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酔っ払い(前編)


分かんねぇか?
俺が男のお前を抱いてんのは別に男が男色家だからとかじゃなくて、単にお前にが好きだから、ってこと…




「土方さんはズルイんれすよ!」

…なんなんだコイツは。
俺の部屋に入るや否や、突然怒鳴りだした恋人に目を向けると、嗚呼成る程、完全に酔っ払ってやがる。

ふらふらとした足取りでこちらに向かって来るとぱふっ、と俺の胸に収まってきた。

…酒くせぇ。

「こんなになるまで飲んでんじゃねーよ。」
「うるさいんれすよ!こういうときだけぇ!」

なんだコイツ。反抗期か?
俺の胸板をバフバフと叩いてくるこの腕の中の酔っ払いを呆れ顔で見ていると、不意に顔を上げて俺の方をジッと見つめてきた。

「キスしてくらはい」

「…は?」

普段口にしないようなことを言う山崎に驚いて目を見開くと、急に胸倉を掴まれ唇を塞がれる。

「ちょ……ッん」

こじ開けるように舌を差し出してきた山崎に、そういえばこいつも男だったんだなぁなんて暢気なことを考えていると、山崎が舌を絡めてきた。

その一生懸命な姿が無性に可愛くて俺も舌を絡め返す。

「…っ、んはぁ…」

時折漏れる吐息がやけにいやらしくて益々深く舌を絡めると、酔っているせいもあるのか、山崎の息は上がり苦しそうな声が漏れる。

トントン、と胸板を叩かれたので唇を離してやると、山崎は虚ろな瞳で息を荒げながら俺を見つめてきた。

「…土、方さぁ、ん」

小さく俺の名前を呟いてギュっと抱き着く山崎が余りにも可愛いくて眩暈を覚える。

山崎は今のキスで感じてしまったからか、または酔っ払っているせいなのか…ズボン越しにもはっきりと分かるくらいに主張しているそれをグイグイと擦り付けてきた。

…なんだこのエロさは

極め付けに土方さんのが欲しいです、なんて言われてしまえば、いとも簡単に俺の理性なんて物は吹っ飛んでしまった。


服を捲くり上げると、酒のせいでいつもよりほんのりと赤みの増した体が露になる。
胸元の飾りは真っ赤な果実のようにプクリと膨らんでいて、思わずゴクリと喉を鳴らす。

その果実に引き寄せられるように口に含んで舌で転がしてやると、ピクンと山崎の体が跳ねた。
その反応を楽しむかのようにもう片方の飾りを摘まんでやれば、押し殺したような声が聞こえる。

「山崎、声…聞かせろ」

どうにかして鳴かせたくてその果実をチュッと音を立てて強く吸うと山崎が背中をのけ反らせて反応を示す。
しかし聞こえてきた声はやはり篭っていて、顔を上げて様子を伺うと、山崎は自分の両手で口を塞いで声を押し殺していた。

「…退」

口を塞いでいる腕を掴んで耳元で名前を囁いてやると、山崎はよほど声を聞かせたくないのかブンブンと首を横に振った。

いつもは頓所内に響き渡ってしまうのではないかという程声を上げる山崎に違和感を感じ、どうしたんだと尋ねればやっと口を押さえていた手を離す。

「だって…土方さんばっかりズルイです…」

…そういえば部屋に入ってきたときもそんなこと言ってたなコイツ。

何が、と問うてやれば恨めしげな視線をこちらに向けながら、悔しそうに口を尖らせて小さく呟いた。

「……だって、土方さんは喘いでくれんじゃないれすか」

何を言い出すかと思えば…
思わず山崎の顔を見てため息が零れた。

「俺が喘いだら気持ち悪ィだろーが」

最もらしい意見を述べてやったつもりなのだが、それでも山崎の表情は一向に晴れる気配を見せない。

「……土方さんは気持ち良くないんれすか…?」

ついにはそう言って泣き出しそうになる始末だ。
これだから酔っ払いは…
そう思いながらも目の前の恋人を見れば、駄々をこねる、と言うよりも不安で堪らないといった表情をしていた。

「馬鹿か、お前」

ぶっきらぼうにそう言いながらも、安心させるように山崎の体を自分の腕の中に引き寄せる。

「…だって、俺が女じゃないから、土方さんのこと満足させられてなんじゃ…」

ついには声を押し殺しながら泣き始めてしまった恋人を見て呆れながらも、その言葉に何処かしら胸の奥がキュウッと締め付けられた気がした。

「女とか…男とか関係ねぇだろ。俺はお前だから抱きたいと思うんだよ。」

その言葉を聞いて安心したのか、赤くなった目で見上げて山崎はやっと薄く微笑んだ。
それでもまだ何処か不安が有るのか、何かを考え込むように山崎は視線を下に向けた。

そして暫く黙り込んでから、決心したように俺の顔を見つめる。

「土方さん…」
「あ…?」
「今日は土方さんにちゃんと気持ち良くなってもらいたいんです」

コイツの言葉を俺が理解する余裕もないまま突如視界が反転した。






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あきゅろす。
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