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誰が天才?
 終業を告げる鐘の音が響き、シェイトは小さく息を吐いて筆記用具を片付ける。流石に二年の学期末となれば、テストも当然、難解なものとなる。魔術を扱うには理論だけでも実戦だけでもいけない。父やアレイスターから聞かされたことだ。
 教室内を見回せば、一気に疲れた顔をする生徒や、テストの出来について話し合う生徒、精根尽き果てたように机に突っ伏す生徒と実にバリエーション豊かだ。

「よ、シェイト。テストどうだった?」

「それなりに。レヴィは?」

 机に手を付き、艶やかに笑う少年はレヴィウス。テストが終わったからか、晴れやかな顔をしている。出来は聞くまでもないが、一応聞いておこう。
 彼が影で努力しているのは知っていた。彼はいつも努力を他人に悟らせない。それがレヴィウスの矜持であり、セレスタイン家の子息としてなすべきことだと考えているのだろう。

「シェイトってば、聞いちゃう〜? こっちもそれなりに手応えアリ、かな。シェイトの方こそ、それなりなんて言いながら、いつも成績良い癖にさあ」

「それはレヴィと一緒に勉強してるからだろ。俺は別に一度聞いたことは絶対に忘れない、なんて天才じゃないし」

 レヴィウスの手応えあり、は出来た、との意味である。いつもシェイトの成績が良いのは、彼と一緒に勉強をしているから。
 シェイトとて人間だ。一度聞いたら絶対に授業の内容を忘れない、なんて天才ではない。そんな能力なんて持ちあわせてはいないし、それなりに頭はいい方だろうが、そこまで都合の良い脳はしていない。

「うわ。そこまではっきり言われると、逆に清々しいって。シェイトを天才って言わないで、誰が天才なんだよ」

「それはレヴィとか養父さんとか……」

「オレは兎も角、そっちは別格だって」

 シェイトはレヴィウスのように多彩な才能を持ちあわせていない。彼は剣術に始まり、ダンスや絵画、歌、楽器演奏など人並み以上に熟せる。レヴィウスの努力は言うまでもないが、彼の才能だろう。
 レヴィウスやクリスを天才と呼ぶのではないだろうか。シェイトがクリスの名を出すと、レヴィウスは苦笑しながら髪を弄る。クリスは天才だろう。
 しかし、彼は次元が違い過ぎた。色々と人の域を越している。戦略級魔術を一人で操った挙句、息一つも切れていないなど考えられない。

「あ、後はレイとか……リデル・メイザース」

 次に思いついたのは、兄同然の存在、アレイスターと、黄金の暁の首領にして、かつて英雄と呼ばれた魔導師、堕ちたる天使をも従える者――そしてアリアの本当の母、リデル・メイザース。



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