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東方時空録
『第三録…図書館のある紅魔館へ/後編』
〜あらすじ〜


 突如風景が竹林へ変わり、自分が竹林へと迷い込んだ事を知る秋葉。彷徨い、絶望しかけたところに、火を自在に操る人物が登場。孤独だった秋葉は人に会えた嬉しさから、その人物に抱き付き、押し倒す(エロく聞こえる……)
 右手に灯していた火が、転倒と共に草に引火。いつまでもしがみつく秋葉を、拳骨一発で剥がし、消化を開始する……だったと思うが、別にそんな事は無かったぜ!





〜第三録…図書館のある紅魔館へ/後編〜





 秋葉が意識を手放してから、どれくらい経ったのだろうか。辺りはまだ暗黒の闇が広がっている。この様子だと夜明けまでは当分先の事であろう。
 その中で焚き火に薪をくべている者が居る。その名を“藤原 妹紅”と言う。周りの雑草に燃え移った火を消し終え、一段落ついてるところだ。
 秋葉はと言うと焚き火の近くに寝かされている。掛けるものはなにもないので、焚き火だけが暖を取る唯一の方法だ。


「なぁ妹紅。何で秋葉は此処で寝てんだ?」


「私に抱き付いていたから、引き剥がそうと、こう……頭を殴ったら寝た」


 妹紅は握り拳を作り、振り下ろすジェスチャーを交え話す。その話し相手と言うのが、一足先に紅魔館に向かっていた魔理沙だ。
 しかし、紅魔館に秋葉は居ず、来るまで図書館で暇を潰していたのだが、一向に来ないので探しに来たらしい。空を当てもなく飛んでいた時に、竹林の一部が燃えていた為、野次馬根性で来たら秋葉が居たってところだ。


「魔理沙はコイツの知り合いか何かか?」


「まぁな。今日、出会ったばかりだがな」


「ふーん」


 妹紅は興味なさげな返事を返した後、焚き火にまた薪をくべた。パチッと小さな音をたてて割れる薪。その音は静寂の中にある竹林に響き、虚しく吸収されていった……
 お互いに話す事は無いのか、ただただ無言を貫くばかりだ。二人の視線は焚き火や秋葉に、竹林へも行ったり来たりしている。特に警戒してる訳ではない様だが。


「ん……」


「お、漸く起きたか」


「んぇ、もう朝? ありゃ、まだ暗いや」


「……魔理沙、コイツ天然なんじゃないか?」


「いや、設定上では天然じゃないぜ」


「そうか」


 秋葉は右目を擦りながら上半身を起こす。何と言う腹筋――って、んな訳無い。ちゃんと左手も使って起き上がっている。
 一度背伸びをし、焚き火の方に体を向ける。寒いわけではないのだが、その方向に体を向けねば、二人の顔が見えないからだ。


「寝起き直後にすまないが、何故竹林に来た。昼間でさえ迷い易いってのに……」


「何故って、私は紅魔館に行きたかっただけ」


「紅魔館に? 竹林と全然方向違うんだが……お前、方向音痴か?」


「む、方向音痴じゃなくて此処の地理が分からないだけ。それに私はお前じゃなくて、夜次秋葉って名前があるよ」


「ん、それはすまなかった。……それと自己紹介が遅れてたな、私は藤原妹紅だ。よろしく」


「藤原、妹紅……うん、こちらこそよろしくね」


 秋葉は握手の為に手を差し出したが、妹紅はなかなか差し出してくれない。諦めて手を引こうとした時、漸く妹紅が秋葉の手を握ってくれた。どことなく、妹紅の頬が赤く染まっていたのに、秋葉は気付きもしなかった。
 それにしても何とも進む展開が早い会話だ。順序が違えど、大体の事を話終えている。竹林に来た経緯から、自己紹介までを。その間、魔理沙は空気にならざるを得ないが……


「それにしてもこの竹林って凄いんだね」


「……どう言う事だ? 確かに竹林自体の広さは半端ないが」


「いや、そうじゃなくて森との境目が分からなくなってるところがだよ」


「は? お前何言ってんだよ」


「え? だ、だって、私が森の中を歩いてたら、急に景色が竹だらけになったんだよ?」


 秋葉は必死に説明するが、妹紅はこの竹林にそんな現象はないと、首を傾げながら話している。では、秋葉が体験した現象は何なのだろうか? 現に体験した秋葉は、妹紅の言っている事を信用していない。だが、この竹林に関しては妹紅の方が詳しいだろう。何故なら、妹紅は幻想郷の住人であるからだ。
 魔理沙もそんな現象は知らない様だ。秋葉以外体験してない現象――周りの景色が何の兆しも無しに変化する。自然界ではまずあり得ない現象だ。意図的に引き起こされたものだとしても、自然界の理を操れる者はいないだろう。
 妹紅に白い目で見られてる秋葉は、肩身の狭い思いをしてるだろう。魔理沙は腕組みをしながら、その現象について考えていた。


「……あ、その現象、もしかしたら“三妖精”の仕業かもしれないぜ?」


「「三妖精?」」


「あぁ。いっつも三人で悪戯してる妖精がいるんだ。私はソイツらを三妖精って呼んでる。確か、光の屈折何かを操れる奴がいたな」


「ふーん。で、秋葉の言う現象はその三妖精って奴らの仕業かも知れないと言いたいのか?」


「あくまでもそう言う可能性があるってだけだがな」


「じゃ、じゃあ、私が可笑しい訳じゃないんだよね?」


「そこまで確実には言い切れないぜ……」


「そ、そんなぁ」


 あくまでもこの現象が三妖精の仕業かも知れないと言う仮説であり、秋葉が可笑しくないとは証明出来ない。何よりも情報が圧倒的に少なすぎる。高が一つの情報で、そこまで辿り着けただけでも素晴らしい事だ。
 しかし、ここで二つの矛盾が生まれる。一つは光の屈折を操る為には、それなりに光がなければならない。だが、秋葉が歩いていた時には、日の日差しなど大して射してなかった筈だ。いくら光の屈折を操れるからと言って、本の僅かな日の光で鮮明な虚像を作れるだろうか? ハッキリ言って、まず無理に等しいだろう。
 次に二つ目の矛盾は、秋葉の見た虚像その物である。辺りはほぼ真っ暗な状態だった――それなのにも関わらず、秋葉は虚像が見えた……それも鮮明な虚像をだ。初めにも言った様に、虚像を作り出すには無理な環境だった筈。ならば、秋葉の見た虚像は何なんだったのだろう?


(う〜ん、もしかしたら異変の兆候か何かか? 後で霊夢に相談した方が良さそうだな)


(魔理沙は黙りか……何か話題ねぇかな? 黙ってんのも気まずいし)
「……なぁ秋葉、お前は紅魔館に何しに行こうとしたんだ?」


「んと、図書館で本を見にね。魔理沙が言うには、膨大な本があるってから」


「ふーん、図書館ねぇ……何の本見るんだ?」


「空間操作系の本かな」


「空間操作……そんな本見て何すんだ? あ、やっぱあれか、移動を楽にしたいとかか?」


 妹紅はニヤリと口元に笑みを浮かべ、見透かしてやったと言わんばかりの表情を浮かべる。しかし、秋葉は妹紅の期待とは裏腹に、首を横に振るった。当ての外れた妹紅は、あれ? っと拍子抜けした表情を作り出す。


「話せば長くなるんだけど……かくかくしかじか、っと言う訳なんだよ」


「成る程。元居た世界に帰る方法を探す為に、紅魔館に行くのか」


「まぁ、そんなところだね。……さてと」


「何だ、もう行くのか?」


 妹紅の問い掛けに、「うん」と頷きを返す。スカートに付いた砂を払い、身だしなみを整える。秋葉の持ち物は全て、作り出した空間の中に仕舞ってあるので、荷物になる物はない。
 が、唯一荷物になるモノと言えば……


「魔理沙、もう行くよ。……魔理沙? おーい、もしもーし」


 ――霧雨魔理沙である。ま、彼女にだけ当てはまる訳ではないが、今は秋葉の行動を制限している。ゆえにお荷物なのだ。
 いくら話し掛けても反応しないので、体を揺する事にする。揺すってる間に帽子が降りたが気にしない。二、三回揺すったところで漸く気付いてくれた。


「そろそろ紅魔館に行きたいんだけど、道分かるよね?」


「あぁ、分かるぜ。徒歩じゃ大変だろ、箒で行くか?」


「箒は……遠慮するよ。もうあんな思いはごめんだからね」


「それじゃあ徒歩か? 徒歩じゃ時間が掛かるぜ?」


 魔理沙の言う通り、徒歩じゃ時間が掛かる。箒――空を飛んで移動すれば、障害物は一切無いし、紅魔館へ一直線なのだが。


「徒歩では行かないし、箒でも行かないよ」


「あ? んじゃ、どうやって行く気なんだよ。魔理沙の箒ならひとっ飛びなんじゃねぇのか?」


「フフフ、徒歩よりも、箒よりも早く行ける移動方があるんだよね♪」


「?」


「あぁ〜、私は何となく分かったぜ」


 まぁ、秋葉の能力を多少知ってる魔理沙なら、見当がついても可笑しくはない。知っていても気付かない奴も居るかもしれないが……
 秋葉は魔理沙の左手を握り、紅魔館の入り口を思い浮かべるよう指示した。なるべく鮮明に、目印になるモノがあれば尚更良い。
 魔理沙は目を瞑り、紅魔館の入り口――門を想像する。目印になるモノとの事で、門番である美鈴も思い浮かべる。
 そのビジョンが秋葉にも伝わってくる。非常に鮮明なビジョンだ。これなら誤差もミリ単位で済む。


(……へぇ、紅魔館って門があるのか。それとチャイナ服を着ている人が、門番ってとこかな?)
「よし!」


 カッと勢い良く開眼し、右腕を肩の高さで右側に振る。空気を切る金切り声が辺りに響き、虚空に一筋の切れ目が生まれた。右手をその切れ目に突っ込み、中から愛刀の氷影を取り出す。既に抜刀された刀身を、天高く降り上げ、全神経を刀身に集中させる。
 ――振り下ろす速度はまさに神速。一度の瞬きの間に、刀身は天から地に下ろされた。
 肩の力を抜き、刀身を目の前に出来た切れ目に入れる。刀身を横にずらすと、切れ目の中に――いや、厳密には切れ目の先に紅魔館の門が見えた。
 それを確認した秋葉は、氷影を先に作った切れ目に放り込む。キンッと刀が鞘にinした音と共に、その切れ目は掻き消えるように閉じた。


「魔理沙、終わったよ」


「ん、意外に遅かったな。……こんな細い“スキマ”に入れるのか?」


「それは大丈夫」
(スキマって表現、何かしっくりくるね。次からはそう言おうかな?)


 秋葉が指をパチンと鳴らすと、細かった“スキマ”がパッと横に広がっていく。人一人分通れるスペースの出来上がりだ。


「んじゃ、行くとするか。じゃあな妹紅、機会があればまた会おうな」


「ああ、またな魔理沙」


 帽子を押さえ、スキマを潜り抜ける。人一人のスペースがあっても、帽子の幅は考慮されてない。引っ掛かりつつも、何ら問題無く抜けられた。


「えと、今日は助けてくれてありがとう」


「気にすんなって。竹林で迷ってる奴を助けるのは私の役目だしな」


「フフ、頼もしいね」


 妹紅に微笑みを交えながら手を振り、スキマへと入っていく。「またね!」と元気な声と共に、スキマはゆっくりと口を閉じた。


「またな、秋葉」
(……スキマ使えんなら、空間操作系の本見る必要ねぇんじゃね? まぁ、趣味で見るなら別かな)


 ポケットに手を突っ込み、天を仰ぐ。夜空に瞬く星々が、妹紅にはいつも以上に綺麗に見えた。
 似通う星にしても、輝きはそれぞれ違う。強く輝く星もあれば、弱く輝く星もある。それと、輝く時の長さも多種多様だ。流れ星の様に一瞬の時を輝くか、太陽の様に何億もの時を輝く星もある。


「久しぶりに、星空を眺めながら寝るのも良いかもな」


 そうは考えたが、今の時期は気温が低い。火が操れても、寒いものは寒い。焚き火を消し、竹林の中にある家へと戻る事にした――


 〜 〜 〜 〜 〜


--紅魔館門前--


 館の外壁は近くに行けば行く程、その赤は更に濃さを増してる様に見える。月の光に照らされた紅魔館は、外見だけを見れば禍々しい雰囲気を漂わせていた。
 ……が、その雰囲気をブチ壊す存在が居る。門前で堂々と爆睡している門番――紅 美鈴だ。器用に壁に背を預け、立ったまま寝ているし。


「起こした方が良いのかな?」


「止めとけ。それと、別に入る時に許可はいらないしな」


「じゃあ、門番居る意味ないよね……?」


「ぶっちゃければ、マジで居る必要はないな。だが、雰囲気ってもんがあるだろ?」


「え〜、門番って勤務中に居眠りしないイメージがあるんだけど」


「ま、幻想郷だから仕方がない」


「そう言うもん?」


「そう言うもんだぜ」


 いまいち良く分かってはいなさそうだが、幻想郷だから仕方がない。それに、門番だって寝ずに二十四時間ぶっ通しでやってる訳ではない。仮眠だって門番には必要だ。
 で、その仮眠を取る時には交代する様なのだが、ここの門番は一人しか居ないみたいだ。


「ぐずぐすしてないで、さっさと行こうぜ」


「う、うん」
(一人じゃなくて二人でやれば門番勤まりそうなんだけどなぁ)


 爆睡中の美鈴を余所に、何食わぬ顔をしながら門を通り抜ける。簡単に通れるなら、門番の必要性がない。この紅魔館の主は何を思って、門番を一人だけ配置したのだろう。館を守りたければ、門番をもう一人増やせば良いのに……。それとも、主自らが守り抜ける程の力を有してるのだろうか?
 まぁ、そんな事は今の秋葉には関係のない事だ。中庭を抜け、大きな扉の前に立つ。扉を開け、秋葉達は紅魔館の中へと、歩み始めた――





ーあとがきー

いや〜、予想以上に長くなりました(汗
前回の二倍近くの量です。

さ、いよいよ紅魔館ですよ♪
テンション上がってきますね!!(ダマレ

一応、次の話から戦闘が少しずつ増えていく予定です。
やはり、戦闘シーンを書くのが一番楽しいですよね♪

……え? そうでもない?
(´・ω・`)にょろ〜ん

うん、まぁ、次回をお楽しみに♪

‡*綻びへ‡‡狭間へ#‡
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あきゅろす。
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