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にじゅうに。すけっと



シャンデリアが、落ちてくる。



しかし、次の瞬間私に降りかかってきたのは死ではなかった。


シャンデリアの、残骸。


しかも

パリンパリンガッシャーン

という物騒な音と共に。



驚いて目を見開く。

すると、何という事か。


あたりは、一瞬で地獄絵図と化していた。

チフィオのファミリーが、殆ど全滅している。

「な…何で…」

この一瞬に、何が。


そう思って再度あたりを見渡す。

視界に入ってきたのは



――――金髪と、それから赤色の瞳。



そう、彼らは正しく


「王子君と、…………………骸さんか」


「…何舌打ちしてるんですか。
僕が来なければやられていたのですよ満千流」

「別に王子一人でもやれたけど」

「君は面白そうだと言って付いてきただけでしょうベルフェゴール。

君なんて必要有りませんでしたよ」

「ししっ殺す」


……あれ、二人喧嘩始めた…筈無い、無いよね!?
止めてよこんな時に!?


いきなり互いを攻撃し始めた二人にチフィオは驚いていたようだが
彼らもバカでは無い。

直ぐに二人に攻撃を仕掛ける。

匣兵器を携えた敵が何人も二人に向かっていった。



―――危ないっ



しかしそう思ったのも束の間。

互いを攻撃しながらも二人は敵にも攻撃を加える。


さ、流石…。
てか人間業じゃ無いし。


見ているとレベルの違いに虚しさすら覚える。



どうせ、交渉は破綻だ。


敵の注意が二人に向いている内に私はクロームちゃんと部屋を出た。


本当、強すぎて嫌になる。


**

「よくも置いていきましたね。」

「どーなるか分かってんの満千流」


「さーせん。」


只今、東京某所の喫茶店(私がこの任務の為にクロームちゃんと待ち合わせをしていたあそこ。)にいて。

で、上記のような恐喝をされていると。


そういった感じです。


「つか何お前。
自分の任務俺らに丸投げして呑気にケーキ食ってんじゃねえよ。」

「美味しいんだよ。王子君食べる?」

「食べねえよ!つーか何あの弱さ。蟻んこか蟻んこ。」

「王子君が蟻んこって言うと何か可愛いね」

私がはむ、とケーキを口に運びながらそう言うと、
知らねえし、と頭を叩かれた。

「というか満千流は何故そんなにニコニコしてらっしゃるんでしょう。
僕等は怒っているのですが。」



「いやあ、まさかの任務成功が嬉しくてさあ」



そう、任務は成功という形で終わっていた。


王子君と骸さんがチフィオファミリーを後にする際、彼等に泣きつかれたんだそうだ。

チフィオファミリーも、なかなかの断崖絶壁、崖っぷちだったのかもしれない。


それから、私と言い合いをしたチフィオのボスさん。

彼は無事だそうだ。


良かった良かった。


なんだか言い合いしてたら親近感わいちゃって。
気が合うんじゃないかってね。

無事を伝えられた時は、素直に嬉しかったなうん。


「そういえば満千流に一つ謝らなければいけない事が」

「え、一つだけ?」

「クフフこれだから満千流は面白い。」

「どうしよう、全然嬉しくない。」

誉めてませんから、と返してきたが、スルーの方向でお願いしたい。

気を取り直して、謝る事は何?と聞くと

「チフィオファミリーに行く前に、
あなたがクロームに南の島に行きたい、と言ったのを覚えてますか?」

「覚えてますあの景色は鮮明に脳裏に焼き付いてます。」

「クフフ、そうですマグマの海に行ったアレですね」

「そして逝きかけたアレね」

それが?、と聞くと骸さん、非常に楽しそうにこう答えた。



「あれ僕がやったんです」



「―――はい!?なななな何だって!?」

骸さんがやったって!?

どうりで!
あの時クロームちゃんは申し訳なさそうな顔をして謝っていた。

骸さんはだから僕がやったんですよ、と繰り返して
「面白そうだったし何より―――」


「何すか」


「この堕王子君がやれと言ったのでね」

と言った。


「はい!?ちょっと王子君!?」

「ししっアレはまじウケた。
だいじょーぶ。お前超面白かったし」

「どのへんが大丈夫なのかな!?
具体的に30字以内で述べてみようか!?」

私がそう言ったが王子君はししっと笑ってナチュラルに流した。


野郎、腹立つわー。


「…でも、助けてくれてありがとうね」

正直助かりました、と素直にそう言えば


「何。満千流が真顔とか気持ち悪いじゃん」

と鼻で笑われた。


流石にそれには腹が立って

「あのねぇ!?人が珍しくお礼言ってるのにソレどうなの!?」
と王子君につかみかかる勢いでそう言えば

彼はこう返した。


「しししっ満千流にはそっちのが似合うんだって」

無理に真面目になんなくてもそれでいーの、と。


なななな何なんだこの人!?
何か照れるし、多分初めて誉められた。

急にそんな事言わないでよ

私今、絶対顔赤い。


「…満千流、紅茶…冷めるよ。」

唐突にクロームちゃんが静かにそう言った。

呆れたように聞こえたのは多分気のせい。

「うおぅっ!?あ、本当だ。」

この瞬間、私の思考は完全に"食"に切り替わる。

飲まなきゃ食べなきゃ、と呟いてフォーク片手に紅茶を飲んだ。


あ、そういえば。

大切な事を忘れていた。

「クロームちゃんクロームちゃん」

私の隣で骸さんと話し出した彼女にそう呼び掛ける。

「…何?満千流」

「あのね」


そう言って私は、バッグの中からある物を取り出す。



「誕生日、おめでとう」



そう言って差し出したのは彼女への誕生日プレゼント。

「12時5日だからまだ早いんだけど、多分また暫く会えないだろうなと思って。」


そう言いながらふわりと笑ったクロームちゃんに私もつられて笑う。


「誕生日ね千種に聞い「それはどういう事でしょう満千流。何故僕に聞かないのです」


「あ、いや、連絡先知らない…」

「千種のは知っているのですか?」

その問いかけに首を縦に振ると
服のポケットに入れていた携帯をパッととられた

何だ何だと骸さんを見ると
彼は私の携帯をいじっている。

そして王子君も
「ついでに俺のも送っといて」
と言っていて。

暫くして携帯を返され、何したの、と聞くと


「僕のアドレスを送っておきました。
……ついでに彼のも。」

骸さんの視線の先には王子君。

「あ、そりゃどうもどうも…。」
連絡する事あるかな?、と首を捻っていたらクロームちゃんが

「私のも…じゃあ送らせて?」

と携帯を差し出してきた。

「う、うん!」

王子君と骸さんが、何かあいつ俺達の時より嬉しそうだ、と言っているのは気にしない


けれど、


何か私幸せだなあ。


皆の温もりを感じて、そう思って。


また、任務一緒にやりたいね、とクロームちゃんに話しかけたら


彼女はうん、と珍しくはっきり言いきり
ふわり、と笑った。


ああ、本当に楽しいなあこの時間。


******


共に笑える素晴らしさ。




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あきゅろす。
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