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異変、そして
学園のとある場所にてため息をつく青年の姿があった。肩近くまである灰色の髪に片眼鏡モノクルから覗く右目は夕焼けを映したようなあか。そして左は深淵を思わせる深い蒼色。

青年の容貌は非の打ち所もない位に整っていたが、彼の浮かべる表情のお陰もあり、秀麗というには程遠い。
服装は簡素だが、洗練された漆黒のローブで、然り気無く金の縁取りがなされている。

年齢は恐らく二十代半ばか前半。二十代を僅かに過ぎたようにも見えるかもしれない。
しかし青年から感じられる雰囲気や気配が彼の年齢を曖昧にさせていた。彼が座る椅子の前には山積みにされた書類の山、山、山。見ているだけで萎えてきそうな量だ。

事実、青年。いや学園長その人であるクリス・ローゼンクロイツはすっかりやる気を無くしていた。
我ながらなんと嘆かわしい事だ。

普段ならこの手の書類は副学長であるアレイスターの役目であり、彼は一切干渉しない。

さて、この山のように積まれた書類をどう片付けたものか。クリスがそう思案した時、彼の魔導師としての勘が違和感を告げた。


『……なんだ? 精霊因子が不自然に阻害されている……』

「……っ!」

気付いた時には既に手遅れでしなかった。違和感と同時に、魔術を操る時特有の爆発的な魔力の膨れ、そして通常ではあり得ない異常とも思える速度で炎の精霊因子が集束する。永遠とも思える一瞬の後……世界は灼熱の焔に彩られた。



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あきゅろす。
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