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いつもの日常
 ただ一緒にいたい。そう願うのは、罪なのだろうか。人以上の幸せを望んだ訳ではない。人並みの親子でいたいだけ。今、会うことは叶わずとも。
 イヴリースもリデルもアリアの『母』なのだ。イヴリースはもういないけれど、リデルは生きている。

 彼女の行方は未だ知れない。その足取りはクリスを持ってしても掴めないらしい。その辺りは流石リデル。一切、己に繋がる手がかりを残していないのだろう。
 黄金の暁の動きはある程度分かるらしいが、リデルには繋がらない。クリスはそう言っていた。そうしている内に日々は過ぎ、学園も冬季休暇に入ろうとしている。


「あー、終わった、終わった。もう無理……」

「こら、フィア。だらけない」

「だって疲れたんだもーん」

 チャイムが鳴って暫くした後、試験勉強から解放されたからか、フィアナは大きく伸びをして机に突っ伏した。あまりのだらけように、マリウスが注意するが、全く聞いていない。
 このテストで赤点を取れば、もれなく追試が待っている。そうなれば冬休み所ではない。赤点を回避すべくマリウスに教わっていたのだが、効果があったかどうかは微妙なところだ。
 フィアナも決して頭が悪い訳ではないのだが、苦手な教科になると考えを放棄する癖がある。

「アリアはどうだった?」

「まあまあかな。赤点はないと思うけど、フィアもマリウスに教えて貰ったし、きっと大丈夫」

「フィアは頑張ったよ」

「うー……」

 正直、母のこともあってテストに集中出来なかったのだが、それほど酷い点ではないと思う。
 柔らかく微笑むマリウスは、机に突っ伏したままの幼馴染の頭を撫でる。同い年のはずなのに、こうして見ると彼の方が年上に見えるのだから不思議だ。微笑ましい光景に笑みが溢れる。
 アリアがリデルの娘だと明かした後も、彼女たちは彼女たちだった。知らずにいた頃には戻れないが、後悔はしていない。両親のことを知ることが出来てよかった。

「マリウスはどうせ、出来たんでしょ」

「まあ、それなりには。フィアに教えながらだったから、僕も頭に入り易かったよ」

 本人の努力もあるが、マリウスはいつも学年十位以内の成績をおさめている。他人に教えるのは意外に難しく、教える方もきちんと理解しなければ難しい。自分だけが理解出来るやり方ではなく、人にも分かりやすく、噛み砕いて説明出来る者でなければ。
 その点、マリウスは教師に向いているのかもしれない。



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