銀の魔力 第五章 口実【前編】 3 ―――――……「寂しい思いさせてごめんな…?もう二度と、お前にこんな思いさせねぇから…だから…… ……だから、泣くなよ………」 ぎゅうっと抱き締めた、細い肩。 肩口に額を付けて尚も強く強く…けれど、ありったけの優しさを込めて。 月の化身の様な彼が、この白銀の光に溶けて消えてしまわぬ様に。 「う…ひっ…く……」 声を押し殺して涙を流す姿さえ、愛しいと感じてしまう自分はおかしいだろうか。 例えそれが自分のせいだとしても。 キラキラと光の雫を零す翡翠を、そっと閉じさせる。 そしてそのまま、掌で双眼を覆った。 「これからは、お前を苦しめるもの・悲しませるもの全てから俺が護ってやる……勿論、お前に寂しい思いをさせる俺自身からすらも……今度こそ、約束だ」 ゆっくりと冬獅郎をこちらに向かせ、指で涙を拭ってやる。 昨日彼がした様に、自身の右手の小指を差し出しす。 真摯な視線を向ける褐色の瞳が、翡翠のそれを捕らえた。 「……次に約束破ったら、ただじゃおかねぇぞ…」 「あぁ、そん時は煮るなり焼くなり好きにすりゃ良い」 ふっと優しく微笑む一護の小指に、冬獅郎は己のそれを遠慮がちに絡める。 一護がぐっと小指に力を込めた。 「……指切った…」 <<前へ 次へ>> |