彼女は天使!
「でもオレは、悪魔の力になんか頼りたくないね。例え復讐でも、この手で果たしてこそ価値がある」
「レヴィが言うと恐ろしいな。本当にやりそうで」
艶やかに笑うレヴィウスはぞっとするほど綺麗で、見入らずにはいられない。彼は良い意味で自分の力に自信を持っている。だからこそ、躊躇いなく言えるのだろう。
悪魔と契約すれば、己の魂と引き換えに強大な力が得られる。魔力を持たぬ者には強大な魔力を、人には持ち得ない凄まじい身体能力を。力を望む者にはそれだけでも魅力的だ。ただ、それは失うものが多すぎた。
レヴィウスの言う通り、彼は例え復讐であっても悪魔の力を借りることはないだろう。復讐だけではない。何事も己の力で成し遂げるからこそ意味がある。
そして、この親友なら本当にやらかしそうだとシェイトは思った。
「誉め言葉として受け取っとくかな。だってそうだろ? まあ、あの悪魔は彼女と契約してる訳じゃないけど」
「悪魔が彼女を気に入ってるんじゃないか?」
普通、高位の悪魔が契約もなしに人に力を貸すなど考えられない。
しかし、現にルシアは契約主でもないリデルに付き従っている。それこそ騎士のように。見下している訳でもなく、認めているようにも見えた。
きっと、リデル自身を気に入っているのだろう。
「そうかも。アリアちゃんとはまた違った美人だし」
「そんな意味で気に入った訳じゃないだろ……確かにアリアは可愛いけど」
「そこ、さりげなくのろけるな!」
アリアとリデルは異なるタイプだが、二人とも魅力的には変わりない。リデルが妖艶で芸術品のような美貌の持ち主なら、アリアは清楚で天使や妖精のように神秘的な美しさを持っていた。ただ、似ている、とは言えないだろう。
アリアが美しいだけの少女ではないとシェイトは知っている。笑えばとても愛らしくて、魅力的なのだ。その歌声だって素晴らしい。幼い自分の心を癒したのは、紛れもなく彼女の歌声だった。思ったままを口にすると、レヴィウスから鋭い声が飛ぶ。
「のろけじゃなくて、本当のことだと思うけどな」
「それは知ってる。シェイトに言われなくても。アリアちゃんは天使だからねー」
シェイトからすれば、のろけでも何でもない。事実だ。そう返すと、満面の笑みを浮かべたレヴィウスから、直ぐ様言葉が返って来る。
いつもなら、ここで誰の天使だ、誰の、と返す所だが、アリアが天使なのは全面的に同意してもいい。その理由を言えば、また彼にからかわれそうなので言わないが。
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