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甘い空気
「なんだもう、この甘い空気! どうしてくれるんだよ」

いつの間にか復活したらしいアイドがぺっぺっと目には見えない“甘い空気”を振り払う。
心なしか泣きそうな顔をしているのは、異性が若干苦手だからだろう。

しかし他人から見れば女好きがただ悔しがっているようにしか見えないわけで。つくづく言動のせいで報われない少年だ。

「甘いって何だよ、甘いって。オレは女性と子供には優しいの。野郎共は別だけどな」

「そうそう。特に俺の扱いが酷いんだよなぁ〜」

レヴィウスが女性と子供に優しいことはシェイトもアイドも知っている。うんうん、と頷くアイドだって本当は分かっているのだ。
同性にしてもレヴィウスは“良き友人”である。
ただそれを表に出さないだけで。扱いが酷い、というよりも、シェイトに対するように遠慮なく接しているだけだ。

「……しっかし、よりにもよって戦闘技術科か」

今更言っても仕方のないことだが、魔法医療科や錬金科ならまだよかった。
戦闘技術科で学ぶ殆どが“戦い”に関することである。
貴族の令嬢の殆どが、スプーンより重いものを持ったことのない者ばかりだというのに。

シャルロッテを責めているわけではない。レヴィウスはやはり心配なのだ。
彼の中で彼女はまだ小さな“従姉妹”のままなのかもしれない。

「専攻は変えられないからな」

シェイトの言う通り、余程のことがない限り専攻を変えることは出来ない。普通は、基礎課程を終了し、専門課程に進む時に自らの進路を選択する。
しかし基礎課程の生徒の殆どが入学した時点で専攻を決めているのだ。
勿論、授業についていけずに学園を去る者も多い訳だが。

「でも学園長が許してくださったのなら、きっと大丈夫ですよ」

「ありがとう、アリアさん。レヴィウス様、わたくし、こう見えても槍は少したしなみますの。ミュレイゼル家の息女たる者、自分の身は自分で守らなければ」

大丈夫ですよ、とレヴィウスを安心させるように微笑むアリアを見て、シャルロッテが礼を言った。留学していた間、なにも遊んでいたわけではない。
護身術は一通り学んだし、ひたすら槍の修行をつんで来た。かかさず修練だってしている。

「なら、レヴィ。もう認めてるんだろ? なら――」

「はいはい。だから別に反対するつもりはないって。さっき言ったろ?」

シェイトの言葉に頷いたレヴィウスは真剣な表情になり、ただ、と言葉を切った。



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あきゅろす。
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