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理解出来なくても
「リデルさんは何を考えているのでしょう? 学園長とのこともそうですが……」

アリアはリデルについて何も知らない。かつて英雄と謳われた魔導師にして、現在は対魔導師組織、『黄金の暁』の首領。彼女もまた、クリスのように体内の精霊因子をコントロールすることで老いを止めているのだろう。
クリスと彼女の間に流れる空気は、とても一言では言い表わせない。

「分からない。けど、あの人は養父さんの親友だった。養父さんが彼女について語ることは殆どないけど、いつだって自分を責めていたよ。一番辛い時、側にいてあげられなかったって」

「親友……。そんな人が対魔導師組織の首領だなんて……相当なことがあったんですね」

『黄金の暁』に属する者の殆どは魔導師に恨みを持つ。リデルに何があったかは分からないが、親友に背を向けるほどの理由なのだろう。
一口に魔導師といっても様々で、同じ魔導師でも考え方の違いはある。

魔導の才を持つ者は二千人に一人。魔導の才を持つ者の中には選ばれた、と勘違いして高圧的に振舞ったり、犯罪に手を染める者だっているのだ。
特に近年は魔術に関する犯罪も増えており、魔導師への風当たりは強いとまではいかないものの、犯罪が増加するようなら、魔導師への不満は高まるだろう。

アリアたちが持って生まれたそれは異能の力。一つ間違えば異端と切り捨てられるかもしれない。そんな危険を孕んでいる。

「リデルさんのことは分かりませんが、先輩はどうしてここに? お墓参りですか?」

「まあ、そうかな。アリアの異場所をクルスラーに聞いたら、ここだって言ってたから。アリアを追いかけて来た、って言うのが本当かな。でもまさかあの人達と会うなんて思わなかったけどね。俺にはあの人の、契約者の気持ちは分からないけど、分からないからって全てを否定するのは違うと思う。愛する人を亡くすのはとても辛いことだから」

「そう、ですね……」

彼を本当の意味で理解出来るのは彼だけ。けれど理解出来ないからと言って、彼の全てを否定してはならないのだろう。勿論、理由があったとしても決して許されることではないが、愛しい者を亡くした痛みは筆舌に尽くしがたい。
もしかすると、リデルも愛しい人を亡くしたのかもしれない。

いつかリデルだと知らず街で会った時、彼女が落としたロケット。その中には幸せそうな家族がいた。リデルと緑髪の青年、そして腕に抱かれた赤子。
彼らがリデルが黄金の暁の首領となった理由なのだろうか。

「だから墓参りに行くなら一緒にって思って。でももう終わったみたいだけどね」

「す、すみません」



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あきゅろす。
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