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銀の魔力
第九章 羊の血【後編】 5
 

「……心配するな。少し身体に力が入らないだけだ」
「おい、冬獅郎!無理すんなって…!」

そう言って無理矢理立とうとする冬獅郎を制止しようとしたところで、突然一護の身体から光が弾けた。

「!?」
「黒崎!?」

しかし、その光は一瞬で消え失せ、また元の静寂な闇に包まれる。



―――――ドクン……



やけに大きく響く自身の鼓動。
自分の胸を押さえたまま動かなくなってしまった主に、冬獅郎が必死で声を掛ける。

「おい!黒崎!どうしたんだ!?…黒崎っ!」



「……はぁ………」



暫くすると深い溜息と共にゆっくりと一護が顔を上げる。
心配そうに自身を見上げている愛しい仔狼の頭を撫で、優しく微笑みかける。

「大丈夫だ。どうやら、俺の能力が完全に覚醒したらしい…。すげぇ力が漲ってくる……」

自身の掌を見つめてそう呟く主に、ほっと胸を撫で下ろす。
ところがそう思ったのも束の間。
いきなり自身の身体がふわりと宙に浮き、足が地面から離れたかと思うと、冬獅郎は一護に抱きかかえられていた。

「じゃあ、帰るか」
「な…っ////く、黒崎////!?」
「あぁ、悪ぃ。でも折角、力も覚醒した事だし、飛んで帰った方が早ぇだろ?落っこちねぇ様にしっかり捕まってろよ」

冬獅郎を抱え、ぐっと地面を踏み締めた一護の背中からバサッと黒く大きな羽根のある翼が現れる。
その姿は、堕天使の様に美しく危う気な魅力を秘めていた。
そんな彼に冬獅郎が見惚れている間に、二人の周りには風が渦を巻いて集まっていく。
今にも飛び立とうとする一護に気付いた冬獅郎が、慌てて声を掛ける。

「おい!飛んで帰るって、お前いきなりでちゃんと飛べんのかよ!?」
「今までだってほんのちょっとだけど飛べてたんだ。要領は一緒だろ。だから、大丈夫…っ!」
「ぅ…わっ!!」

ブワッと一護が一気に空へと急上昇する。
空を飛ぶなど勿論初めてな冬獅郎は、思わず一護の首に縋る様に抱きついた。
そんな彼を見て一護からは、クスリと笑みが零れる。


 

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あきゅろす。
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