ドライ愛ス(亮介)




どうしたってことか。


彼氏である亮介は
彼女であるわたしに、冷たいのだ。




「亮介さん」

「なに?」

「ふつー、彼氏は彼女に優しくするもんじゃないんですか?」


お世辞でも“わたしに優しい”と思えない彼氏に、面と向かって言ってみました。


「ふつーって?」

「や、常識的に考えて?」

「常識?なんでそれが常識なの?」

「え」

「誰がそれを常識って決めたの?」

「そ、それは…」「愛情表現なんて人それぞれでしょ」


ばっさりと言い切られてしまった。
しかも反論できないからたち悪い。

くっそーくっそー魔王め!
目細いくせに!ちっちゃいくせに!


「だれがちっちゃいって?」

「へ?そ、そんなこと言ってないよ!思ってはいるけど!」

「へぇ」

「ごめんなさいごめんなさい!」


謝るのでほっぺたをつままないでください亮介さま!

てゆーか、なんでそんなに人の心読めるんすか。


「俺クリームコロッケパン食べたいな」

「わかりました買ってきますから!」

「よし」


やっと開放されたほっぺたを自分で撫でてあげる。
可哀想なわたし。

こーゆうときもさ、
「ごめんやりすぎた。痛かったね」
なんて、彼氏に撫でてもらいたいよ?
そーゆうの、少女マンガで読んだよ?
クリームコロッケパン買ってこいなんて、言ってなかったよ?


目の前の彼に心の中で訴えるが
届いてないのか聞こえないふりなのか
すっかりノートに目を向けて勉強なんかしちゃって。
わたしは寂しくおいてけぼり。
こーゆうときは心読まないんだね

ずるいや。


そもそも、亮介はわたし以外の女子にはなんだか普通に優しいんだよ。わたしには冷たいのに。

それを伊佐敷なんかに相談したら
「逆に特別って意味なんじゃねーの」
って言われた。

歪んだ愛情表現ってやつ?




でもさ、“好き”の一言ぐらい、言ってほしいじゃん。


そういえば告白したのだってわたしからだったし、亮介から好きって言ってもらったことだって一回もない。

わたしだって、愛されてるって証拠がほしいんだよ。



「―ねえ、亮介」

「なに?」

「わたしたちって付き合ってるんだよね?」

「みたいだね」

「わたし、亮介の彼女なんだよね?」

「まぁそうなるよね」

「―じゃあさ、」

「うん」

「わたしのこと、好き?」



今まで簡単に答えてたのに。
なんで急に黙るの。

「ねぇ、」

「…次の授業始まるよ。早く教科書だせば?」


…話をそらされてしまった。

ちぇっ。なんだよなんだよ
好きくらい言ってくれたっていいじゃんケチ。


むきになって、カバンの中から乱暴に教科書をとりだす。次にノート。次に筆箱。
と、そこで
小さな箱が入ってることに気付いた。

なんだこれ。

淡いピンク色のリボンのついた箱。
不思議に思いながらも箱を開けたら、きらり、と可愛い指輪が光っていた。
指輪の裏には、今日の日付が刻まれていて。

あれ、これって、付き合った記念日…?

ぱっと顔をあげたら、
亮介が優しい顔をしていた。


「どう?満足した?」

「―今日で一年って、覚えてたんだ」


「俺を誰だと思ってるの?」


バーカ、と亮介が笑う。


え、やばい。どうしよう。嬉しい。
わたし、幸せだ。



「なんか言うことないの?」

「亮介、すき」

「うん。知ってる」



やっぱり、愛のある言葉なんていらないや。
それが亮介なりの愛情なら
わたしはなんだって受け止めたいと思う。



「亮介って実はツンデレだよね」と言ったら
愛のあるチョップを今日もくらった。





ドライ愛ス









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