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追いつきたくて
「レヴィウス様はわたくしにとって憧れの存在でした。何でも出来て格好よくて、同年代の者たちと比べても大人びていましたから」

二年の教室を出て、次の授業の教室に向かう途中、シャルロッテはぽつぽつと話してくれた。自分とレヴィウスのことを。アリアが彼と知り合いであることを知ったからだろう。
レヴィウスについて語る彼女は公爵家の息女と言うよりは、歳相応の少女に見える。

「そうなんですか……。ちょっと想像出来ないです」

アリアの知るレヴィウスは女性に優しくて、誰に対しても気さくな少年だ。運動も勉学も得意で何でも出来る印象ではあるが、シャルロッテの言うような大人びた、少年ではない。

歳相応と言った方が正しいだろう。時に達観したような顔を見せることもあるが、やはりアリアにとってレヴィウスは優しくて頼りになる先輩だった。

「そうでしょうね。今のレヴィウス様とは全く違いますから。でも、こちらが本当のレヴィウス様なのでしょうね」

そう言うシャルロッテは少し寂しげに見える。彼女はラクレイン王国を離れ、何年もの間留学していたという。
昔の彼との違いに驚いている、と言うよりは流れた月日の長さに寂しさを感じているのかもしれない。

「少し寂しい、と思うのはわたくしの感傷なのでしょうか? ……ごめんなさい。忘れてください」

「シャルロッテさんはレヴィウス先輩が好きなんですね」

アリアは思わず笑みを漏らしていた。シャルロッテがどれだけレヴィウスが好きなのか、彼女の話を聞いているだけで伝わってきた。
しかしシャルロッテにすれば予想外の言葉だったらしく、驚き、頬を赤く染めて俯く。

「ええっと、その……そう、なのでしょうね。ずっとレヴィウス様に追いつきたくてひらすら勉学に、武芸に励んで来ました。ミュレイゼル家の息女として恥じぬよう、そしてレヴィウス様に立派な淑女になったと胸を張って言えるように」

「シャルロッテさん……」

目標があったからこそ、ここまで頑張れたのだとシャルロッテは思う。彼女にとってレヴィウスは目標であり、認めて貰いたい相手だった。彼に憧れ、勉学に励んだ日々。
慣れない異国でも、家族やレヴィウスのことを考えると頑張れた。

好き、なのだと思う。だが異性としてかと言われれば正直分からない。考えたくないからかもしれないが。
あれから数年。
シャルロッテはレヴィウスに胸を張って淑女になったと言えるだろうか。



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