るつもりなんだね。
そろそろ食費払ってほしいな。
「あ、でも理緒に彼氏ができても来れなくなっちゃうんだな……。」
私の言葉は無視……ですね。
「「……。」」
沈黙。
洗い物が終わったのか水の音は消え、テレビからの音が部屋を満たした。
「理緒は結婚とかしたいと思う?」
ヒロトをちらっと見ると食器を拭いていた。
「さぁ……考えたこと無いなー。」
テレビに目をやる。
放送しているのはバラエティー番組。
笑い声が時折テレビから流れる。
「結婚するならそろそろ結婚しないと、いきおくれるよ?」
「……なるようになるでしょ。」
言ってることが矛盾してるような気がするよ、ヒロト。
そしてそんなことを言われたくはないんだけれど。
結婚したくないか、と聞かれたらしたいのかもしれない。
円堂夫婦を見ると羨ましいと思うこともあるから。
自分の領域は侵略されたくはないし、色々面倒だと思うものの、未来を考えてみた時……
「……一生独りは嫌かなぁ。」
結論が小さな声で口から零れた。
「じゃあさ、俺と結婚しようよ。」
……………………。
今コノ人何言ッタ?
……………………。
バッと振り返るとソファーの背もたれに腕をのせ、頬杖をついた、キラキラの笑顔のヒロトがいた。
「何言ってるの……それにじゃあの意味がわからないし、冗談にしては笑えないのだけれど。」
よくわからない変化球を直球で返す。
頭でも打ったんだろうか、この元自称宇宙人は。
ヒロトは少しむっとした表情になった。
「俺はいたって真面目に言ってるんだけど。」
「真面目って……いきなり結婚って言われたらそうは思えないよ。」
ソファーの上に上がり、逆向き、つまりヒロトの方に向いて座り直し、真っ直ぐ彼の目を見て言った。
「……だって。」
何が「だって」かは知らないけれど、そんなこどもが怒られたように、しゅんとされても困る……。
「えぇと……あの……。」
「ずっと好きだったんだ……。」
ヒロトは視線を私から横に外し、ぎりぎり聞き取れるような小さな声で言うと、
「……〜っ////。」
恥ずかしかったのか顔をソファーの背もたれに埋めた。
「ヒロト?えと……大丈夫?」
動かない彼に恐る恐る声をかける。
彼は黙ったまま顔を上げずに頷いた。
一方私は突然の告白にどうすればいいのかオロオロしていた。
好きだった?
ずっと?
「いつから……?」
「世界戦の時、イナズマジャパンとして戦ってた時から……。」
10年も……ってこと?
私に彼氏がいた時も?
考え始めると混乱してきた。
何がなんだかわからない。
色々急展開過ぎて頭がついていかないよ。
それに何で私……
"コンナニドキドキシテルノ?"
「今日言えなかったらもう諦めようと思ってたんだ……だからけじめをつけるために一人で来た。」
ゆっくりと顔を上げ、立ち上がって私の隣に座る。
今度は彼が真っ直ぐ私を見た。
そんな彼の瞳は凄く綺麗で……
「その、結婚とか重いって言うなら考えなくていい。ただ好きだから……俺は理緒と一緒にいたい。」
私は黙って彼の言葉に耳を傾ける。
「一緒にいてくれるだけでいいんだ……俺と付き合ってほしい。」
真っ直ぐな言葉。
私の心を揺らした。
あぁ……そうだ……何で今まで気付かなかったんだろう。
私、こんなに
"ヒロトが大好きだ"
近すぎて見えなかった光。
ずっと傍にあったんだね。
自分の気持ちがわかった瞬間、私はヒロトに抱きついていた。
「ぅん……ありがとう。私もずっと好きだったみたい。」
ヒロトは一瞬驚いたようだったが、すぐに優しい微笑みを浮かべ、
「随分遠回りしちゃったね。」
そういうと優しく抱きしめてくれた。
10年という時間があったから今がある。
ゆっくりと、でも確実に私の心は彼に染まっていった時間。
でももし無駄な時間だったというならば、これからを二倍以上に楽しめばいい。
二人でいるだけで幸せは倍以上になるものなんだから。
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