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旅は道連れ
 自らの力に限界を感じ、学園を去る者は多い。魔術を操るには努力は勿論のこと、持って生まれた才が必要になるからだ。
 しかしながら、子供たちも、時には羽根を休めないとやっていられない。息が詰まってしまう。長期休暇は、彼らにとって魔術から離れられる滅多とない時間だ。それはアリアたちも例外ではなく。

「で、なんで増えてるの?」

「それは勿論、空気を読んで。シェイトが行くのに、オレだけ留守番はないと思うけどね。なあ、ロッテ?」

 フィアナはしかめっ面をして、目の前の座席に座る少年を見つめる。鮮やかな朱色の髪に、特徴的な空色の瞳を持つ彼は、悪びれる様子もなく言う。
 彼だけではない。フィアナの隣の隣、つまりアリアの横に座る亜麻色の髪の少女も、当初はいなかったはずである。

 アリアたちは今、列車の中にいた。ラクレイン王国の主要都市を結ぶ鉄道――法都と謳われるシェイアードにも敷かれている。
 殆ど揺れも感じず、快適な旅ではあるのだが、色々と心配になって来た。

「はい、レヴィウス様。わたくしも興味がありますわ」

「シャルロッテはお嬢様だけど変わってるしね」

「まさか槍が好きなんて……」

 見た目も中身もお嬢様なシャルロッテだが、変わった所があるのも確か。アリアも思わず呟く。
 彼女は槍が好きで、好事家と言い合えるほどだとか。シャルロッテに槍の話をさせれば、いつ終わるのか予想も出来ない。どうやら彼女は、クルスラー本家に興味があるらしい。

「何だか、ごめん……」

「いえ、オークス先輩はお気になさらず。ウチ、無駄に広いので構いませんが……」

 予想外だったのは、レヴィウスとシャルロッテが一緒だということ。彼らは公爵家の子息と息女。そう簡単に旅行が許されるはずがないのだが、何とお許しが出たらしい。流石はレヴィウスの両親だ。

「もしかして、先輩。聖人の儀、ですか?」

「さっすがマリウス。そーそー。五年ぶりに聖人が現れたみたいだから。今年は聖誕祭の後に執り行われるらしい」

「そうなんですか?」

「まだお名前も、どんな方かも分からないようですが」

 アリアが尋ねると、レヴィウスに代わってマリウスが答えてくれる。聖人の儀とは、聖人を正式に聖人と認める儀式で、お披露目の意味も兼ねていた。
 まだ名も年齢も、性別すらも分からないが、今、シェイアードはその話題で持ちきりだとフィアナが教えてくれた。



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