[携帯モード] [URL送信]
微妙な結果
「アルトナ様、ありがとうございます。これで母さんに怒られずに済む……!」

 フィアナが凄い勢いで女神に祈り始めたのは、テスト終了から数日後。テストの殆どは返却され、フィアナの残るテストは一つだけ。結果は言わずもがなだ。
 彼女の苦手な術理。それが最後に残った一枚だった。嬉しかったのか、今にも踊り出しそうである。

「良かったね、フィア」

「ちなみに点数は?」

「じゃーん。私にしては頑張ったでしょ?」

 微笑むマリウスに、アリアは点数を尋ねる。赤点でなかったのは幸いだが、問題は点数だ。彼女の母は厳しいとの話だから、点数次第によっては安心出来ない。
 頑張ったでしょ、とどこか吹っ切れた表情で答案用紙を差し出す彼女。そこには赤い字で五十五点と書かれていた。

「微妙に危ない気がする……」

「平均点は六十点ですからね。安心は出来ないと思います」

 術理の平均点は六十点だと言っていた。対してフィアナの点数は五十五点。良くもないが悪くもない、と言ったところか。ただ、どう考えても平均には後少しだけ届かない。赤点ではないが、少し危ない気がするのはアリアの気のせいか。
 すると、じっと答案用紙を見つめていたマリウスが苦笑する。

「でも、フィア。ケアレスミスが多いよ。こことか惜しいのに。武術も勉強も焦っちゃ駄目だよ」

「……耳が痛いです。マリウスってば、父さんと母さんみたい」

 指摘されたフィアナはうっ、と言葉に詰まって視線を逸らす。よく見てみれば、簡単な間違いが目立つ。問題をよく読めば分かるようなものや些細なミスが多いのだ。もしそのケアレスミス全てが合っていれば、六十点は超えていただろう。
 勉強や武術に限らず、何にでも焦りは禁物だ。焦りは集中力を奪う。それはフィアナがよく知っているだろう。彼女が始祖の再来と謳われる才能の持ち主でも、未だその辺りが未熟なのだ。良くも悪くもフィアナは感情に左右され易い。肉体的に、ではなく精神的に未熟なのである。

「それは光栄かな。まだまだお二人には敵わないけど」

「やっぱりマリウスがいてくれないと。フィアは私の言うことなんて聞いてくれないから」

 マリウスは彼にしては若干ふてぶてしい笑みを浮かべる。二人の仲が良いのはアリアも知っている。もう何年も一緒に過ごしているのだ。やはりそこは幼馴染。彼女の扱いは心得ている。
 少しだけ羨ましくて嫉妬してしまう。アリアに幼馴染はいない。孤児院の皆は事故でなくしたし、その後はイヴリースに育てられたため、周りに同年代の友人はいなかった。そしてシェイトは幼馴染とは少し違う。


[*前へ][次へ#]

12/104ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!