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銀の魔力
第八章 羊の血【前編】 4
 




「うわ〜…教会のお手伝いしてたら真っ暗になっちゃった…」

すっかりと日の暮れてしまった街の通りを、少女は自宅へと急いでいた。
街灯が点いていると言えども、やはり夜道は暗い。
沈み込む様な深く黒い闇は、否が応にも恐怖心を掻き立てる。
そのせいか、彼女は先程よりも足早に通りを過ぎていく。


「おい」


突然、闇の中から響き渡る凛とした声。
少女はビクリと身体を震わせ、思わず足を止めた。
恐る恐る声のした路地の方へ視線を向けると、その暗闇の中から出てきたのはハンチングの帽子を目深に被った小柄な少年。
外見は完全に子供のそれである冬獅郎を見て、少女から安堵の息が漏れた。

「どうしたの?君も家に帰る途中?」
「……あぁ」

短くそう答えると少女の元へと歩みを進める。
彼女からは先程までの緊張し切った表情は消え失せていた。

「小さい子の夜道の一人歩きは危険だよ!」
「……俺の心配は無用だ。お前こそ女が一人で出歩いて良い時間帯じゃない。送ってやる」

少女の発言にほんの少し眉を動かしたものの、平静を装ってそう答える。
すると彼女は、ぱっと笑って見せた。

「本当!?ありがとう!実は心細かったんだ」

えへへと笑い、冬獅郎の隣に並んで歩き出す。
家までの道のりを案内しつつ、冬獅郎の存在に安心しきって色々と話題を振ってくる彼女に、冬獅郎は適当に受け答えをする。
暫くそうして歩いていると、また暗闇から呼び止められた。

「おい、冬獅郎!」

闇夜に映える橙の髪をした青年が、小走りにこちらへ近付いて来るのが見える。
二人の元へと辿り着いた彼を、少女は遠慮がちに見上げた。

「あの、あなたは……?」
「Σあ、え〜と……Uu」

取り敢えず出て来たは良いものの、適当な言い訳が見当たらず、少女に問われしどろもどろになっている主。
優秀な使い魔は小さく溜息を吐き、仕方なく助け舟を出してやる事にした。

「俺の兄貴だ」
「そ、そう!コイツの兄貴で黒崎 一護だ」
「へ〜お兄さんか〜!宜しくね!」

兄弟なのにあんまり似てないんだね!と言う少女の発言に冷や汗をかきながらも、何とか笑って誤魔化した。
一護も冬獅郎同様、彼女を送っていく事になり、今度は三人揃って歩き始めた。


 

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あきゅろす。
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