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理解出来ない
リデル・メイザースと彼女に力を貸す悪魔。シェイトが知っているのはそれくらいだ。彼女が何故、親友であった養父と袂を分かつことになったのかは分からない。
シェイトは彼女について何一つ知らないが、対魔導師組織を率いているのだから、もっと苛烈な人物だと思っていた。少なくても契約者の墓に花を供えるような人間ではないと思っていたのだ。

契約者はリデルの敵ではなかったが、味方でもないはず。彼女は何を思って墓に花を供えたのか。シェイトにはまるで分からない。
彼女の人となりを判断するには、あまりに情報が少なすぎたからだ。

「でも俺、嘘は言ってないし。事実だと思うけど」

「そうね。でも少しは空気を読んで頂戴。貴方に言っても無駄でしょうけど」

相変わらず緊張感の欠片もないリデルとルシアのやり取り。ここにいるのは本当に彼女たちだけなのだろう。
他に気配は感じない。もっとも何らかの魔術を使っていたり、シェイトが気配を読み間違えていなければの話だが。

「どうして花を? 貴女には彼の墓に花を供える理由などないはずです」

「ええ、そうね。別に知り合いでもなんでもないし。でも私が何をしようと私の勝手。貴方には関係ないと思うけど」

「……それは確かに」

彼女の言うように、何をしようと彼女の勝手だ。そもそもシェイトに教える義理はないだろう。
ますますリデルという人物が分からない。それでもただ純粋に知りたかった。

個人的な知り合いでもないのなら、知らない人物の墓に花を供えるだろうか。わざわざ朝早く、郊外の墓地にまで足を運んで。
ルシアはそんなシェイトとリデルのやり取りが余程面白く見えたのだろう。肩を揺らして笑っている。

「ほんと、お人好しだよね。ま、そこがリデルの良いところなんだけど。……ねえ、リデル。この子の魂、貰っていい? 滅多にない上物だし」

ルシアの笑みが凄艶なものへと変わる。シェイトは体中の血液が凍りつくような錯覚に襲われた。本気なのか、それとも冗談なのか分からない。
ルシアは血のように鮮やかな朱唇をひと舐めし、リデルを見る。

「駄目よ。冗談も大概にしないと送り返すわよ」

「あながち冗談って訳でもないんだけどね。だってあの子、魔力だけならリデルより上だし」

即答され、苦笑したルシアはシェイトに視線を向ける。透き通るような青い瞳に見つめられ、指一本動かせない。今のシェイトを支配しているのは恐怖か、それとも……。



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