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権利と責任
「シャルロッテさんは何年留学されてたんですか?」

「三年ですわ。わたくしからお父様にお願いしましたの。貴族としての役目も分かっているつもりです。でもわたくしはお父様の言葉に唯々諾々と従うだけの人形ではいたくなかった。“シャルロッテ”でありたかったんです」

大貴族ミュレイゼル家の息女。その肩書きだけを見れば華々しいものなのだろう。何不自由のない生活、約束された未来。
けれどそれは“ミュレイゼル家の息女”に与えられたもの。

自由は無いに等しい上に、シャルロッテの意思は介在しない。語るシャルロッテの瞳はいつかレヴィウスが見せた瞳と同じだった。
深い憂い、そして葛藤。
貴族の娘である限り、その呪縛からは抜け出せない。

家のために望まぬ結婚を強いられることだって珍しくはないのだ。
加えてシャルロッテは四大貴族の一つに数えられるミュレイゼル家の人間。

それこそ彼女と婚約を結びたい相手は腐るほどいるし、公爵である父に言われればシャルロッテも否とは言えまい。

ただ従うだけの人形にはなりたくなかった。だから留学したのだと彼女は言う。反対する両親――特に父を説き伏せ、この国を離れたらしい。

「レヴィウス先輩もシャルロッテさんも、貴族の人って本当に……」

大変なんですね、と言うのは憚られた。アリアは彼女たちの苦労や苦悩を想像することしか出来ないから。
アリアたちとは住む世界が違う、と言えばいいのだろうか。

良くも悪くも外界から断絶された世界なのだろう。貴族社会というものは。
誰に対しても気さくで、良い意味でとても大貴族の子息には見えないレヴィウスだが、彼もまた大きな責任を背負っているのだ。

今まで深く考えたことなどなかったが、それが“貴族”というものなのだろう。

「ごめんなさい。こんな話を聞いて頂いて。会ったばかりの方にする話ではありませんわね」

「私の方こそ、その……」

「どうか気になさらないで、アリアさん」

シャルロッテやレヴィウスは沢山のものを背負っているのに、自分は今のままでいいのだろうか。何だか恥ずかしい。
俯くアリアの手をシャルロッテが取った。

「……もしアリアさんさえ宜しければ、わたくしとお友達になってくれません?」

「勿論です!」

はにかむように笑うシャルロッテに、アリアは一二もなく頷いたのだった。



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