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東方時空録
『第一録…秋葉に訪れたのは幸運? それとも不幸?』
 清々しい朝。小鳥の囀りと、カーテンの隙間から漏れる朝日によって、秋葉の意識は覚醒する。上半身を起こし、一度大きな背伸びをする。その時に大きな欠伸を一つ。真新しいベッドから起き上がり、寝癖のついた髪を手で梳かしながら、カーテンを開けに行く。
 差し込む日差しは暖かく、朝方の冷え込みで冷えた体を程良く暖めてくれる。が、それでも肌寒い。厚手のパジャマを着てても、微々たる暖を取る事しか出来ない。
 しかし、秋葉はこの寒さよりも、別な事の方が気がかりだった。


「……何でこんな事になっちゃったんだろ。別に嫌じゃないけど」


 そう言いながら踵を返し、壁に掛けられた一着の洋服を見据える。全体的な色は濃い紺。他には白と赤が少々。サイズは何故かピッタリで、誰かが一から仕立ててくれたかの様な出来だ。
 昨日――厳密に言えば今日だが、一度着させてもらっている。生まれて初めて着た洋服だと言うのに、その時の秋葉は赤面状態で、まともに鏡すら見れていなかった。周りに「似合ってる」などと言われて、その場から一目散に逃げ出したのは此処だけの話。


「やば、思い出したらまた恥ずかしくなってきたよ」


 恥ずかしかったと言う気持ちがぶり返り、またもや頬を赤らめる秋葉。火照った頬を両手で触り、手を団扇代わりにして風をおくる。風は微々たるものだが、所謂気休めと言うやつだ。
 頬の火照りを冷ましていると、扉を二回ノックする音が聞こえてきた。


(咲夜かな?)
「あ、はーい」


「あら、貴女は目覚めが良いのね」


「早起きは慣れてますので」


「それは良い事だわ」


 口元に笑みを浮かばせ、手にしていた衣服を秋葉に渡す。昨日着ていた服を洗濯してもらったのだ。どうやって一晩で乾燥させたのだろう? そんな事を思いつつ、スキマを開き衣服を入れようとしたのだが……


「此処はもう貴女の部屋なのよ?」


「……そう言えばそうでしたね。実感が湧かないからつい」
(ま、帰る方法が見つかるまでの間だけど)


 スキマを閉じ、タンスの一番上の引き出しに、受け取った衣服を入れる。序でに、スキマに収納していた衣服も、それぞれの段に種類ごとに収納&整理していく。上着やら下着やらでタンスの中は徐々に埋まり、最後の一着を仕舞った時には、既にタンスは一杯になっていた。


「収納完了っと」


「……ほとんどがラフな服なのね」


「動きやすさを重視した結果がこれですよ」


「運動が好きだったの?」


「いえ、毎日がある意味戦争の様な感じだったからですね」


「そ、そう」


 何処か遠い目をしながら、そう語る秋葉。どの様な毎日だったかは、ご想像に任せる事にしよう。特に語るつもりもないし、書くつもりもない。こうだと決めつけるよりは、想像してもらった方がより楽しめるんじゃないかと思うからだ。
 咲夜は苦笑いをしつつ、話題を本題へと移行させる。壁に掛けられていた洋服を手に取り、秋葉へと差し出す。


「秋葉、着方は覚えてる?」


「一回では覚えられませんって」


「だと思った。さ、着替えを手伝うわ。ササッとパジャマを脱いで――」


「だ、大丈夫ですよ! 一人で脱げますって」


 パジャマを脱がせ様とした咲夜を制止させ、上から下へボタンを外していく。なるべく丁寧に、且つ迅速に。無駄な行動は一切しない。手際が悪ければそれだけでも時間を食う。
 秋葉が急ぐ理由。何、それは至極簡単な事である。……咲夜の目が怖いからだ。怒ってる訳ではないし、元から怖いと言う訳でもない。
 真剣な眼差し――そう例えた方が良いかもしれない。しかし、時と場合を間違えると、変な意味になってしまうが。


「……脱いだわね。じゃ、まずはこれからよ」


「お、お手柔らかにお願いします」


「そんなに畏まらなくても良いのに」


「何故か、そうしなきゃいけない様な気がして……」


「まぁ良いわ。寒いでしょうから、ササッと着替えましょうか」


 咲夜から手渡された物から順に着ていく秋葉。……しかし、これ以上は描写出来ない(二つの意味で)。なので、各々の脳内で想像してくれれば幸いだ。どんな着替えシーンを想像しても構わない。その為に敢えて描写しないのだからな。
 もうどんな洋服かは、見当がついてる筈だろう。じゃあ、妄想タイムと洒落込もうか。


 〜少女着替え中〜
 〜読者妄想中〜


 着替えもそろそろ終わりに近付いている。早いと思うが、妄想タイムも終わりだ。


「――っと、コレを付けたらおしまいね」


「……やっぱりまだ恥ずかしいな」


「慣れよ、慣れ。時間が経てば気にならなくなるわ」


「慣れるまでが大変何ですけど」


 慣れと簡単に言うが、秋葉の言う通り慣れるまでの間が大変なのだ。人それぞれ、慣れるまでの時間が違う。一日二日で慣れる者も居るが、一週間掛かる者も居る。まぁ、慣れが必要ない場合もあるが。秋葉の場合はこの洋服を着るのに、慣れが必要だっただけだ。好き好んで“メイド服”を着る者は少ないからな。
 最後にカチューシャを付けて着替えは終了だ。


「メイドでもないのに何で着る必要が……」


「多数決で決まった事だから仕方ないじゃない」


「言い出したのは咲夜だけどね」


「そんな事はどうでも良いでしょ。それよりも、お嬢様が貴女を呼んでたわ」


(そんな事って……)
「分かりました」


 壁に立て掛けていた氷影をスキマに手早く収納する。手入れ後だったので壁に立て掛けていたのだ。咲夜を部屋に残してレミリアの下に向かう。部屋の場所は粗方頭に入れてある。多分、迷う事はないが、時間は掛かるだろう。万が一迷っても、時を止めて探せば良いだけの事だ。
 しかし、不安は人の行動を一変させるものだな。気付けば、妖精達に道を確認していた様だ。お陰様で迷う事はなかったが。この事で一つ分かった事がある。此処の妖精達は凄く優しいくて、親切だと言う事に。
 そんな事を考えつつ、扉の前に立つ。この前はパチュリーと一緒だったが、今日は秋葉一人だけ。扉の前で小さく深呼吸し、二度扉をコンコンッとノックする。中から返事が返ってきてから、ゆっくりと扉を開けて中に入る。


「失礼します」


「お早う秋葉。フフ、やっぱりその格好は似合うわね」


「そ、そんな事ないですよ」


 今朝から頬を赤らめてばっかりな秋葉。レミリアはクスクスと笑いながら、俯きながらモジモジしてる秋葉を見ていた。
 しかし、その微笑みはすぐに消えた。レミリアの真面目な表情、周りの空気を読み、赤らめた頬のまま真面目な表情を作る。


「秋葉、貴女を此処に呼んだのには理由があるわ」


「……レン、の事ですか?」


「あら、察しが良いわね。でも、正確には彼女が狙っていたグリモワールについてだけど」


「……スキマの中を探してみましたが、禁書目録と言う本は見当たりませんでした」


「そう。それは随分と厄介な事になりそうね」


「やっぱり、相当危険な本なんですか?」


「えぇ、使い方次第ではね。あのグリモワールには数多の禁忌の魔術が載ってるらしいわ」


 禁忌の魔術――例えば、死者を蘇生させるなどの術だろう。その様な魔術が、あの一冊に載ってるとの事。悪用されれば、事態は災厄の展開に陥る。それは何としてでも食い止めたいが、禁書目録の行方は不明。秋葉が持っていれば、処分するのは容易かった。最も、そんな危険な本だと知っていたら、早々に処分していたと思うが。
 禁書目録の行方は誰も知らない。レンの言い方からして、秋葉が持っていた事は確かだ。しかし、秋葉は持っていなかった。では、禁書目録はどこにあるのだろうか?


「困ったわね。これじゃあ、レンよりも先に手が打てないわ」


「レンは何の為に狙ってるんでしょうね?」


「それが分かれば苦労はしないわよ。唯一分かる事は、私利私欲の為に使うって事かしら」


「そうですね。それに、レンの居場所も分からないですし」


「……はぁ、ここで悩んでてもしょうがないわ。後は咲夜が集めてくる情報が頼りね」


 レミリアが言うには、どうやら情報収集は咲夜が担当してる様だ。つまり、咲夜が入手してくる情報が頼りって事だろう。実際に手持ちの情報は少なすぎる。外部からの情報が、今現在の秋葉達には唯一の手掛かりとなる。例えそれがハズレの情報でも……
 だが、ただ待ってるだけなのは時間の無駄だと考えた秋葉は、レミリアと一旦別れて図書館へと向かった。禁書目録をより深く知る為に――
 結局、その日は何の収穫もなく、図書館で黙々と本を捲るだけの一日だった。待ち望む情報はそう簡単には手に入らない。何も出来ない時は、ひたすら待つ事も大事なのだ。


ー ー ー ー ー ー


 辺りがまだぼんやりと明るくなり始めた頃、霧漂う湖の畔で話をする二つの影があった。その二つの影は、どこか胡散臭い雰囲気の漂う者と、深夜帯に秋葉と一戦交えたレンだった。何やら、険悪なムードがその場を包み込んでいた。レンの気分は、声色と雰囲気でだいたい分かる。かなりご機嫌斜めの様だ。


「おい、話と違うじゃねぇかよ。……俺を騙したのか?」


「私が? 貴女を? まさか、騙すメリットなんてこれっぽっちもないわ。レン、もう少し頭を捻りなさい。あの子が嘘を吐いてる、もしくは誰かに渡してる可能性があるわよ?」


「……少なくとも嘘を吐いてる様な雰囲気じゃなかった。それに、禁書目録の事も知ってなかったしな」


「ふ〜ん」


「……てめぇ、禁書目録が何処にあるか知ってんだろ?」


「ウフフ、それはどうかしら? 知ってると言えば知ってるけど、知らないと言えば知らないわね」


 口振りからして、既に禁書目録の在処を知っている様な感じが漂う。まるで誑かす様に、レンの欲しがる情報を言おうとしない。何を企んでいるのかサッパリだ。


「ちっ、とことん食えねぇ女郎だ。もう良い、今日は話す気が失せた」


「そう。じゃ、また何か情報が入ったら来るわね」


「へいへい」
(ったく、知ってんなら今言えっつーの)


 レンは軽い返事を返し、湖の畔にある小さな小屋へ向かう。そこがレンの住んでる場所だ。当初は一人だったが、今は三人で小屋を使ってる。残りの二人とは――


(ただいまっと……“チルノ”と“大妖精”はまだ寝てるな。ふぅ、コイツらが起きるまで俺も寝るか)


 睡眠時間はざっと考えて、二、三時間ってところだろう。短いが、それでも寝ないよりはマシだ。冷え切った布団に入り、チルノと大妖精の寝息を子守歌とし、レンは意識を手放した――





ーあとがきー

所謂ネタ切れです……

はい、今回はかなり短くなってしまいました。
……だんだん書けなくなってきたな(汗

それに、前半部分無駄だしww
メイド服着させる為にメモ帳五枚も使うとはww

しかも、次回は本編に関係ない内容になってしまうかもしれません。
どんな内容かは、見てからのお楽しみ。

まぁ、タイトルで分かると思いますがね(汗
では、次回のあとがきでお会いしましょう(´ω`)ノシ

‡狭間へ#‡
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