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そして、走り出す
「フィア、アリアさん!」

それはフィアにとっては聞き慣れた声。声の主は二人に追い付くと安堵の息をついた。

「二人とも無事だったんだね」

「マリウス!」

良く見れば大きな傷こそ無いものの、彼の体には幾つもの細かい傷や擦過傷が刻まれ、見ている方が痛々しい。

「その傷……マリウスこそ大丈夫なの?」

心配気に彼を気遣うフィアナにマリウスは柔らかく微笑み、彼女の頭をくしゃと撫でた。

「僕なら大丈夫。来る途中にヘルハウンドと出会しちゃって。それより良かった。二人は怪我は無いみたいだね」

全くこんな時にも自分より他人の心配をして。昔から変わってないなぁ。フィアナは心の中で苦笑を漏らした。

「私たちは大丈夫だよ」


『あの時とは違って私には“力”がある……力を使えば私は、皆と違うんだって否応無しに突き付けられる……それでも、例え私に出来る事が限られていたとしても、捨てて置くなんて私には出来ない!』

やっと自分の居場所を見付けたんだ……。傷だらけなマリウス、不安そうなフィアナ。二人を姿を見た時からアリアの気持ちは決まっていた。


「……マリウス、フィアをお願いね」

「えっ?」

「私行かなきゃ!」

「待って! どうするつもりなの……?」

逆方向に走り出そうとしたアリアをフィアナが制服の裾を掴んで引き留める。

「出来れば炎を消してみるつもり……」

「危ないよッ! ねぇ、どうしてアリアじゃないとダメなの!? 先生たちに任せておけばいいじゃない!」

見ればフィアナの目尻にはうっすらと涙が浮かんでいる。僅かな罪悪感を覚えつつもアリアはゆっくりと、まるで自らに言い聞かせるように静かに思いを語る。

「私ならきっとどうにか出来ると思う。今は言えないけど、私の心の整理が出来たら絶対に言うから……お願い行かせて」

「でもっ!」

尚も食い下がろうとするフィアナの肩にマリウスの手が乗せられた。

「……フィア。アリアさん、フィアの事は任せて下さい。どうかお気を付けて」

「……ありがとう」

「……っ! アリア! 怪我しないでね」

アリアはフィアナの言葉に頷き、マリウスに礼を言うと校舎に向け走り出した。



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あきゅろす。
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