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東方時空録
『第一録…スペルカード』
『そう言えば、私の名前言ってなかったな。霧雨魔理沙、一応、魔法使いなんだぜ』


『へぇ、魔法使いね……ふふ、そうだと思ったよ。元居た世界の魔法使いのイメージと大して変わってないからね。まぁ、“二百年程前”の話だけど』





〜第一録…スペルカード〜





 ――その瞬間、場の空気が凍り付いた様に、静かになった。聞こえるのは葉と葉が擦れ合う音と、風が二人の間を吹き抜ける音だけだ。
 白黒少女改め霧雨魔理沙は、先程から微動だにしていない。表情も一切崩していない様だ。片や衝撃的事実を突拍子に語った秋葉は、笑顔を崩さずにクエスチョンマークを脳天に出し、首を右に四十五度程傾けている。
 しかし、この沈黙は数秒とも掛からずに破られる事になる――


「……何かの本の話か?」


「いや、実話&体験談だけど」


「…………」


 再度言葉を失う魔理沙。沈黙は再びこの場を瞬く間に蹂躙する。
 魔理沙の口元は引き吊っており、“マジかよ”的な表情をしている。その表情がどんな風なのかは、ご想像にお任せする方向だ。
 流石の秋葉も魔理沙の異変に気付き、微笑み浮かぶ表情を怪訝な表情へと変えた。


「……魔理沙?」


「……へ? あ、あぁ、ど、どうかしたか?」


「いや、急に黙り込むから、ネジでも外れたのかと。頭のね」


 秋葉は口を右手で隠しながら、クツクツと小馬鹿にした様な笑い声を出す。これは秋葉なりに、場の空気を解す方法でもある。……如何せん、やり方を間違えてるが。
 一方、唐突に小馬鹿にされた魔理沙だったが、やはり突然の出来事であった為、怒るよりも呆れてしまっている。


「……お前、一歩間違えれば揉め事に発展する言い種だぜ?」


「え? そうなの? 私は場の空気を解そうとしただけなのに」


「……人を小馬鹿にした様な台詞がか?」


「む、失礼ね。小馬鹿にはした覚えはないよ」


 秋葉は頬を軽く膨らませ、魔理沙の言葉を否定する。秋葉は相手を小馬鹿にする意志がないので、相手がその言葉をどう受け取るか、までは考えていない様だ。そのせいで散々な目に合う事になる、と言うのはまた別のお話し。


「はぁ……まぁ、立ち話も何だし、一旦家に入ろうぜ」


「賛成。もう身も心もくたくただよ。誰かさんのお陰で」


「オイオイ、そう誉めるなって」


「誉めてないー!」


 魔理沙はククッっと小さな笑い声をたてて、家の奥へとその姿を消した。一方、秋葉は入口付近で立ち往生をし、両頬をハムスターの如く膨らませている。暫くその状況を維持していたが、小さな溜息を一つ吐いて渋々家の中に入っていった。










「ちょっ…………ゴ、ゴミ屋敷!?」


 魔理沙邸に入ってからものの数秒程で、秋葉の口元は引き吊り、言葉を失ってしまった。本を主体としたありとあらゆる物が、部屋一面に四散しているではないか。果たしてこれが女性の部屋でいいのだろうか……
 秋葉は床に四散している物に注意しながら、一際目立つ山積みにされた本に歩み寄る。分厚い本から薄い本が、種類関係なく一カ所に積まれていた。
 秋葉は本の山の中から、一冊の本を手に取った。何やら文字が書かれているが、読めない字ばっかりである。開いて見るとげんなりする程の字が、一ページの端から端までびっしり書かれていた。


「うわぁ、目が疲れる本だ。あ、魔理沙はこの本読んだんだよね? 凄いなぁ……」


「秋葉〜、お茶持ってきてやったぜ。……秋葉? 何読んでいるんだ?」


「えっと……何って言われても、私にはタイトルも解らない本だから、ね?」


 本を閉じ、魔理沙の方へ表紙を向ける。するとすぐにその本が何なのか解り、「あぁ」と相槌を打つ魔理沙。


「その本は“魔導書”だな」


「魔導書、ってあのファイ〇ーエ〇ブ〇ムに出てくる、あの魔導書!?」


「ファ、ファ〇アー? ん〜、まぁ、そうなんじゃないか?」
(秋葉の言うフ〇イアーなんたら、ってのが解んねーぜ)


「へぇ〜、この本があの魔導書なのかー」
(あ! この本があれば、私も魔法使いになれる!?)


 目をキラキラさせながら、手に持っている魔導書を見る秋葉。先程まで“目の疲れる本”程度だったが、今は“魔法が使える本”に昇格していた。
 しかし、魔導書に書かれている文字が解らない為、秋葉の期待は脆くも崩れ去るのは目に見えていた――


 〜数分後〜


「秋葉、そう気を落とすなって。ほら、お茶が冷めちまうぜ?」


「うぅ、お茶なんて慰めにしかな――っ! 苦ッ!!」


「あ、冷めると苦くなるお茶だったの忘れてたぜ」


 口の中一杯に広がる苦味により、表情を歪ませる秋葉。落ち込んでいる秋葉に、追い討ちを掛ける苦味。例えるならば、カカオ百パーセントのチョコを勧められ、更にコーヒーのブラックを出された様な感じだ。
 あまりの苦さに涙目となり、「水、水!」と連呼する秋葉。魔理沙はただただ、その光景を見ながら腹を抱えて笑っているだけだった……










「そうだ、秋葉は今後の生活、どうする気なんだ?」


 魔理沙は冷めたきったお茶を下げ、新たに別のお茶を煎れる。テキパキと作業をする中、“今後の生活”を秋葉に問う。
 煎れ立ての熱々のお茶を口直しがてら一口啜り、困り果てた表情を露わにしながら、秋葉はその問いに答えた。


「ん〜、元の世界に帰りたいけど、帰る手段が断たれてるし、ね。最悪、幻想郷に住む羽目になるかも……」


「手段、か。あ、だったら“紅魔館”に行ってみたらどうだ?」


「紅魔館?」


「あぁ、あそこの図書館だったら、何か解るかもな」


 魔理沙はそう言うとお茶を飲み干し、いつ取り出したのか解らないが、その右手に一枚のカードを持っていた。星が沢山描かれていて、「スターダストレヴァリエ」と書かれている。


「魔理沙、それ何のカード?」


「“スペルカード”って言う物だ。簡単に説明するとだな……“魔法の発動”に使う物だぜ」


「……ねぇ、魔法が使えない私には、全然関係ないよね? 苛め目的?」


 秋葉は軽く魔理沙を睨み付ける。しかし、明らかな怒りが込められている為、ある意味殺気を放っているのと同等だ。
 冷や汗が魔理沙の頬を伝い、暫くの間言葉を失わせた。予想外の出来事に、思考が一時的に停止する。――ものの数秒の沈黙だったが、魔理沙は意を決して声を振り絞った。


「そ、それは誤解ってもんだぜ。このカードはな魔法の発動の他に、“技”の発動にも使うんだよ」


「技? ……例えば“剣技”とか?」


「あぁ。幻想郷には人を襲う妖怪や、食べようとする妖怪なんかが居るからな。蹴散らす時に使うのがスペルカードって訳だ。」


 魔理沙はその後に、「紅魔館に行くなら、必要になるぜ?」と言った様だが、秋葉の耳には届いてはいなかった……


「成る程。……魔理沙、そのスペルカードを教えて欲しいんだけど、いい?」


 スペルカードに興味を持った秋葉。自分もそれを使いたい意志が強まり、魔理沙に教えを請う。
 一方、魔理沙は明らかに何かを企んでいそうな笑みを、口元に作っていた。


「勿論――っと言いたいとこが、タダって訳にはなぁ〜」


「……お金が必要なの?」


「別に金じゃなくてもいいぜ」


「あ、そう? ん〜、だったら――」
(何で枝があるんだろ? ……ん? こんな本あったっけ?)


 徐に空をなぞり、物置とも言える空間を開き、秋葉はその中に上半身を突っ込む。収納していた私物を、物音たてながら物色し始める。端から見れば上半身の無い人間――いや、妖怪にしか見えない。
 その光景を見ていた魔理沙の頭の中に、どこぞの“スキマ妖怪”が浮かんでいた。


「……ん〜、秋葉の能力が似てるせいか?」


「よっと。この本、何だっけかなぁ〜?」


 秋葉が手にしている黒い本には、厳重に鎖が巻かれていて、南京錠らしき物で施錠されていた。どこをどう見ても、明らかに怪しい本である。タイトルも著者名も表示されていない。
 所有者である秋葉は、必死に思い出そうとしたが、結局何の本だか解らなかった模様。それ故に、手離す決意を決める秋葉。


「魔理沙、この本じゃ駄目?」


「ん? 別にいいが、魔道書の類か?」


「恐らく、そうだと思うんだけどね」


「ふーん。まぁ、それでいいぜ。早速、教えるとするか」


 黒い本を教えて貰う代わりに手渡し、早速準備に取り掛かる。魔理沙の教え方はかなり良く、すんなりと秋葉はそれを吸収していく。
 スペルカードの制作は、一時間も掛からずに終わった。机の上には、秋葉専用のカードが五枚並べてある。赤いカードが四枚に、青いカードが一枚で、計五枚だ。
 秋葉は右から順にカードを確認していく。

 瞬符『虚空月華』
 剣術『七つの夜』
 連符『風神剣舞・蓮華』
 刺符『抗う事は無駄ですよ?』
 虚無『狭間への導き』

 接近系のスペルが三枚に、遠距離系のスペルが一枚。それと防御用のスペルが一枚。意外にバランスが取れている様で、取れてない秋葉のスペル。
 魔理沙曰わく、遠距離系のスペルが少ないそうだ。どうやら、接近しての戦いはあまりしない模様。しかし、秋葉は自分の戦いのスタイルをスペルカードに反映させている為、接近系が多いのだ。


「秋葉、遠距離系のスペルをもう少し作らなくて良かったのか?」

「私は接近戦が主体だから、遠距離戦は苦手なの」


「だから遠距離系のスペルは少ないのか」


「そう言う事。あ、早速だけどスペルカードを試してくるよ!」


 秋葉はスペルカードを五枚とも手に持ち、一目散に外へ飛び出して行った。まさに疾風の如くスピードである。
 そんな秋葉に、一声も掛けられなかった魔理沙は、開けっ放しの扉を見つめるしかなかった。


「――連符『風神剣舞・蓮華』!!」


 高々とカード宣言する秋葉の声と、轟音が森一帯に響き渡った――




あとがき(?)

敢えて、第一録からあとがきを書いてみますたww

まず始めに、グダグダになってしまい、すみません……
縮めた結果、こんな文章が出来上がりました。

まぁ、第一録ではスペルカードを制作しましたが、正直適当ですww
防御用スペルもあったらいいかな? 的なノリで作りました(笑

え〜、次は漸く紅魔館に突撃です♪
恐らく長くなるかもしれません……

あまり期待しないで、お待ち下さい。
ではでは♪ ノシ





‡狭間へ#‡
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