novel【dream】
怖がりな君
ベッドに入ったのは一時間ほど前。
何度も寝返りをうつ。
「うぅーん、眠れない…」
こんなことなら、あんなの観なきゃよかった…
今日は私、ベル、フランの3人は非番だった。
暇潰しに何かしようということになり、DVDを借りてきて観ることにした。
が、ベルが借りてきたのはなんとホラー映画だったわけで…
「私、怖い系ムリなんだけど」
「大丈夫だって、あんま怖くないの選んできたから、ししっ♪」
「そうですよー、ミー達がいますから大丈夫ですよー」
「う、うん…」
2人にうまく丸め込まれ、結局観ることになってしまった。でも2人は私を挟むように両隣に座ってくれた。何気に優しいんだよね。
…何て安心した私が馬鹿だった。
何が怖くないだ、この堕王子!!めちゃくちゃ怖いじゃん!!怖すぎて気絶しそう…
「面白かったな♪」
「ですねー」
「私怖くて死にそうだった…」
「ししっ、名前って怖がり〜」
「うるさい!!もう寝る!!」
「おやすみ♪」
「おやすみなさーい」
寝るとは言ったものの、目をつぶると昼間に観たホラー映画が蘇りなかなか眠れない。そして冒頭に至る。
うぅーんと唸りながらベッドの上を転がっていると…
カツカツ…
廊下から何か物音が聞こえてきた。
「き、気のせいだよ、ね?」
聞こえない振りをして枕に顔をうずめる。
カツカツ…
さっきよりも音が大きくなっていた。どうやら此方に向かってきているらしい。
「どうしよう…」
怖い気持ちもあるが、部屋に入って来られては堪らない。私は意を決し、枕を抱え扉の方へと向かった。
「はぁ、長引いちまったぜぇ」
任務に少々手こずり、帰城時間が予定よりも遅くなってしまった。
ちらっと時計に目をやると、もう既に夜中の2時。
「もう寝てるだろうなぁ…はぁー」
深いため息をつき、目的の部屋へ向かう。起きてたら最高だが、そうでなくても寝顔にキスぐらいしてやろう。
寝ているだろうと思いそっと扉を開け、一歩踏み込んだ。
足音が私の部屋の前で止まり、ドアノブが回る。
私は持っていた枕を握りしめ、扉が開き入ってきた標的目掛けて枕を思いっきり投げつけた。
「えいっ!!」
「ぶっ!?」
反応からして投げつけた枕は相手にクリーンヒットしたらしい。がこっちに来られては困るという一心で、手当たり次第にそこら辺のクッションやらぬいぐるみやらを投げつけた。
「ちょっ、待て、待てって!!」
「きゃー、来るなぁ!!」
「おい落ち着けぇ名前」
ん!?今名前呼ばれた?
私は投げる手を止め、扉の方に目を向ける。
「ゔお゙ぉい、俺だぁ」
「す、くあーろ?」
「あぁそうだぁ。いきなり物投げつけるなんてひでぇじゃねぇかぁ」
「ごめん…」
スクアーロは俯き黙りこんだ私を抱きしめ、何かあったのかぁ?と優しく尋ねてくれた。コクリと頷き、私は今日観たホラー映画のことを話し、お化けと間違えて枕を投げつけてしまったといった。
「結構痛かったぜぇ?」
「ごめん…なさい」
しゅんとしていると、気にするなぁと優しく頭を撫でてくれた。
「それより何でこんな時間に起きてんだぁ?」
「映画観たら怖くて眠れなくて…」
「そうかぁ、一緒に寝るかぁ?」
「えっ!?いいの?」
「あぁ、名前がいいならなぁ」
わぁーありがとうと言って思いっきり抱きついたら、おぅと少し照れてポリポリと頬をかいていた。
「ひゃっ!?」
「そろそろ寝るぜぇ?」
「うん!!」
照れてるスクアーロを見て可愛いなぁなんて思っていたら、いきなりお姫様抱っこされてベッドにつれて行かれた。
ポフッと優しくベッドにおろされた私は布団に潜った。
スクアーロは隊服の上着を脱ぎ近くにあった椅子の背もたれにかけ、ブーツを脱ぐと布団に潜ってきた。
私は怖さからスクアーロの服の裾をきゅっと掴んだ。
「お化けだろうが何だろうが、名前は俺が絶対守ってやるぜぇ」
「うん、ありがとう」
後頭部には手を、腰には腕を回し引き寄せられる。
あっ、スクアーロの匂いだ。
先ほどまでの恐怖はどこかに去り、心地よい心音と温もりに身を委ね眠りにおちた。
眠りにつく直前、額に柔らかい感触とスクアーロの声が聞こえた気がした。
(名前愛してるぜぇ、チュッ)
End
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