屋根裏部屋 Schemer2 「アキ……」 彼は低く艶めいた声で、キスの合間に愛しい恋人の名を囁く。 「や、ちひ……」 かたん、と自身の背後で音がして、アキはきつく閉じた目を開く。と、なぜか視界に、天井。すぐに千裕の顔が現れて、また彼女の唇を塞ぎにかかる。全身に彼の体重の重み。 「やだ……ちひろ、」 「アキが愛おしくて、つい、」 ストップをかけるべく伸びてきた細い手を逆に絡め取って、千裕はシートごと彼女を押し倒した。 「…や、見られちゃう、」 「恥ずかしいのか、」 「……っ、いじわる、」 「可愛い。」 空しくもささやかな抵抗を完全に無視して、スイッチの入った彼は再び顔を寄せる。 ちゅ、とキスの音を残して、彼はその薄い唇を他のところに這わせ始めた。 「やめ、あっ……」 自然と頬は赤く染まり、瞳は涙で潤いを増していく。力の入らなくなった体の代わりとばかりに、彼女はその口から拒否の言葉を羅列した。やがて逞しい腕は彼女の背中を伝って腰へとまわる。きゅっと抱きすくめられて、彼女の抵抗はそれで止んだ。 「……ど、して、」 「分からない?」 「んっ…そこで喋っちゃだめ……、」 「アキはいつでも愛らしいから、俺はいつも我慢してるんだよ……?」 「じゃ、……ひぁ……い、まじゃなくても、」 耳を舌が這う音をダイレクトに聞きながら、アキは懸命に言葉を探す。けれど肝心の千裕は、余裕そうな言葉の割に、内心は完全にオトナの振る舞いを忘れてしまっていた。 「好きだ、アキ。」 「……わ、たしも、」 返事とともにそっと背中にまわってくる細腕。 それが彼女のものだと分かると、彼の体と心は悦びに震えた。 「じゃあ、もう少しこのままで。」 end BacK:NexT |