幸せになる方法(沢村)

人生初の、年下彼氏ができた。


別に今まで彼氏がいなかったわけじゃない。むしろ恋愛経験は豊富なほうで。

ナンパで始まる年上との偽りの恋愛ばかりを繰り返して、周りからは「男好き」やら「チャラい女」やら言われるようになっていて、それで疲れていたときに、彼と出会った。

「好きだからあたしと付き合って」って言ったときは目を丸くして、次に顔を赤くして、手で大きく丸を作ったときは思わず笑ったな。そんなOKの仕方するヤツ初めてみたわ


そんで今、付き合ってるわけだけど…



「みてみて!俺すげぇ技習得したの!!『東京タワー』!!」
「…」

あやとりを誇らしげに披露するこの馬鹿が、私の彼氏。
沢村えーじゅん。
青道野球部のバカ代表として有名だ。
同じクラスの御幸や倉持達が
イジリがいがあるって言ってた


「ほら、凄くね?昨日、東条と図書室であやとりの本借りてきて練習したの」
「あーうんうん凄いねっと」

そう軽く受け流したつもりのに、まだあやとり話を続けるかコイツは。


「春っちがあやとり名人でー」「金丸が」「降谷が」

そんな風に、楽しそうに友人の話をする栄純が好きだ。

誰に対しても壁を作らない、
ばか正直でまっすぐな奴。
だから周りにいっぱい人が集まる。
あたしと正反対だから、
きっと惹かれたんだと思う。


そんな栄純の話は
好きだけど
どこか、孤独を感じる。

純粋な栄純の心はあたしには眩しくて、どんどん自分が汚い人間に見えて。
あたしは本当に自分のことが嫌いみたい。




「…先輩、なんか元気ない?」

気が付くと、栄純があたしの顔を覗き込んでいた。

「…そう?」
「うん。なんとなくだけど」
「そっかぁ」

表情に出してないつもりだったのに、な…

栄純は馬鹿だけどたまに核心をつくんだよね。


「大丈夫よ、大したことないから」
「…………先輩って実は幸薄いでしょ?」
「ほっとけ」
「俺ね、そんな先輩のために幸せ摘んできた」
「え?」
「はい、これ」
「…これ……」
「四つ葉のクローバー」
「…」
「これで幸せになれるね」

ニカーッて笑う栄純に、わたしは言った。

「…………栄純、」
「ん?」
「………これ、デンジソウだよ」
「デ、デン…?え?嘘!」
「クローバーによく似てるけど、葉の形が若干三角形でしょ?これがデンジソウ」
「……つまり、それは四つ葉のクローバーじゃ…」
「ないね」
「幸せになるとか…」
「聞いたことないね」
「…」
「…」
「だぁぁぁぁしくったあぁ!!」

「どうりでいっぱいあると思ったぁ!!」って言うから、思わず吹き出して笑った。



「あたし、彼氏にただの草プレゼントされるの初めてだなー」
「うっ…」
「これが本物の四つ葉のクローバーだったらちょっとかっこよかったかもなー」
「ぬぅ…」
「あたしには道端の草がお似合いってことかぁ」
「それは違っ…」
「冗談。嬉しいよ」

栄純らしくていいよ。
あたしにもこれがちょうど合ってる。


「俺、もう一回四つ葉のクローバー探してくる!」
「ううん、これがいい。ありがとう。それにさ、」
「ちょっと待ってて!今度こそ本物見つけるから!!」
「、」

これでいいって言ったのに、
話聞かないんだから全くあのバカ。


言いそびれちゃったじゃん


幸せになる方法


(“栄純がいてくれれば、私は幸せになれるんだよ”って。)



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