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「はい。先日帰国致しましたの」

「そうじゃなくて、なんで学園にいるんだ? そもそも伯父さんたちがよく許したな」

レヴィウスが聞きたいのは何故、シャルロッテが学園にいるのか、だ。そもそも学園は余程のことがなければ編入を受け入れていない。
いくら大貴族の地位を持ってしても無理なものは無理だし、シャルロッテの父母が許したとは考えづらい。

魔導師に偏見がある訳ではないし、理解もあるのだが、実際に娘を学園に通わせるとなれば話は別だ。
しかも彼女の父はレヴィウスの母、エーテリアに似ておっとりした人である。

そして彼の妻と同じように、目に入れても痛くないほどにシャルロッテを溺愛していた。
数年前、彼女が留学する時だってかなり父と母が宥めたのである。

「クリス様に手伝って頂きましたので。流石のお父様も諦め……いいえ、納得してくれましたわ」

「何だか光景が目に浮かぶ」

エーテリア同様、驚異の童顔の持ち主であるシャルロッテの父はとても年頃の娘がいるように見えない。
ハンカチを片手にめそめそと泣いている姿が容易に想像出来た。

「それにあのまま屋敷に戻れば、確実に婚約話に発展していたはずですから。わたくしはまだ結婚するつもりはありませんのに……」

「それでこの学園にか?」

ふう、とため息をついてシャルロッテは、久しぶりに会った従兄弟を見つめた。彼女ももう十六歳。まだ早いが、貴族の娘なら、嫁いでいる者だっている。ミュレイゼル家ともなれば引く手あまただろう。
国内だけでなく、それこそ国外からも縁談話が来てもおかしくない。

「それだけではありませんわ。わたくしだって生まれ持ったこの力を何かの役に立てたいのです。わたくし自身がそうしたいと決めたから、わたくしはここにいるんです。レヴィウス様もそうなのでしょう?」

誰かに強制された訳ではない。縁談話も理由の一つではあるが、それは切っ掛けに過ぎないのだ。
ずっとレヴィウスに憧れていた。優しくて何でも人並み以上にこなせる彼。

彼と同じ魔導の才を持っていたことが光栄で、嬉しかったのだ。
けれど、レヴィウスのように素直になれなくて、留学先でも独学でこっそり魔術を学んでいたのだ。

「……ロッテが考えて決めたことなら応援する。けど、怪我だけはするなよ」

「はい!」

レヴィウスは怪我だけはするなよ、と笑って頭を撫でてくれる。まるで昔に戻ったようで凄く嬉しかったのだ。
頬を赤く染めながら、シャルロッテは微笑んだ。



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