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会いたい人
シャルロッテ・フォン・ミュレイゼル。大貴族ミュレイゼル家の息女である彼女が何故学園に編入したのか。その理由が分からない。
セレスタイン家の嫡男でありながら学園に通うレヴィウスが例外なのである。彼の場合は両親の理解があったからだろうが、シャルロッテはどうなのだろう。

ミュレイゼル家の息女である彼女なら婚約者がいても不思議ではないというのに。おまけに専攻は戦闘技術科だ。
とても大貴族の息女が選ぶとは思えなかった。シャルロッテはクラスメイトたちの視線など気にもせず、熱心に授業を聞いている。

一限目が終わり、クリスが去ってもクラスメイトたちは遠巻きに彼女を窺うだけだった。何せ彼女は大貴族の息女。
気軽に声を掛けられるような人物ではない。レヴィウスのように華やかな容姿で気さくな人物なら別だが、シャルロッテは色んな意味で声を掛けづらいのだ。

アリアは教科書を閉じると、意を決して立ち上がった。余計なことかもしれない。
けれど、シャルロッテの背中が寂しげに見えたから。

「あの……ミュレイゼルさん。よければ校内を案内しましょうか?」

口に出してアリアは後悔した。シャルロッテが驚いた顔でアリアを見上げている。もしかしなくても余計なお世話だったのだろうか。しかし何にしてもこのまま引き下がれない。
すると、アリアの言葉を理解したのか、彼女はふわりと笑った。

「わたしくのことはシャルロッテと呼んで頂いて構いません。それと敬語もやめてくださる? あの、アリアさん。貴女にお願いしてもいいかしら。2-Aの教室に連れて行って頂けます?」

「……分かりました。ええっと。……案内するから一緒に行こう」

名乗ってもいないのにシャルロッテはアリアの名を知っていた。事前にクラスメイトの名を覚えていたのだろうか。
そこに様子を見ていたフィアナも駆け寄って来る。

「私も一緒に行く!」

「はいはい。フィアは僕と一緒に先に行ってようね」

そんなフィアナを微笑を浮かべたマリウスが問答無用で連れて行く。どこか背筋が寒くなりそうな幼なじみの姿に、フィアナは大人しく従った。
いつもは彼女に甘いマリウスだが、時たま怖い気がするのは気のせいだろう。きっとそうだ。

アリアは自分にそう言い聞かせると、クラスメイトたちの好奇に満ちた視線を受け、シャルロッテと共に教室を出た。

「でもどうして2-Aの教室に?」

二人並んで廊下を歩きながら、アリアが尋ねる。2-Aといえばシェイトたちのクラスだ。知り合いでもいるのだろうか。
アリアが何となくそう考えていると、彼女は嬉しそうに笑い、弾むような声で理由を口にした。

「会いたい方がいますの」



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あきゅろす。
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