まだ見ぬ少女
「ってことは女の子なんだ?」
「従姉妹だよ、従姉妹」
アイドの言う通り、女の子であるし、長らく会ってはいないが美人になっていると思う。
シャルロッテはレヴィウスの母、エーテリアによく似ていた。幼い頃はペリドットの幼姫と謳われたくらいだ。確か一つ年下の十六歳だったはず。
「レヴィの従姉妹ってことは貴族かあ。お近づきになりたいな〜」
「レヴィが余計なこというから、“また”アイドの悪いくせがはじまったな」
未だ見ぬレヴィウスの従姉妹を想像しているのか、アイドは上機嫌である。そんな彼を見てシェイトは苦笑いを浮かべていた。
彼は異性が苦手だというのに、言動は女好きのそれだ。止めればいいのに止められないらしい。
「オレのせいにするなっての」
呆れたようにアイドを一瞥し、視線を戻した時、レヴィウスの視界を見覚えのある色が横切った。
「ん?」
別に何かがあった訳ではない。女生徒が廊下を歩いていただけだ。
後姿しか見えなかったが、亜麻色の髪の少女で、腕章から一年、そして戦闘技術科専攻だと分かる。それが何だというのだ。
「レヴィ?」
「あ、ああ。何でもない」
訝しげなシェイトの声にレヴィウスがどうにか返事をした時には、女生徒の姿は消えていた。彼女がいたという証はどこにもない。
「ねえ、アリア。一限何だったっけ?」
「魔術史だったと思うけど」
アリアがそう答えた途端、フィアナは嫌そうな顔をした。魔術理論や精霊論など苦手な彼女だ。魔術史もその名の通り魔術の歴史であり、フィアナからすれば退屈な授業なのだろう。
それでも真面目に授業を受ける辺り律儀な彼女らしい。
「ほら、そんな顔しない。頑張ろうよ、フィア」
「マリウス……。うー、分かってる」
マリウスに励まされ、フィアナは眉間に皺を寄せて頷いた。HRが終われば彼女の嫌いな魔術史だ。だが次に教室に入ってきた人物を見てアリアたちは驚くことになる。
入ってきたのはクリスと一人の少女だった。学園長である彼が生徒たちの前に姿を現すことは殆ど無いというのに。
そしてクリスと一緒にいる少女は誰なのだろう。アリアには見覚えが無い。腰に届くほどの亜麻色の髪にペリドットの瞳。
纏う服はアリアたちと同じ制服で、赤いネクタイと腕章のラインから戦闘技術科だということがうかがい知れた。
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