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シャルロッテ
大貴族ミュレイゼル家の息女。それがシャルロッテの肩書きだった。セレスタイン家には流石に及ばないものの、ミュレイゼル家は四大公爵家の一つで、彼女もその名に恥じぬよう、努力を続けていた。
流石は世界に二つしか存在しない魔導師育成機関。学園は屋敷よりずっと広く、下手をすれば迷いそうだ。
そんな中、シャルロッテが向かったのは学園長室である。

「クリス様、いらっしゃいますか。シャルロッテ・フォン・ミュレイゼルが参りました」

扉をノックして声を掛ける。するとすぐにどうぞ、入って来なさいとの声が返ってきた。失礼致します、と言って扉を開ける。
真っ先に視界に入ったのは大きな机の前に座る青年だった。肩につくくらいの灰色の髪に赤と青のオッドアイ。一見するとシャルロッテより五、六歳上だろう。

金の装飾がされた漆黒のローブを纏い、こちらを見つめる青年こそ、学園の学園長であり、当代最強の魔導師クリス・ローゼンクロイツ。
彼と会うのは初めてではないのに、若々しいその姿は何度見ても驚きを隠せなかった。

「やあ、シャルロッテ君」

「おはようございます、学園長」

ふわりと微笑むクリスに、シャルロッテも優雅に笑って礼をした。その動作に寸分の乱れも無い。流石はミュレイゼル家の息女である。
纏う服こそ学園指定の制服だが、やはり他の生徒とは纏う雰囲気が少し違った。

「おはよう。君には1-Aに転入して貰うことになった。本当に後悔していないね?」

「勿論です。わたくしは自分の意思でここに来ました。ミュレイゼルの名に恥じぬよう励む所存ですわ」

後悔していないのか、と尋ねるクリスにシャルロッテは迷うことなく頷いた。
学園に来た一番の理由は“彼”だが、屋敷に戻っていれば確実に縁談をすすめられていただろう。今まではどうにかはぐらかして来たが、同じ手はそう何回も使えない。
それに生まれ持ったこの才を何かに活かしたかったこともある。

シャルロッテは腕に付けている腕章にそっと触れた。紫と赤のラインが入ったそれは彼女が一年で、戦闘技術科専攻だということを示している。
あの大貴族の令嬢が。普通の貴族は学園になど入らない。レヴィウスが例外なのだ。

「……色々とありがとうございます。学園長にはご迷惑を……」

「それは言わない約束じゃないかな。君の熱意に負けたんだ。ご両親も納得してくれたようだし、君の“道”がここで見つかることを祈ってるよ」

シャルロッテを助けてくれたのは他でもない彼。感謝してもしきれない。クリスは自分の考えなどお見通しなのだろう。道が見つかることを祈っている。
そう言って微笑するクリスに、シャルロッテは無言で頭を下げた。



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あきゅろす。
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