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導きの光
「……体は健康そのものです。咎の烙印の影響もそれほどありません。後は体力をつけるだけですね」

診察を終えたクリスはフィンに礼を言いローブを羽織る。咎の烙印が消えた今もクリスの体は万全とは言い難い。元々、咎の烙印は魔力の高さに比例して進行が早まると言われている。
解呪は本当にギリギリだったのだ。

クリスは平気そうに振る舞ってはいたが、それは表面上だけ。戦闘などとんでもないというのに、何という精神力か。

だが驚くべきことに、クリスの体には呪いの影響が殆ど残っていなかった。後は失った体力を取り戻すだけ。

「クリス様の回復は僕個人として非常に嬉しい。ですが魔法医療師としては驚きです」

「まあ、僕も伊達に長く生きている訳ではないからね」

驚きを隠しきれない様子のフィンに、クリスは淡く笑う。あるいははぐらかすように。通常、呪いというものは解かれたからと言って劇的によくなる訳ではない。
確かに積み重ねた年数はクリスには到底及ばないが、フィンもこれでもかなりの時を生きているのだ。

「聖人ではないけど、少しくらいなら悪魔の力に抗うことは出来る」

「……それはこの際、聞きません。ですが当分の間、安静にして頂くことは変わりませんよ。僕もまだここにいるつもりですから」

「フィンが?」

フィンが学園で講師をつとめるのはほんの僅かな間のつもりだった。元より彼は体が弱いし、無理はさせられない。それに妻であるルチルが黙っていないだろう。
クリスが不思議そうに目をしばたかせるとフィンは晴れやかに笑った。

「ルチルには僕から頼みました。僕にもまだもう少し、あの子たちに教えられることがありそうですから。子供たちの導き手となるのは僕たち(大人たち)の役目ではないですか?」

「ふふ……そうだね。それは立派な役目だよ。僕たちがあの子らのために出来るのはほんの僅かなことなのだろう。暗闇を晴らすとまでは言わない。それでも、子供たちにとって、導きの光でありたいんだ。願わくば、全ての子らが歩む道に祝福を」

頷きながらもクリスは思う。これからの時を紡いで行くのは子供たち。自分たちが出来るのは彼らが道を見失わぬように導きの光となることだけ。
アリアやシェイトたちだけではない。この学園の生徒たち全員が、学園で己の道を見出だせればと思う。
己の想いを語った後、クリスは少し年寄り臭かったかな、とはにかみ、フィンと笑い合った。



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